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ストーリー|2024.10.22

福島コットンの優しさを着る。松井愛莉が出合うM.INAMIのシャツ

3.11でがれきの山と化した土地を10年以上の歳月をかけ復活させ、福島の畑で大切に育てられたオーガニックコットンがある。その貴重なコットンで作られたシャツを着るのは、福島県いわき市出身の俳優、松井愛莉。たくさんの人の手作業と、重ねた時間と、思いが編み上げられた衣服を着る。ファッションの喜びを感じる瞬間に立ち会った。

撮影:立山大貴 スタイリング:木村舞子 ヘアメイク:小峰久乃 キャスティング:高岡英里子 原稿:古谷ゆう子

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“素材そのもの”が醸し出す、心地よい色味と柔らかさ

生成り色のそのシャツに腕を通すと、松井愛莉さんの瞳がひときわ大きく輝いた。
「肌触りが良くて、柔らかい。色味もナチュラルで、透け感もいいですね。形がシンプルなので、一年中着られそう」

TBS 「西園寺さんは家事をしない」に出演するなど、現在さまざまな映画やドラマで活躍する松井愛莉さん。彼女が着用したのは、「M.INAMI(エム ドット イーナミ)」のアイテム。デニム、パーカー、そしてシャツとユニセックスで展開する。
「デニムも見た目以上に柔らかく、着やすくて。履いていて心地よく、どこにでも行けそうです」

オーガニックコットンと、コットンリンター(種についている羽毛状繊維)のキュプラと、再生ポリエステルの混紡生地のシャツ。福島コットンは2~3%含まれている。シャツ¥27,500(ひなた工房双葉) ジーンズ¥77,000(M.INAMI)

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松井さん自身、私服では「ちょっとゆったりとした、自分にとって心地よいものを着る」という姿勢を大切にしている。
「『心地よく』は、ブランドとして大切にしているテーマなので、嬉しい限りです」と、「M.INAMI」代表の南祐太さんは言う。

松井さんがとくに心躍ったという、「肌触り」と「色味」はじつは狙って生まれたものではないという。
「素材の良さを最大限に活かそうとしたら、自然とあのような肌触りと色に落ち着きました。“素材そのもの”と言えると思います」(南さん)

松井さんがプライベートで好むのは、「着やすく、締めつけの少ないもの」。「若い頃は、比較的安い服を多く買いたい、という気持ちもありましたが、年を重ねると好きなスタイルも定まり、着心地を優先するようになりました」

コットンを通して、福島に行く人を増やしたい

この日、松井さんが着用した3つのアイテムには福島県南相馬市で栽培されたオーガニックコットンが2~3%使用されている。福島コットン100%のTシャツも作ったが、種まきから縫製まですべて国内で手作業された究極のTシャツの価格は(なんと)1着100万円。福島コットンの収穫量もまだまだ少ないので、今年生産にこぎつけたのは2枚だけだったという。それよりは、多くの人に「“福島コットン”を使用している」と周知して、手に取ってもらうことで、コットン栽培及び南相馬市という土地そのものに目を向けてほしいという想いがある。

ビスポークシャツブランド「MINAMI SHIRTS(南シャツ)」を率いてきた南さんが、福島で“オーガニックコットンプロジェクト”を始めたのは、東日本大震災から10年が経った2021年のこと。福島コットンを使ったセカンドラインとして「M.INAMI」がスタートした。

オーダーメードのシャツ職人として、日々コットン素材を使い洋服に向き合ってきたが、具体的にどのようにコットンが栽培されているかは知る由もなかった。7年ほど前のある日、南相馬市小高区でコットン栽培の体験会があると知り、イベントに参加したことがコットン栽培に携わるというアイデアに結びついていった。南さんは言う。 「東日本大震災により、太平洋沿岸部に甚大な被害がもたらされた際、千葉県出身の自分は何もできなかった。そのことがずっと心に引っかかっていたんです。同時に、復興はまだ道半ば、という気持ちもありました。次第に、『洋服を通して、福島に行く人を増やしたい』という気持ちが芽生えるようになっていました」

コットンを育てている農園は「みさき未来」。
種まきや収穫イベントなども行われ、今年の収穫は11月9日予定。

綿の木は、根が地中深くに育つため表土の汚染の影響を受けにくいとされる。 また、塩害に強く、水捌けの良い土地なら比較的栽培しやすいと言われている。潮風にも強い。

被災した方々が農業を復活させたいという強い想いでコットン栽培に取り組んでいるのだから、彼らがコットンだけで生計を立てられるようにしていきたい――。そんな想いから、南さんは1年ごとに収穫されたコットンをすべて買い取り、他の産地のコットンとブレンドすることでアイテムを生み出している。

4月に種を蒔き、収穫を行うのは11月。南さんは月1回ペースで畑へ行くが、年間を通した栽培は「みさき未来」農園が行っている。「みさき未来」農園は、津波跡地にいちはやくソーラーパネルを設置し、電力の売上を得ながら南相馬の農業復興をリードしてきた。そこで作られた電気は「みんな電力」を通して、全国の家庭やお店に届けられている。
コットン栽培が行われている土地は、かつて米づくりが行われていたが、東日本大震災後は掘れば瓦礫が出てくるような場所だった。
いま、福島県双葉町にはシャツ工場や撚糸工場も新たに誕生している。

パーカは、福島コットンとアルティメイトピマのオーガニックコットンのブレンド(福島コットンは2%程度)。和歌山の工場で吊り編み機で仕立てられ、地厚だがふわっとした肌触り。¥55,000(M.INAMI)

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知れば知るほど愛おしさが増す、郷土のコットン

福島県いわき市出身の松井さんにとって、南相馬市は同じ浜通り地区にあるため“ご近所さん”のイメージだという。土いじりや畑づくりが好きで「もともと田舎育ちなので、土に触れると心が元気になる気がします」と松井さん。

「福島でコットン栽培が行われていたなんて、まったく知りませんでした。どのように作られているのかを知れば知るほど興味が湧きますし、多少値が張っても『身にまとってみたい』という気持ちになります。そして、長く大事に着ていきたい、と素直に思います」

撮影後、南さんが南相馬でのコットン収穫の様子を動画で見せてくれた。コットンボールから、まるでふわふわの綿菓子のような白い綿が勢いよく飛び出す。
「わー、なんて愛おしい!」
松井さんはそう口にしながら、柔らかな笑顔を見せた。

松井愛莉
俳優・モデル。福島県いわき市出身。2023年には「美を醸すふくしまPR大使」として福島の発酵文化に触れる企画にも関わる。現在は新国立劇場での上演の舞台「Come Blow Your Horn~ボクの独立宣言~」に出演中。https://www.instagram.com/airi1226_official

UPDATER社とシャツの出会いについて
https://tadori.jp/note/cotton-minami/ 

「みさき未来発電所」について
https://portal.minden.co.jp/powerplant-info/MP000062
https://portal.minden.co.jp/powerplant-info/MP000058

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