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ヴィンテージの魅力に惹かれ、ショップをオープン
2017年9月にオンラインからスタートし、2020年の1月に目黒区・祐天寺に実店舗をオープンした「Witty Vintage」。
ファッション業界で働いていた赤嶺さんがヴィンテージの魅力に惹かれたきっかけは、アメリカでメンズ向けのヴィンテージアイテムを買い付けていた赤嶺さんの夫の影響が大きかったという。ファッション業界でキャリアを積む中で、次第に古いものの価値に魅了され、当時の職場でもヴィンテージを扱う店舗への異動を希望するほど、その魅力に惹かれていったという。
「かつては大手アパレルブランドで働いていましたが、出産を機に一度退職しました。でも、育児が少し落ち着いた頃に再び何か仕事を始めたいと思い、夫と『レディースのブランドをやってみよう』という話になったんです。それが『Witty Vintage』の始まりでした。」
店をオープンするにあたり、赤嶺さんの夫の経験を活かしたヴィンテージアイテムを中心に展開することは自然な流れだったという。
「彼にとってレディースの買い付けは新しい領域でしたが、それが新鮮で楽しかったようです。特に、スカートや多彩なデザインに触れることで、メンズにはない面白さを見出していました。夫ならではの視点で買い付けたセレクトが、うちの強みでもあります。」
こうして始まった「Witty Vintage」の独自のセレクトは、今では業界関係者にも支持されるほど大きな魅力となっている。
こだわりのセレクトで紡ぐ、歴史と手仕事が息づくヴィンテージの物語
店内には、メゾンブランドのアーカイブから、ミリタリーウエア、デニム、インディアンジュエリー、オリジナルアイテムまで幅広いアイテムが揃っている。そのセレクトの基準は、「ウィットに富み、大人でも楽しめるデザインやサイズの古着」。ヴィンテージの奥深さとユニークさを活かしたアイテム選びが際立っている。
アメリカ各地で買い付けを行うのは、共同オーナーである赤嶺さんの夫。
必要なアイテムを求めてフリーマーケットやディーラーの倉庫を訪れるだけでなく、日本人バイヤーが行かないような田舎町などにも足を運び、そこでしか出会えない掘り出し物を見つけ出すのが強みだという。現地の売り手と長年にわたって信頼関係を築き、アイテムの年代ごとの生地感やステッチの違い、時代背景に込められた物語にまで目を向けながら、慎重に選び抜かれた古着が店頭に並んでいる。
また、Witty Vintageが取り扱うアイテムの条件は、“長く使える服”であることだという。
「例えば、フェルト生地が使われていることが多いメキシカンジャケットも、うちでは耐久性のある織物のものだけを扱っています。お客様が安心して長く使えるよう、特に素材にはこだわってセレクトしていますね。」
取り扱うアイテムは、一つひとつ洗濯や漂白、リペア、検品を重ね、最適な状態に仕上げてから店頭に並べられている。たとえシミがあっても、しっかりと染み抜きをし、リペアを施すことで、美しい古着として生まれ変わる。こうした手間を惜しまない姿勢と、アイテムごとのクオリティの高さが、Witty Vintageが支持され続ける理由だろう。
ヴィンテージの魅力について、赤嶺さんはこう語る。
「ヴィンテージアイテムには、デザインの美しさだけでなく、その時代背景が感じられる奥深さがあります。例えば、アメリカのカレッジスウェットには、前の持ち主がマジックで名前を書き込んでいることが多く、その名前を見るだけで過去の持ち主の存在を感じられる。そんな人の思いが垣間見えるところが、ヴィンテージならではの魅力ですね。」
さらに、1920年代やヴィクトリアン時代のブラウスのステッチなど、手作業による細やかな縫製にもヴィンテージならではの魅力が宿っている。デザインの美しさに加え、その時代を生きた人々の歴史や価値観が反映されたヴィンテージアイテムが現代に引き継がれていく——それこそが、時代を超えて愛され続けるヴィンテージの真髄と言えるだろう。
小さな選択が未来を変える——Witty Vintageのサステナブルな取り組み
Witty Vintageのもう一つの魅力は、環境への配慮を大切にした取り組みだ。赤嶺さん自身が環境問題に関心を持つようになったきっかけは、とある動画で地球温暖化の現実を知ったこと。「まずは身の回りの小さなことから変えていこう」と思ったことが、次第にショップの運営にも反映されるようになった。
「まずは自宅と店の電力を、再生可能エネルギー100%を供給する『みんな電力』に切り替えました。HPで簡単に手続きができますし、CO2排出量ゼロのエネルギーを使えるのがとても心地よいですね。」
SNSではマイバックの持参を呼びかけたり、「BAGGU」のトートバッグにショップのロゴを入れてオリジナルのエコバッグも製作しており、顧客にも環境への意識を広める工夫を行っている。
さらに、オンライン注文の発送時には、85%さとうきび由来のショッパーを使用している。従来のOPP(オリエンテッドポリプロピレン)と同等の強度を保ちながら、環境負荷を軽減するこのショッパーは、富山の会社と協力して一年かけて開発したもの。
「当時、日本にはおしゃれで高バイオマス度数の封筒型の袋がなかったので、色んな会社に問い合わせて、最終的に人柄も信頼できる会社にお願いすることにしました。」
以前の赤嶺さんは、環境問題に対して突き詰めすぎて疲れてしまうこともあったと振り返る。しかし、その経験を経て、少しずつ柔軟な考えへとシフトしていったという。
「昔は『もっと多くの人が(環境問題について)知れば、世の中は良くなるはず!』と信じていました。でも、多くのことを学ぶ中で、無理に知ってもらう必要はないし、人それぞれ受け止め方は違うのだから、と感じるようになったんです。その瞬間、肩の力がすっと抜けて、心が楽になりました。これからも、大切なことをシンプルに伝えながら、身近な人々や自分自身にやさしく寄り添うような発信を続けていきたいと思っています。」
ファッションを通じた、持続可能な社会貢献
Witty Vintageでは、オリジナルアイテムの製作や販売も行っている。大手ブランドとのコラボレーションを通じて服作りの楽しさを知り、自らの手でアイテムを生み出す意欲がわいたことがきっかけだったという。最初に製作したのは、サイドライン入りのジャージパンツ。
「古着にはない、古着に合うアイテムを作りたかったんです。ジャージは古着で見つけるのが難しいし、膝部分が傷んでしまっていることが多いので、まずはこのジャージパンツを作りました。」
また、オリジナルスウェットは、1950〜1960年代のヴィンテージデザインを再現しつつ、現代の体型に合わせたサイズ感に仕上げている。使用している生地は、オーガニックコットンとリサイクルコットンが半々で配合されており、環境にも配慮している。
また、赤嶺さんは「ファッションを通じて社会的なメッセージを発信したい」と語る。
その一例が、「all boobs are beautiful(すべてのおっぱいは美しい)」というメッセージが込められたオリジナルTシャツだ(現在は完売)。このTシャツには、同性カップルの胸、乳がんで片方を切除した胸、妊娠中に変化した胸など、多様な形や背景を持つ胸がアートとして描かれており、見た目だけでなく、多様性を称えるメッセージが込められている。
一方、このバンダナは、女性の性格や胸の形をイラストと文章でコミカルに表現した、ユニークなデザインが特徴だ。既存のヴィンテージのバンダナをベースに、その遊び心を活かして新たに生まれ変わったアイテムでもある。
Tシャツが多様性を称えるメッセージを発信しているのに対し、バンダナはユーモアと遊び心を前面に押し出し、ファッションアイテムとしての新しい楽しさを提案している。どちらのアイテムも、それぞれの視点から多様な価値観や表現の可能性を示していると言えるだろう。
「このデザインを気に入ってくれる人や、メッセージに共感してくれる人にとって、少しでも自分の考えを深めるきっかけになれば嬉しいですね。ファッションにメッセージを込められること自体が楽しいと感じているので、今後もこうしたアイテム作りを続けていきたいと考えています。」
さらに、これらのオリジナル商品(小物を除く)の売上の1%は、地域のハンディキャップを持つ方が通う施設に寄付される。寄付先には小規模な地域の施設を選び、少額でも直接的に支援できることに価値を見出している。持続可能な事業運営を考慮し、無理のない寄付率を設定することで、長期的な継続を目指しているのだ。
「1%の寄付の取り組みを通じて、他のアパレルブランドや古着ショップにもこの取り組みが広がり、新たな行動のきっかけになればと思っています。ファッションを通じて社会的なメッセージを発信することが、私たちの使命だと思っています。今後も社会的意義のある発信を続けていきたいですね。」
Witty Vintage
〒153-0053 東京都目黒区五本木2丁目13-1 1F
営業時間 / 13:00-18:00(不定休)
TEL 080-7523-0111
HP:https://wittyvtg.thebase.in/
Instagram:https://www.instagram.com/witty_vintage/
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