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リサイクルにはもったいない!? 回収した衣料品の状態の良さからリユースへと方向転換してスタート

無印良品が自社の衣料品回収を始めたのは2010年のこと。他社が行なっていた綿製品をバイオエタノールにしてエネルギーにする「FUKU-FUKUプロジェクト」に参画していたのだ。無印良品の衣服は天然素材のものが多く、このリサイクルに適していた。
「でも回収した衣服にはきれいなものが多いことに気づいて、リサイクルするのはもったいないようなアイテムをリユースさせることにしたのが、衣服リユースを始めたきっかけです。2015年に衣料品に特化した「無印良品 天神大名」(現在閉店)のオープンに合わせて、回収した衣服を染めた、“染めなおした服”シリーズを発売しました」(株式会社良品計画 循環推進部 循環推進課 戸村幸太さん)
それから10年。ReMUJIのアイテムには“染めなおした服”“洗いなおした服”“つながる服”の3シリーズがある。
回収ボックスは全店舗にあり、スタッフが一つ一つ検品して、状態の良いものをリユース、そうではないものはリサイクルへと回しているのだ。
1. 染めなおした服

藍色もしくは黒に染め直すことで、衣服の変化を感じられる。ポリエステルの糸は染まらないので、ポイントとなり表情が出ることも。990円~1,990円(税込)
2. 洗いなおした服

2021年の「無印良品 新宿靖国通り」のリニューアル&ReMUJIスペースを広げるのにあわせてスタートしたシリーズ。そのままでもまだ着られるような状態の良い衣服を、丁寧に洗い汚れや匂いを落として販売している。色落ちしたデニムやニュアンスの出たリネンなどが人気だ。990円~3,990円(税込)。
3. つながる服

こちらも2021年からスタート。複数の衣服を切って繋げたリメイクアイテム。袖や襟などの傷んだ部分を他の衣服から持ってくるなどして、できるだけ無駄にしないで活用している。3,990円~14,900円(税込)。
回収量、販売数ともに年々増え続けている


2024年の繊維製品の年間回収量は約97トン、そのうちReMUJIとして販売したのは55,746着、前年比約200%だった。プロジェクトとして順調に成長しているようだが。
「お客様が衣服を手放すのが、やはり衣替えのタイミングが多いため、夏になると冬物が集まってくるなど、回収と販売に時差が出てしまいます。また、回収してみないことには、どんな材料や素材が集まるか分からない。色々課題はあります」(戸村さん)
「私はこの仕事に加わったのが半年前で、以前は商品開発をしていました。そこではゼロからもの作りを初めて、ほしい素材を手配していたのですが、この部署では回収品をどうしたら売れるのかという考え方がベースにあるので、以前のもの作りとはまったく違いますね。
回収した衣服も、たとえば同じ綿でも状態が違います。まっさらなものを加工するのではなく、一度使ったものをどう加工するかを考えるのはなかなか難しいです」(株式会社良品計画 循環推進部 循環推進課 川上真由子さん)
「でも回収される衣服の量は増えているので、このプロジェクトに共感してくれている人が増えているという実感はありますね。
衣服を捨てることに抵抗を感じる人が増えているのかな、とも思います。無印良品以外にも町中で衣料の回収ボックスを見かけることが増えてきましたし。世の中の変化とReMUJIが続けてきた10年が重なった感じですね。 ReMUJIは無印良品の衣料品のコア層である40代50代の女性に多く買ってもらっています。その方たちが、無印が回収をしていることを知って回収にご協力頂いたり、ReMUJIを購入して頂いたりすることで、衣料品が資源として循環する活動にご参加頂いています」(戸村さん)
「無印良品 イオンモール橿原」のReMUJIコーナーは約300坪

そして今年の3月1日に奈良県にオープンした無印良品 イオンモール橿原では、売り場面積約2,500坪(約8200平米)のうち300坪がReMUJIコーナーとなっている。自然・循環・文化をテーマにしている店舗ならではのチャレンジだろう。そして初めての試みとして、生活雑貨のリユース販売も行なっているのだ。
「今回のオープンに合わせて奈良や関西エリアで家具などの生活雑貨を回収しました。大きいものだとシェルフなどでしょうか。
メンテナンスをして販売しているのですが、服と違って素材もバラバラでメンテナンスの方法もアイテムによって違うのでなかなか難しいようです」(戸村さん)
「昔の生活雑貨が集まっていて、社員にとっても懐かしいアイテムもありましたね。きれいな状態なのを見ると、丁寧に使ってくれたんだなと嬉しくなります」(川上さん)
なお、生活雑貨は無印良品製品のリユースだけでなく、買付したユーズド家具の販売もしている。
「オープン時に応援で店頭に行ったのですが、ReMUJIコーナーの衣服がリユースだと気づかないで見ていらっしゃる方も多かったですね。私たちの説明を聞いて、無印良品で衣服を回収していることを始めて知ったという方もいました。まだまだ私たちの活動も広く伝える必要があるなと思いましたが、年齢の幅も広くいろんなお客様に受け入れられた印象ですね」(川上さん)
橿原店のオープンにあわせてラインナップに加わったものもある。
染めなおした服


日本各地の残渣を染料の一部に活用して染色したもの。左からキハダ、菊の茎。この他に柿の皮を使用したものもある。
ReMUJIが今後目指す姿とは
ぜひ首都圏でも展開してほしい取り組みだ。ReMUJIプロジェクトが今後目指す姿とは?
「ReMUJIは“服は布から”がコンセプト、やりたいことは服を資源として活用できることをお客様に伝えることです。このことがみなさんの行動を変えて、結果的にごみを減らせるようになっていく。この事業を広げることが、その状態に近づけることなんだと思います。
一番はご購入いただいた服を長く大切に着て頂くことですが、お客様が服を手放したいと思ったときに無印良品のお店に持ってきてもらったり、ReMUJIで服を買うことでご自身が気軽に循環に参加いただけることを伝えていきたいですね」(戸村さん)
ReMUJIを扱う店舗は

回収ボックス:無印良品全店舗に設置
回収品:無印良品の衣料品全般(下着・靴下・靴・バッグは対象外)*MUJIパスポートを提示すると1日一回上限で1,000マイルが付与される
ReMUJI商品取り扱い店: 全国34店舗(2025年5月1日時点)。“染めなおした服”、“洗いなおした服”は全店舗で販売、“つながる服”は一部店舗で取り扱っている。