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SNSで出会った、スローフラワーという言葉

神奈川県の北部、相模湖の近くにある藤野という土地で、four peas flowersを主宰する三井聡子さんが花農家を始めたのは約10年前のこと。40歳を迎える前に、自分の手で何かを始めたいと思った時に“スローフラワー”という概念を知った。
「インスタグラムを見ていたら、アメリカのワシントン州の花農家さんが小さいトラックの荷台にダリアの切り花をいっぱい載せている写真をあげていたんです。それがとても印象的でキャプションを読んでみたら、スローフラワーという言葉に出会ったんです。その定義が、無農薬でビニールハウスを使わずに育てた季節の花、いわゆる露地物(ろじもの)の花のことだと分かったんですね。 無農薬の花に魅せられて、調べてみたら無農薬のお花が日本にほとんど存在しないことを知ったんです。それからオンラインのワークショップに参加して花の栽培について学びました」(花農家、four peas flowers主宰・三井聡子さん、以下同)


それ以前は、花を仕事にしてきたことはない。ただ、父親の仕事で小学校1年生から高校1年生までアメリカで生活をしたのだが、両親が花好きだったため春夏になると必ずファーマーズマーケットで苗を買ってきて庭に植えるという生活が身近にあったのだそう。
社会人になってから就いた通訳と翻訳の仕事は、今もフリーランスとして続けている。
子供4人を育てる環境を考える中で、東京から離れた地方も候補にあったが、当時は今ほどリモートワークが一般的ではなかったので、首都圏を離れるのは難しいと思った。
そんななか、藤野は都心から車や電車で1時間ちょっとという場所にあり、東京から移住してくる人も多いのだという。
「藤野はよくキャンプをしにきていたところで、全く知らない場所ではありませんでした。ここは戦時中も都内のアーティストが疎開しに来ていたそうです。外からクリエイティブ系の人たちを受け入れる土台がある土地なのです。都内で仕事があってもすぐに行くことができるのも便利だなと思って、ここを選びました。
16年前に東京から藤野に引っ越してきて、最初は半自給自足的な暮らしをしたいと思っていたけど、野菜の栽培がどうも性に合わなくて(笑)。その時に花に出会って、育て始めてみたら楽しくて、これだ!と思ったんです。それ以来野菜は育てていないです。始めた頃はご近所さんたちからは『こんないい土地なのに、なんで食べられない花なんて育ててるんだ?』と言われていました(笑)」
女性の特性を活かせる、スローフラワー農家としての活動

スローフラワーの第一人者はアメリカ在住の女性で、携わっている9割が女性なのだという。
「スローフラワーって大量生産を目的にしていないし、やっている人たちも、もともと花農家として活動していたわけではないんです。花が好きで、自分たちが育てた花を人にあげたら喜んでもらって、それでどんどん育てるようになったという人が多くて、地域の人たちと共有するっていう精神に基づいているんですね。地産地消で、遠くに送ることもないですし。収益性の高いビジネスにしていこうという考え方とは、軸が違うのかも知れません」
今は聡子さんを含めた4人で作業を行なっている。内訳は前からの友人やママ友たち。聡子さん自身も4人のお子さんを育てている。
「アメリカでもスローフラワーをやっている花農家は子育てをしていたり、兼業で花農家をしている方が多い。そのことを伝えていきたいですね。『私にもできるかも!』って思って欲しいし、実際にこの仕事をしていて問い合わせてくるのは大体女性です。
農業は男性がメインの業界で、代々続いていて大きな土地で育てて何千本を毎日出荷しているというイメージがあるけど、スローフラワー農家はそこまで大きくなくてもできるんですよね。
子育てをしながらだから、早朝はお弁当作って洗濯して夕方は子供の送迎がある。常に仕事以外のタスクがある生活の中でもできることを見つけて、自分たちでも試してもらいたいです。
私も花農家を始めてすぐに、このやり方で大丈夫なのかな?と思って、アメリカに行ってスローフラワーをやっているいくつかの農家に見学させてもらいました。
そうしたら、自宅の裏庭でちょっとやっている人もいれば、大きい土地でやっている人もいました。規模は関係なく、花農家ですって言っていいんだって思って、スローフラワーに興味を持っている人にも、そのように伝えています。
スローフラワーに携わる女性たちが全国に点々といるようになってネットワークが広がっていけば、どこに住んでいてもこの無農薬の花が手軽に買える世の中になると思うんです。
女の人ってそういうネットワークやコミュニティを作るのが得意じゃないですか。それを活用していきたいですね。
自分の栽培方法を自分だけのものにするのではなく、みんなで集まって、私はこうしてる、ああしてるって情報交換をして、なんなら種を交換しあっていくのが私の理想です」
自然の力に抗わず、その先に生まれるものを受け入れる

我々が畑にお邪魔した10月後半は、ダリアが最後の花を咲かせていた。聡子さんたちの畑では年間を通して約40種類の花を育てていて、もうすぐ花の収穫は終わるが来年に向けての畑作りや種まきが始まっていた。
「台風が来たり春になったと思っても雪が降ったりして、自分がコントロールできないことはたくさんあります。
始めた最初の5〜6年は台風が来たら花が倒れないように必死になって固定していましたけど、最近は抗わなくなりました。
茎は倒れても起き上がるんですよね。それはそれで面白い形になるんです」

「スローフラワーの認知度はまだまだ低くて、無農薬の花があるということも知られていないので、もっと知ってもらうように活動する時期なのかなと思っています。
無農薬の花なんて食べるものじゃないからいいじゃん!という人もいて、野菜に比べると必要性が実感しづらいみたいで。

でも農薬を撒くことで虫が減ってしまう、こんな綺麗なものを作っているのに、豊かな土や水が奪われてしまう、温度をコントロールするためにエネルギーを燃やすというのは地球に優しくない。スローフラワーは人間のためではなくて、地球のためなんだってことを伝えていきたいです。強すぎない言葉で(笑)」
four peas flowers
2026年11月現在は、花の季節は終わり、ブーケ等の販売はお休み中。今後の活動はインスタでチェックを。