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廃棄やリサイクルに対し責任を負うEPR(生産者拡大責任)がアパレルにも
7月初旬、米カリフォルニア州で繊維リサイクル法案が州議会天然資源委員会で可決され、上院議会を通過した。もし成立すれば、アパレルや繊維製品の生産者は今後、繊維廃棄物の回収や修理、リサイクルなどを行う生産者責任組織を立ち上げて加入し、その運営コストも負担する義務が生じる。拒否した企業は州内で繊維製品を販売できなくなるという。
生産者が製品の生産や使用に留まらず、使用済み製品の廃棄やリサイクルに関しても責任を負うことをEPR(拡大生産者責任)という。例えば、日本でもエアコンや冷蔵庫など家電製品の一部にこのEPRが導入されている。カリフォルニアでは2022年にプラごみ抑制のためにEPRを導入した法律が成立しているが、同様の規制が繊維製品に適用されることになる。
全米で最も人口の多いカリフォルニア州の繊維廃棄量は約120万トン(2021年)。これは埋めたてごみのうち、5番目に多い量だという。同法の目的は、焼却や埋めたてに回る繊維ごみを減らし、リユースやリサイクルを促進することにある。また、廃棄物の処理コストが上乗せされれば、生産者は過剰生産に慎重にならざるを得なくなる。生産者の意識改革を促し、ファッション業界最大の課題といわれる過剰供給の悪循環に歯止めをかけることもねらいの一つだ。
廃棄物の50%以上はリサイクルに適した綿とポリエステル。リサイクルの市場機会は15億ドル以上
ファッション業界の持続可能性を目指して企業や財団などが共同設立した「ファッション・フォー・グッド」が5月に発表したリポート「循環のための分別 アメリカ版」によると、アメリカは世界で最も繊維製品を消費・廃棄しているにもかかわらず、繊維廃棄物の再利用やリサイクルは約15%に留まっている。
今後、アメリカが官民連携で繊維リサイクルを促進するに当たって、同リポートでは、(1)「消費者の繊維廃棄物の処分方法」、(2)「繊維廃棄物の素材について」、特にこの2 点のデータが不足しているとして1200人を対象にした調査を行った。(1)に関しては6割が使用済の繊維製品をいつも寄付したり、知人に譲渡したり、再販売するなどと答えたが、4%は常に廃棄していると答えた。また(2)に関して、最も多い素材は綿とポリエステルで56%以上はリサイクルに適した素材であることが明らかになった。データを基に試算した結果、繊維リサイクル事業には15億ドル(約2400億円)の市場機会があると報告している。
カリフォルニアの繊維リサイクル法案賛同者には、上記のリポートプロジェクトの主要メンバーである大手スリフトストアのNPO「グッドウィル・インダストリーズ」なども含まれる。持続可能なファッションを志向するブランドや環境団体など、さまざまな支援者の協力を得て法案を提出したジョシュ・ニューマン上院議員は、「カリフォルニアはこの新法で繊維リサイクルとごみ削減で世界のリーダーになる」と意気込む。また、繊維リサイクル研究所「Circ」のCEOピーター・マジェラノフスキー氏も、「繊維リサイクルは国内の成長産業。地域の雇用を生み出し、製造業を復活させている」と法案成立後のさらなる追い風に期待を寄せている。
参考:
https://sd29.senate.ca.gov/news/press-release/newmans-landmark-textile-recycling-bill-advances-california-assembly
https://www.wastetodaymagazine.com/news/california-senator-newman-textile-epr-recycling-senate-bill-707
https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1222751_1532.html
https://pirg.org/california/articles/california-could-establish-first-of-its-kind-textile-recycling-program/