※この記事はGood on youの「Material Guide: How Sustainable is Nylon? 」を日本市場向けに翻訳し公開しています。
Contents
ナイロン素材とは?基本知識と特徴
ナイロン素材とは、主に石油由来の合成繊維で、世界初の完全合成繊維です。その誕生は化学繊維の時代を切り開いた革命的な出来事でした。
【ナイロン素材の主な特徴】
- 強度:絹の約3倍の強度があり、非常に丈夫
- 耐久性:摩擦や引き裂きに強く、長持ちする
- 弾力性:適度な伸縮性があり、フィット感が良い
- 速乾性:吸水性は低く、乾きやすい特性がある
- 軽量性:同じ強度の天然繊維と比較して約40%軽い
これらの優れた特性から、ナイロンはタイツやストッキングだけでなく、スポーツウェア、水着、アウトドア用品、さらには歯ブラシの毛や傘など、私たちの生活のあらゆる場面で活躍しています。
ナイロンの誕生とその歴史
ナイロンが一般に広く普及したのは、第二次世界大戦の頃です。その歴史は意外と深いんです。
戦時中のナイロン製品の2つの重要な役割
- 軍事用途:その強度と耐久性を活かし、パラシュート、テント、ロープ、タイヤなどの軍事製品に使用されました
- 絹の代替品:アジアからの絹の輸入が大幅に減少したため、ストッキングなど、それまで絹で作られていたものをナイロンで代用するようになりました
そもそもナイロンって何からできてるの?
ナイロンの正体は、原油由来のプラスチックの一種です。具体的には「ポリアミド」と呼ばれる素材で、石油や石炭に含まれる炭素系の化学物質を高圧の加熱環境で反応させて作られます。
この化学的な工程を経ることで、強力で伸縮性のある、とても汎用性の高い繊維が生まれるのです。
ナイロン素材のメリットとデメリット
ナイロン素材は優れた特性を持つ一方で、環境面では多くの課題も抱えています。サステナブル素材を選ぶ際に知っておくべきナイロンのメリットとデメリットを、具体的なデータとともに解説します。
【メリット】
- 耐久性:適切なケアで10年以上使用可能
- 軽量性:同じ強度の天然繊維と比べて大幅に軽量
- 多用途性:様々な製品に応用でき、実用性が高い
【デメリット】
- 生分解性なし:自然環境で分解されず、何百年も残留する
- 温室効果ガス排出:製造時に排出される亜酸化窒素は、CO2の300倍の温室効果を持つ
- 水資源消費:1kgのナイロン生産に約500リットルの水を使用
- エネルギー消費:天然繊維と比較して約2倍のエネルギーを製造時に消費
- マイクロプラスチック:1回の洗濯で約70万個のマイクロファイバーが放出され、海洋汚染の原因に
ナイロンが地球に与える環境負荷
ナイロンの強度や耐久性の高さは、裏を返せば「分解されにくい」ということでもあります。その環境への影響は以下の3つに集約されます。
1. 温室効果ガス
ナイロンの製造過程では、CO2の300倍もの温室効果を持つ亜酸化窒素が発生します。これが地球温暖化を加速させる原因の一つになっています。
2. 水資源の問題
繊維を冷却するために大量の水が使用され、その過程で環境汚染や公害を引き起こします。実際、1kgのナイロン生産には約500リットルの水が必要とされています。
3. エネルギー消費
ナイロンの製造は非常にエネルギー集約的なプロセスを経るため、天然繊維の約2倍ものエネルギーを消費し、環境負荷と地球温暖化の原因となっています。
サステナブル素材としてのナイロンの可能性
サステナブル素材とは「環境や社会に配慮した持続可能な素材」のことです。従来のナイロンは環境負荷が高いものの、新しい技術により「循環型素材」としての可能性が広がっています。
サステナブル素材としてのナイロンの取り組み
- リサイクルナイロン:廃棄物から再生された素材(例:ECONYL®)
- バイオベースナイロン:植物由来の原料を一部使用したナイロン
- 製造工程の効率化:エネルギー消費と水使用量の削減に取り組む製法
ECONYL®の環境メリット(従来のナイロンとの比較)
- CO2排出量:大幅に削減
- 原油使用量:製造過程での原油消費を大きく節約
- 廃棄物削減:海洋プラスチックや産業廃棄物の再利用
サステナブル素材としてのナイロン評価
評価項目 |
従来のナイロン |
リサイクルナイロン |
バイオベースナイロン |
原料 |
石油100% |
廃棄物/使用済製品 |
一部植物由来原料 |
CO2排出量 |
高い |
大幅に削減 |
一定量削減 |
生分解性 |
なし |
なし |
一部あり |
耐久性 |
非常に高い |
高い |
高い |
コスト |
標準 |
やや高い |
高い |
ポイントは「循環型」かどうか
ナイロンはプラスチックの一種なので、リサイクルが可能です。私たち消費者が、よりサステナブルなナイロン製品を選ぶ際に役立つブランドや取り組みをご紹介します。
例えばSwedish Stockingsは、リサイクル糸から美しいストッキングを生産しています。この工場では、染料の選定や、染色後の水処理、製造工程で必要なエネルギーの大部分を太陽光発電でまかなうなど、環境負荷の少ない方法を採用しています。
環境に配慮したリサイクルナイロン製品ブランド紹介
Swedish Stockings
レーティング:良い
Swedish Stockingsは、高品質なストッキング、タイツ、靴下などを責任を持って製造しています。さらに、靴下業界をクリーンにするためのリサイクルプログラムも提供しています。ブランドを問わず合成繊維製のストッキングを3足以上送ると、次回購入時に使える10%割引コードがもらえるのです。
ECONYL®
廃棄物や排出物を大幅に削減するクローズド・ループ・システムで、リサイクル・プラスチックから作られる低環境負荷ナイロンです。Stella McCartney, Finisterre, Outerknown など多くのブランドに採用されています。
Stella McCartney
レーティング: 良い
エシカルトレーディングイニシアチブとサステナブルアパレル連合のメンバーのステラマッカートニーは、ラグジュアリーファッション業界全体で優れた環境基準を設定しています。リサイクルポリエステルやオーガニックコットンなど、環境負荷の低い素材を使用し、サプライチェーン全体で廃棄物を削減する取り組みをおこなっています。
Outerknown
レーティング: 良い
サーフチャンピオンのケリー・スレーターによって設立されたこのブランドは、スタイルや機能性と天然資源保護を調和させることを目指しています。ブルーサイン認証を取得し、公正労働協会と提携しています。
Finisterre
レーティング: 良い
イギリスのサーファーたちのニーズから生まれたこのブランドは、海を愛する心から設立され、卓越した製品を取り揃えているサステナブルなアウトドアブランドのパイオニアです。
マイクロプラスチック問題に注意しよう
たとえECONYL®が海洋ゴミの削減に貢献しているとしても、また従来の合成繊維よりも環境に優しい選択肢であるとしても、マイクロプラスチックの問題は依然として存在しています。
マイクロファイバーと呼ばれるプラスチックの小さな破片は、リサイクルされた合成繊維も含め、合成繊維で作られた衣類が洗濯されるたびに(あるいは着用するたびに)排出され、何十億という単位で海に流れ込んでいます。実際、マイクロファイバーは海洋や海岸線を汚染する最大の原因の一つで、急速に海の生態系を乱しています。
マイクロプラスチック対策としてできること
- 洗濯ネットやGuppyfriendなどの専用バッグを使用する:マイクロファイバーの流出を大幅に削減できる
- 洗濯回数を減らす:必要以上に洗わず、汚れた部分だけをスポット洗いする
- 低温・短時間洗濯:高温・長時間の洗濯はマイクロファイバーの放出を増加させる
まとめ:サステナブルなナイロン選びのポイント
ナイロンは私たちの生活に欠かせない素材である一方、環境への負荷も大きい素材です。より環境に配慮した選択をするためのポイントをまとめました。
- 可能な限りリサイクルナイロン製品を選ぶ
- 質の良い製品を長く使い続ける
- 使わなくなったナイロン製品はリサイクルに出す
- マイクロプラスチック対策を意識した洗濯を心がける
ナイロンが環境に負荷をかけているのは事実ですが、それを改善しようと懸命に取り組んでいるブランドはたくさんあります。一人ひとりの選択が、より持続可能な未来につながっていくのです。