エディターズコラム|2023.12.13

サステナブルファッションの解像度を上げる10の視点

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この記事をご覧の皆さんは多かれ少なかれ「サステナブルファッション」に興味があると思います。しかし、サステナブルファッションとは何ですか?と聞かれてすぐに答えられる人は少ないですよね。

それもそのはず、この「サステナブル」の意味を追求すればするほど、自然環境や海外の生産工場など地球規模の話と、私たちの「欲」や「憧れ」といった個人の内面の話がどちらも押し寄せてきては、「一筋縄じゃいかないよね」という結論になりがちです。

そこにはワクワクする気持ちだけでなく罪悪感、もしかしたら反発を覚えたりする感情も入り混じっているかもしれません。そしてそれは、単純化してわかったつもりになるよりもずっと真実に近いと、私たちは考えています。

とはいえそれだと身動きが取れなくなってしまいます。そこで、このぼんやりと霧がかかったサステナブルファッションに取り掛かる一歩として、もう少しわかりやすい10の視点に分解したいと思います。これ取り入れてみたい!とか、これとファッションが繋がるのか!などの発見があると嬉しいです。

①適量生産

なるべく余らせず、売れる分だけを作るのが「適量生産」。例えばAIを使って需要予測の精度を上げるなどの施策があります。

なお最終製品だけではなく生地なども含めた在庫が余らないようにするには、多くの場合生産ラインの抜本的な見直しが必要となります。また、出てしまった余剰在庫に対してはアップサイクルなどの施策もあります。

②ファッションロスゼロ

原材料から最終処分までの全過程における、単純焼却および埋め立て処分ゼロのこと。達成のためには、生産段階で発生する端材の再資源化、衣類回収システムの構築、リサイクル技術の高度化などが進められる必要があります。

③持続可能な素材

環境負荷がより低い素材のこと。例えば、生産時の水・エネルギー使用量が少ない素材、生分解スピードの早い素材、エコ加工を取り入れた素材、使用後にリサイクルしやすい素材などがあります。

また、バージン素材に代わりリサイクルポリエステル、リサイクルウールなどを使用することも負荷低減が実証されています。

④ケア・リペア・リユース

消費者一度手に入れたものをなるべく長く使用することで、新たに服を作るための、または廃棄による環境負荷を減らす考え方。消費者として服を長く使用するには衣服の物理的・感情的な寿命を伸ばす必要があります。ひとりの消費者の元での寿命を伸ばすことに加え、二次流通(リセール)の活用も効果的です。

⑤生物多様性への配慮

地球上では人間などの動植物から菌類などの微生物まで、あらゆる生物たちが関係しながらバランスを保っており、その多様さが失われると様々な資源に影響を及ぼしてしまいます。そのためオーガニック栽培の推進やマイクロプラスチック問題への対策、温室効果ガスの削減により生物多様性の劣化を回避したり修復したりする動きがあります。

⑥フェアトレード

対等なパートナーシップに基づいた取引で、不当な労働と搾取をなくすこと。厳格な基準をクリアしフェアトレード認証を受けているもの、認証は受けていないが独自の工房などを運営するなどして公正な取引、労働環境の保証を行うものなどがあります。

⑦動物福祉

ヴィーガン(動物性原料を一切使用しないこと)、または何らかの形で動物福祉に配慮したものづくりのこと。古来よりファッションはレザーやファーなどを利用して発展してきましたが、命をいただいている事実を自覚し、それを無駄にすることを避ける取り組みです。近年では植物由来の原料でレザー調に仕上げた素材なども登場しています。

⑧国内生産

国内で生産された製品を国内で消費することは、モノの輸送によるCO2排出量削減につながります。注意するべきは、近年国内縫製工場において海外技能実習生の労働環境が問題視されていることです。

解決のために工賃を上げ、コストの上昇を小売価格にも反映し、それを顧客に根気よく説明していくことで日本のものづくりや地域産業の課題を解決していこうという動きがあります。

⑨伝統技術の活用

伝統技術・工芸を取り入れたものづくり、丁寧な手仕事で作られたヴィンテージ品を取り入れたものづくり、高度な熟練の技術をもって作られたものづくりなど、昔から受け継がれてきた文化・技術を未来に伝え残すような取り組みを指します。現代の感覚や生活に合うようアップデートされた伝統技術が受け入れられています。

⑩寄付・社会貢献

利益の◯%を寄付するといったチャリティーなど、本業の利益やビジネスモデルを生かして社会貢献活動をすること。チャリティーや寄付を行う場合には、対象となる商品もサステナブルなものであることが理想的です。

ここに挙げたそれぞれの視点は複雑に入り組んでいて、テーマによってはデータが乏しい場合もあります。それでもいま、ファッション産業に関わる人や行政、そして消費者の私たちが、それぞれの立場から独自の問いを立て、変化を生み出し始めています。

少しサステナブルファッションの解像度は上がりましたでしょうか?新たな視点を持って、今まで知らなかったお気に入りのブランドを発掘するのもよし、好きなブランドの取り組みを検索してみるのもよし(そしてもし、好きなブランドの情報が見つからなければ勇気を出して問い合わせてみるのもよし!)。

新しいファッションの楽しみ方として、あなたなりのサステナブルを深めていってくださいね。

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本記事は日本のユーザーの方のために、「多様で、健康的なファッション産業をつくる」ことをミッションに活動する一般社団法人unistepsが執筆しています。

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