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ニュース|2026.06.24

「戦略ミスだった」。シーインのパリ常設店がわずか7か月で撤退。

パリの老舗百貨店「BHVマレ」にあるシーインの実店舗が閉店する。背景にあるのは、前親会社が進めたシーインの誘致が招いた、ブランドの大量撤退と百貨店の混迷だ。この危機に対し、同店の経営陣が損失覚悟で、店舗の経営権を親会社から買い取ることで合意。新体制への移行に伴い、シーインと契約終了に舵を切った。

写真: FreeProd33/Shutterstock.com

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「百貨店をより大衆的に」希望からわずか7ヶ月での閉店

2025年11月、パリ・マレ地区にある1856年創業の老舗百貨店「BHVマレ(Le BHV Marais)」に、世界初となる常設実店舗を開設したシーイン。しかし、この異例の提携は業界に大きな衝撃を与えている。

オープン当初から店舗前では連日抗議デモが行われ、元々入居していたディオールなどの高級ブランドが相次いで撤退を表明した。フランス政府も店舗のオープンに先立ち、シーインのマーケットプレイスにおける違法商品問題を理由にサイトの全面禁止を求めて提訴したが、この訴えは棄却された。

同百貨店を2023年から運営していた不動産会社SGMのフレデリック・メルラン社長は、シーインの誘致を「百貨店をより大衆的(populaire)なものにするための手段」と話していた。

それからわずか7か月後の2026年6月16日、現地メディアの報道により、BHVマレからシーインの撤退が明らかになった。これは、マレ店の最高経営責任者(CEO)をはじめとする同店の経営陣が主体となってSGMよりBHVマレを買収し、シーインの退店に舵を切ったことによる。  新たに経営トップに就任したコッタンダン氏は、シーインの誘致について「戦略ミスであった」と明言。シーインを「理想的には」2026年のクリスマスまでに完全撤退させる見込みであることを明らかにした。

シーインが撤退に迫られた3つの要因 

① 店舗経営陣による経営権の買収と「コアビジネス」への原点回帰 

今回の撤退決定は、BHVマレの運営権の移行にともなう新経営陣の方針転換によるものである。

現地報道によると、シーインの入居以前から、前運営母体であるSGMグループのもとではサプライヤーへの支払い遅延(未払い請求書問題)が発生しており、既存ブランドとの関係悪化や百貨店の経営基盤における課題が生じていた。シーインの誘致と、それにともなうブランドの撤退は、こうした状況下で発生したものである。

こうした中、BHVマレの最高経営責任者(CEO)を務めていたカール=ステファン・コッタンダン氏を中心に、マーケティング、アート、人事などの各ディレクター陣、そして多くの従業員が参画した店舗の経営陣が動いた。彼らは損失覚悟でSGMグループに買収案を提示し、店舗の経営権を買い取ることに同意を得た。コッタンダン氏らは今回のシーイン誘致を「戦略ミスであった」と認めている。 

2026年のクリスマスまでに同社を完全撤退させる見込みを示した上で、今後は「ホームウェア、インテリア、DIY」といったBHVマレが歴史的に強みとしてきた本来のコアビジネスに再び注力し、サプライヤーとの関係再構築を目指す方針を明らかにしている。なお、コッタンダン氏らは今回の買収提案のためにCEOを辞任しており、今後はこの買収チームを中心に、現場主導で店舗を再編することを目指している。 

②約100の既存ブランドの大量撤退という誤算

シーインの常設店開設は、百貨店側にとっても深刻な誤算を招いた。ウルトラ・ファストファッションのビジネスモデルや環境負荷に対する批判が根強い同社が開店した後、ディオール、ゲラン、アニエスベーをはじめとする約100もの既存ブランドが、BHVマレから次々と撤退していった。

この大量撤退についてBHVマレの経営陣は、ファストファッション大手の参入に対する強い反発、あるいはITシステムに関連する未払い請求書(支払い遅延)のいずれかが原因であると分析している。結果として、斬新さを狙ったシーインの誘致は、既存ブランドの大量撤退を招くこととなった。 

③オンラインとの価格差が生んだ「安くないシーイン」

消費者目線で話題となったのが、ECサイトと実店舗における「価格の不一致」であった。 海外メディアの報道によると、オープン当初こそ格安のトレンド服を求める人々が列を作ったものの、実際の店頭価格はオンライン上の価格設定から大きく乖離していた。パリの一等地における店舗維持費や物流コスト、正規の輸入関税などが上乗せされた結果、店頭価格はオンラインを大幅に上回ったとされる。

  • ジーンズ: オンライン 約13ユーロ ➔ 店頭 40ユーロ
  • セーター: オンライン 約15ユーロ ➔ 店頭 32ユーロ

シーインの売りである圧倒的な低価格を期待して訪れた人の間では、「オンラインで購入した方がはるかに安く、がっかりした」という声も上がった。

環境保護や人権配慮に敏感なフランス社会において、シーインへの風当たりは日増しに強まっている。フランス政府は6月初旬、製品のトレーサビリティやラベル表示の不備を理由に、同社に対して総額2200万ユーロ(約37億〜38億円)を超える巨額の罰金を科した。2025年11月のマーケットプレイス停止要求や、同年7月に消費者を欺くような割引表示を問題視して4000万ユーロ(約67億〜68億円)の罰金を科した経緯もあり、同社に対する監視の目は依然として厳しさを増している。

【参考文献】

IntoTheMinds: “Shein at BHV: analysis of a fiasco and outlook for 2026” (Market & Consumer Behaviour Report)
・Reuters: “French store BHV ends partnership with retailer Shein” (2026/06/16)
・The Business of Fashion: “Report: BHV Ends Partnership With Shein”
・Le Monde: “Paris’s BHV department store to part ways with Shein after ownership change” (2026/06/16)

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