きちんと洗って熱を加えることで、防水機能が回復し長持ちする
この日防水性ジャケットをもって集まったのは、都内にあるランドリー&カフェ。
「防水性ジャケットは洗えます。むしろ、洗ってしっかり汚れを落として熱を加えることで、防水機能が蘇りギアの寿命が延びるんです」
そう説明してくれたのは、マーチャンダイジング部の片桐さん。防水性ウェアの表生地にはDWR(耐久性撥水)加工がほどこされており、水を水滴状にはじく。しかし、汚れや皮脂によりDWRの繊維状の「撥水基」がぺたっと寝てしまうと水が定着してしまうので、この「撥水基」を立たせて水滴を跳ね返す状態にしておくことが重要なのだ。表面が湿った状態では汗がこもってしまい、ギアが本来もつ機能も快適さも発揮できない。雨、泥、汗、日焼け止め、食べ物の油など。。。苛酷な状況にさらされたジャケットは、まずはしっかり汚れを落とすこと。そして熱乾燥すること。
洗って乾燥機にかけると機能が落ちると思われがちだが、むしろ回復するのだ。
2025年には全製品がPFAS不使用に。その過程で辿り着いた洗剤「ストーム」
耐久性撥水加工には広くPFAS(フッ素化合物)が使われてきたが、2025年から欧州とアメリカの一部の州でPFASの使用が禁止されることを受け、パタゴニアでは10年以上に渡りPFASを使わない撥水加工を研究開発してきた。現在、フライフィッシング用のウェダー以外はPFAS不使用に既に移行済みで、2025年1月にはすべての製品がPFAS不使用になるという。
この移行プロセスにおいて、パタゴニア米国本社ラボで市場で販売される防水性ウェア用洗剤をテストした。その結果、PFAS不使用の製品に対して最も洗濯における耐久性とDWR機能の回復力がよかったのが、今回紹介された「ストーム」だ。イギリス生まれのストームは、排水の環境負荷が低く、リサイクル効率が高いアルミボトルを使用しており、もちろんPFAS不使用のDWR機能と相性がいい。
汚れを落とす「クリーナー」と、撥水加工の「プルーファー」があり、洗濯機の洗剤と柔軟剤ボックスに入れれば、1サイクルで撥水加工まで自宅でできるという。
では実際の洗濯プロセスを見ていこう。
How to WASH
1.ファスナー、ベルクロストラップはしめて、ポケットは開ける。ドローコードはゆるめる。
汚れがひどい場合は、ブラシに少量のクリーナーをとってぬるま湯で部分洗いする。穴や傷があったら、リペアパッチなどで修理を。
2.洗濯機の洗剤と柔軟剤の投入口をよく洗う。
普段使っている洗剤の蛍光増白剤や漂白剤、香料、柔軟剤などが残っていると撥水機能が削がれてしまう。きれいに洗い流したら、クリーナーとプルーファーを投入。
3.すすぎ2回で洗ったら、短時間の脱水をする。取り出して20分ほど吊るして水を切る。
4.低温で20~30分乾燥機にかける。
もしくは自然乾燥させた後に、あて布をして低温(110℃以下)でアイロン(スチームなし)をかけるのもいい。
MEMO
- 洗濯機でプルーファーを使った後は、投入口を水で洗おう。これを忘れると、その後に洗うバスタオルも撥水してしまうから。
- 撥水してもOKな化繊の服、例えばウィンドブレイカーや、フリースなどのミッドレイヤーは一緒に洗うのもいい。靴下やインナーなどは避けて。
限りある資源を使いながら、地球で遊ぶために
では、どのくらいの頻度で洗うのがいいのか?
「雨や汗でぐっしょりになったギアは、使用後すぐに洗うのがいいです。通勤やウィークデイにたまに着るという場合は、汚れ具合や頻度によりますが、数カ月おきに洗うのがおすすめ。洗濯は表面の撥水機能を保つだけでなく、裏地やシームテープの剥離を避けるためにも大切なんです」と片桐さん。
正しい洗濯をすれば、お気に入りのアイテムの寿命は確実に伸びる。
パタゴニアでは近年、「WORN WEAR」という中古ウェアの販売やリペアサービスにも力を入れている。そこにあるのは、新しい消費を抑えて、一着の衣類を長く使おうというメッセージ。さらには、限りある資源を有効に使いながら、“母なる地球で遊ぶ”という企業の姿勢だ。
このWash Partyは9月末~11月半ばまで、全国各地のパタタゴニア直営店、および正規取扱店でも行われる。近くで開催される際にはぜひ参加してみたい。
https://info.patagonia.jp/category-events/wash-party/