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ブログ|2024.12.17

Shift Changer前本美結が、サステナ担当に会ってきた!【Vol.1ユナイテッドアローズ】

Shift Cの公式アンバサダー「Shift Changer」として活動する前本美結が、企業のサステナビリティ担当者を訪ねる連載がスタート。国連総会で設定されて私たちみんなが目指すSDGsのゴールが2030年に迫るなか、各社の目標やアクションについてインタビューします。第一回目は2022年からSARROWSというサステナビリティ活動を始めたユナイテッドアローズ。

撮影:五十嵐一晴

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前本美結 高校3年間をインドネシア・ジャカルタで過ごした際に環境問題や貧困問題に触れ、社会問題に興味を持つ。上智大学総合グローバル学部で国際協力論を学ぶなかで、自身のSNSで社会問題解説・日常生活で個人ができるアクションなどの発信を開始。現在は自身が大事にしている価値観である、エシカル・サステナブルを軸にしたライフスタイルと、社会問題にまつわるモノ・コトを発信。モデル・講演・PR・イベントプロデュースなどを行っている。六本木にてコミュニティカフェ 「um」(アム) を運営、コミュニティマネージャーを勤めている。

サステナブルなプロジェクトとして、スパイバー社とのコラボレーション企画を発表

こんにちは。公式アンバサダーShift Changerの前本美結です。
前回の記事では、私の家のクローゼットの秋冬アイテムをShift Cのレーティングでチェックしました。学生時代からサステナビリティに関して意識を持っていて、環境に優しいアイテムを選んできたつもりでも、レーティングの高いアイテムが思っていたより少ないことが分かりました。このことは「良い」「素晴らしい」と評価される日本のブランドが増えて欲しいと改めて思うきっかけにもなりました。
今後、日本の企業やブランドをフィーチャーしサステナビリティ担当者の方にお会いして、それぞれの目標や進捗を伺っていきたいと思います! 第一回目はユナイテッドアローズ。サステナビリティ推進部の玉井菜緒さんに話を聞きに、12月に開かれた2025年春夏商品の プレビュー会場にお邪魔しました。

全6ブランドを横断し、15アイテムを発表したスパイバーとのコラボレーション企画は2025年1月中旬より順次発売予定。

前本美結(以下、美結) 今回、サステナビリティを軸にした新しいプロジェクトを始められたんですよね?

そうなんです。スパイバー社のブリュード・プロテイン ファイバーを含んだ同一生地を使ったアイテムを、ユナイテッドアローズ、ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ、エイチ ビューティー&ユース、スティーブン アラン、アストラット、ロエフという6ブランドを横断して商品化しました。2024年春夏では、この素材を使ってバトナーとニットを作ったトリプルコラボレーションを行ったので、今回のスパイバー社との取り組みは第二弾となります。
同一生地で複数のブランドが商品を作るというのは珍しい企画で、それぞれの人気アイテムに使用してブランドらしさを表現してもらったのですが、最初スワッチ(生地見本)で見たものが衣服にするとこんなに表情が変わるんだと私も感動しました。(ユナイテッドアローズ サステナビリティ推進部 部長 玉井菜緒氏、以下同)

ユナイテッドアローズ 玉井菜緒氏。1999年入社。2004年より社会・環境活動の推進に従事。2021年、サステナビリティ推進部 部長に就任。2022年にスタートしたSARROWSの立ち上げを主導し、旗振り役として活動中。

美結 確かに同じ生地とは思えない印象ですね。

ですよね。今回の素材を使ってみて、思いのほかシルエットが綺麗に出たのが新しい発見だと言っているブランドもあります。また、ビューティー&ユースとロエフの2ブランドはいずれもオールインワンですが、各ブランドらしい違う印象のものが出来あがってきました。

サステナビリティ活動を、「アローズ」らしくブランディング

取引先企業に向けたSARROWSの小冊子。プロジェクトと目標数値、進捗状況を明記している。

美結 2022年からSARROWSというプロジェクトがスタートしたと聞いています。ネーミングやイラストなども素敵ですね。

SustainabilityのSとユナイテッドアローズのARROWSを併せてSARROWSとしました。それまでもサステナビリティ活動をやっていましたが、会社名を隠すと自社の活動かどうか分からない、独自性がないなという課題が見えてきました。お客さまや従業員に関心を持ってもらうこともなかなか進んでいなかったんです。2021年に全社のクリエイティブを管轄するチーフクリエイティブオフィサーが『カッコよくしよう』と提案してくれたんです。サステナビリティ活動も企業ブランディングの一要素だから、カッコよくしようと。それから1年くらいかけて社内で討議をして、ファッションブランドらしく、SARROWSという名前とロゴを作って、イラストも添えました。
サステナビリティは難しいと思っている人が多いので、心理的なハードルを下げるために、ファッションブランドが得意なやり方で表現しました。でもイメージに寄ってふわっとしているとグリーンウォッシュっぽくなるので、具体的な数値目標も立てて、企業として言いにくいような数値の開示もスタートしました。

美結 SARROWSでは「Circularity(循環性)」、「Carbon Neutrality(カーボンニュートラルであること)」、「Humanity(健やかに働く)」が三本柱とうかがっています。これまでの2年間で出来たこと、出来なかったことなどを教えていただけますか?

まずサーキュラリティですが、活動の指標が商品の廃棄率と環境配慮商品の割合で、できるだけ洋服を使い終わった後もゴミにせずに循環させる、また循環させることを前提に商品作りを頑張っていきましょうというものです。廃棄率で言うと、残念ながら売れ残った商品を当社は廃棄をしていて、繊維製品はそれをゼロに、他の商品も含めると0.1%にすることを目標にしています。

美結 廃棄はどこのブランドでもやっていることではあると思うのですが、なかなか言いにくいことを数字まで開示しているのはすごいなと思いました。

実は、昨年度の数値では0.08%と目標の0.1%を達成できています。この数値は、商品の調達から繋がっていて、販売消化率などの事業活動と密接に関わるものです。できる限りいろんなチャネルで販売して、それでもどうしても残ってしまったものは廃棄ではなくリユースリサイクルに回しています。ちなみに、廃棄もその定義が同じようで同じではないんです。私たちとしてはサーマルリカバリーも“廃棄”に含めています。
でも一度0.08%になったからといってこれで終わりではなく、これを継続していきたいと思っています。

環境配慮商品は、一番数値の進捗度合が緩やかです。目標設定した時が2.0%だったことを考えるとじわりじわりですが増えています。先ほど見て頂いたブリュード・プロテイン ファイバーのコレクションなどは、お客さまにもわかりやすい好例です。
環境配慮商品の定義も、まだ世の中に明確なものがあるわけでないので、弊社で暫定的に作りました。大きくは、商品の本体素材、副資材(ボタンなど)、加工・染色などそれぞれに環境配慮があるかどうかですね。本体素材が環境配慮素材を20%以上使っているか、副資材は何か1つでも該当しているか、などの基準を作ってツリーを作成しました。
また、環境配慮の根拠は基本的に第三者認証を前提にしています。今できる中で、お客様に自信を持って伝えられる基準を作りました。この基準作りも成果の一つだと思っています。

再生可能エネルギーに関しては、店舗が入る施設のオーナー側の意識も高まっている

カーボンニュートラルはCO2という共通指標があるので分かりやすく、いかに企業全体で排出するCO2を減らすかです。スコープ1と2での排出は主に店舗でのエネルギー利用による排出になります。今後注目されている再生可能エネルギーの割合も活動指標にしていて、これらは連動しています。順調に推移をしていて再生可能エネルギーの割合は12.5%と良い進捗です。

美結 SBT認定も取得されていますよね?

はい、目標値に対して信憑性を高めたいと思い、世の中の基準に準拠できている目標なのかを、SBTイニシアチブという組織に認定をもらうことをしました。パリ協定に準じた目標値なのかどうかお墨付きをもらうことができました。
再生可能エネルギーの使用に関していうと、店舗が入っている商業施設様と会話を始めることからスタートしました。施設様もCO2の削減に取り組まないといけないけど、店舗はどう考えているのか? と思っていたようです。施設様と店舗の双方にサステナ担当がいて、コミュニケーションをとるようになって実を結んでいる印象ですね。

物作りに関わる人や従業員の課題やニーズに耳を傾け、解決策を考える

サプライチェーンで働く方たち、そして従業員の人権や働きがいに関する指標を作っていて、順調に推移しています。サプライチェーンに関していうとユナイテッドアローズには自社工場がなく、国内外の工場様と取引をしています。国内では工場監査によって、人権尊重や労働環境の状況を確認させていただいています。監査というと強い印象がありますが、我々としては物作りに携わる方の労働環境も最終商品に反映されると考えています。チェックするというよりは課題を共有して、より良くするための活動ですね。一緒に良くしていきましょうというスタンスでスタートさせたものです。
もう一つは従業員エンゲージメントです。SARROWSの目標を検討していた頃はコロナ禍で店舗が運営できずに、従業員も混乱した時期でした。そこでアンケートを取ったらスキルアップを望む人が多かった。そこで他社と提携して学ぶ機会を増やしたところ、従業員の満足度が上がりました。

美結 Shift Cでは「環境」「人」「動物」が3つの柱になっているのですが、日本の企業やブランドは「人」の部分で評価が低い印象です。ファッション業界にはサイクルがあって、どうしても工場に皺寄せがくることがあると聞いています。

私たちはコンプライアンスの意識を高く持っているので、無理な要求はしていないつもりです。その確認もあって工場監査をして対話をしています。
弊社がお付き合いしている国内工場様では外国人技能実習生と良い関係を作っているとことが多いようです。意識してチェックしないといけないと思っていて、2023年には314の企業や工場様にアンケートを取りました。

美結 日本以外の工場で作られている衣服の割合はどのようになっていますか?

シーズンによって変わりますが、自社企画ものとバイイングは6:4くらいで、さらに前者6割のうち海外生産8:国内生産2くらい。海外の方がシェアは高いのですが、海外の工場監査が今年は出来なかったです。

美結 これまでやってきて、成果など達成感を得たことはありますか?

先ほどお伝えした商品の廃棄率が0.1%を切ったのは、実績がついてきたなと思いましたが、サステナビリティ活動はすぐに結果が出ない複雑な活動だと思っています。でも結果が出るまでのプロセスの変化も大切で、風土とか文化にも通じると思うのですが、社内のメンバーがSARROWSの活動で期待されていることを理解して、自発的に行動しているのを見た時は感動しますね。当事者として、自分たちが何をするべきか課題を発見して解決する、それが続くことで数値に繋がる。そういう意識を持ったメンバーを増やしていきたいです。
我々も、環境配慮商品を何か作ろうかと思っているんだけど、という声を聞いたらサポートしています。ブランド間の情報共有が少ないので、橋渡しをするとか。
何かアクションをしたいなと思っていた人をみつけて、我々サステナ部門が繋ぐことを心がけています。

サステナブルな商品の背景や作り手の思いを、ストーリーとして伝えていく

美結 サステナブルなアイテムはどうしても値段が上がると思うのですが、それでも消費者に買いたいと思ってもらうための工夫はどんなことをしているでしょうか?

これはアパレルに限らずどんな産業でも、サステナブルな商品は価格が上がってしまうことが多いです。でも、価格が高くなるのには背景があって、従来のやり方に比べて工程が増える、時間と手間がかかるなどが考えられますが、それでもそれをやろうとしている人たちの考えや思いがあってこそのことです。その背景を知ってもらおうと思って「ヒトとモノとウツワ」というサイトを始めました。ストーリーを伝えることが大事だと思っています。

美結 今までが安すぎたってことですよね。

そうですね。正当な行程を踏もうとするとこうなるということや、挑戦している人がいることなど、商品の価値や背景を、私たち小売がお客様に伝えることが大事だと思っています。

取材を終えて
初めてうかがった、ファッションブランドのサステナビリティ担当の方からの生の実践経験談。何よりも印象的だったのは、インタビューが終わった後の「本当に地味なことの積み重ねです」というお言葉でした。ユナイテッドアローズという、誰でも知っているブランドが科学的なデータのバックアップを重視しながら取り組むサステナビリティのあり方、とても学びが多かったです。ブランドの得意とするスタイリッシュなビジュアルでサステナブルな取り組み 「SARROWS」を推進するユナイテッドアローズ。これからも楽しみにしています!

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