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ニュース|2026.06.12

「KK60 ~コイズミ記念館~」ツアーに子どもたちを招待。小泉今日子さんが用意してくれた「きみのとくとう席プロジェクト」

自身の60歳記念ツアー「KK60 ~コイズミ記念館~ KYOKO KOIZUMI TOUR 2026」が5月10日の沖縄公演で幕を閉じ、年内の芸能活動休業を発表した小泉今日子さん。本ツアーでは「プレゼントの代わりに植樹を」という本人の呼びかけによるファンとの寄付活動が話題となったが、その舞台裏では、UPDATERも共に取り組む、子どもたちに向けたもう一つのプロジェクトが動いていた。

原稿:平井有太

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ワクワクと包容力、そして優しさに溢れたステージ。さらに、さすがキョンキョンこと小泉今日子さんのツアー「KK60 ~コイズミ記念館~ KYOKO KOIZUMI TOUR 2026」は、それだけでは終わらない。そこには、見えない仕掛けもあった。

去る2月のある日、冬が終わり春を感じる陽気の仙台で、そんな仕掛けの一つとして実施されたのが「きみのとくとう席プロジェクト(略称:キミセキprj)」。

家庭環境や経済状況、障害の有無などによって、コンサートなど文化体験に触れる機会には差が生まれてしまう。学校と家の往復だけでは出会えない世界。そこに手が届かない子どもたちがいるのなら、席をつくろう。そんなシンプルな発想が、このプロジェクトのはじまりだった。

仙台サンプラザホールで幕を開けた「KK60 ~コイズミ記念館~ KYOKO KOIZUMI TOUR 2026」に用意された、10人分の特別席。招待されたのは、認定NPO法人キッズドア仙台教室に通う子どもたち。

大きな制度の変更でもなければ、壮大な支援プロジェクトでもない。ただ、文化の場に“招かれている席”をつくること。

これまでも小泉さんがやってきた、ステージで使った木材を循環させ新たに猫砂という人気商品を生み出し、ツアーの移動やライブで使用する電気から出るCO2をゼロにする環境の取り組み、さらに加えて今回のような、体験の循環もつくりだすこと。

派手ではなくとも確実に、社会の温度を少しだけ変えていく、そんな試みについてレポート。

公演終了後には記念撮影も。子どもたちと直接あいさつし、サインをプレゼント

心を育てるプロジェクト

「キミセキprj」は、小泉さんの「子どもたちの体験機会の格差を少しでも減らしたい」という想いにUPDATERが賛同し、共に企画・運営として、2024年に開催された「KYOKO KOIZUMI TOUR 2024 BALLAD CLASSICS」山形公演を皮切りに継続している企画。ご本人はステージ上でのトークで「自分自身が若い頃、本や音楽、映画に心が育てられた。ライブを見てもらって、ぜひ自分の心を育てる、そのチャンスを手にとって欲しい」というように、取り組みについて説明していた。

家庭環境や経済状況、地域格差、障害の有無などによって、音楽や舞台、美術、社会と出会う体験に触れられる機会に少なからず差ができてしまう現実がある。学ぶことや生活を支える支援は少しずつ広がってきたが、「心が動く体験」や「本物に触れる時間」は、まだ誰にでも開かれているとは言えない。

キミセキprjは、そうした状況の中で、子どもたちが社会や文化と自然につながる体験をつくるべく企画された。対象は、ひとり親家庭や児童福祉施設など、さまざまな事情の中で日々を過ごしている子どもたち。ライブや舞台、美術などの文化的な場に“とくとう席”を用意し、ただ鑑賞するだけでなく、生の音楽を聴き、その場の空気や人との出会いを含めて体験できる機会を届けていくことを目的としている。

仙台公演当日。仙台サンプラザホールが会場となった

仙台での実施は、そんな試みの一つだった。

2026年2月22日、仙台サンプラザホールで開催された小泉さんの全国ツアー公演にあわせ、「きみのとくとう席」が用意された。協力してくださったのは、認定NPO法人キッズドア仙台教室。日頃から学習支援や居場所づくりを通じて子どもたちを支えている団体で、今回はそこに通う中高生が参加した。

当然ながら、その中高生たちは現役では小泉さんの活躍を知らない世代。もしかしたら今の活躍についても、あまり知らないかもしれない。そこで、なんとキッズドアでは事前に、昭和のアイドルについて独自の資料をつくり、授業の時間をもうけた。
その時、最終的に子どもたちに届けたメッセージは、「今でもファンの人たちが長く好きでいてくれるということは、『つくられたアイドル』ということではなく、敏感に流行には乗りつつも、ちゃんと自分の言葉で自分の意見を伝えるというのをやってきているから。だから、今もファンの人たちが辞めないで、ずっとファンでいてくれるというところがすごい」ということだった。

事前学習として、子どもたちが学んだ授業スライドの一部。小泉さんの曲の特徴や俳優としての代表作から、時代を超えて活躍し続ける魅力を考えた

当日は、会場入りから終演後まで安心して過ごせる丁寧なサポート体制を整え、事前に集合し、ライブの楽しみ方や注意点を共有したあと、いよいよ開演。すべては小泉さんを支えるスタッフの頼もしいサポートのもと、滞りなく実施できた。

大きな音と光、満員の観客、そしてステージに立つアーティストの存在感。普段の日常とは異なる空間の中で、子どもたちはそれぞれの時間を過ごした。特徴的な会場のかたちも、より強く一体感を感じる上で効果的だった。

終演後にはキミセキprjのために設けられた楽屋で、小泉さんと直接あいさつを交わし、記念撮影を行う機会もあった。ステージの向こう側にいた存在と同じ空間に立つという経験は、単なる「イベント参加」を超えた特別な時間。緊張で固まる子どもたちに気さくに接する小泉さんのおかげで、徐々に空気は和んでいった。

現代の中高生というと、どちらかと言うと本人よりも親御さんがファンで、「キョンキョン知らないの?」と言われながら、サインをもらってくるよう言われたという世代。とはいえ、高校生の一人は「実は中学時代から、吹奏楽のコンクールで、本番前に勇気を出すために『学園天国』を聴いていました」と喋り出しました。そして、生で目撃したステージは「キョンキョンを好きな人たちが集まっていて、その愛に包まれる空間に混ざれたのが楽しくて、心がポカポカしました」と、嬉しそうに感想を聞かせてくれた。

50代のファンが圧倒的多数の中、ライブで聴いた曲を「リズムも良くて、とてもノリやすい曲で好きになりました」と、10代代表として存分に楽しんだ子どもたち。国内外のあらゆるアイドルが好きと語る子は「アイドルというものは10代から20代後半までが賞味期限かなと思っていたんですが、今回のライブを観て、還暦まで、ずっとアイドルでい続けられることを身に沁みて感じられました」と、生キョンキョンから吸収できたエネルギーに感動していた。

「とくとう席」は、単にステージに近い席という意味ではない。その場にいることが歓迎されていると感じられること、自分もこの社会の一員として同じ時間を共有できること。そうした実感を持てる場所をつくることが、大切な目的なのだ。

キッズドアが行っている学習支援の様子

仙台での取り組みは、小さな一歩ではありますが、子どもたちと社会が自然につながる瞬間を生み出す場となった。生徒たちの緊張も最後には解け、「こういうライブがはじめてで、曲をあんまり知らなくても楽しめて『生きててよかった』と思いました」「忘れられない夜になりました。明日から頑張れそうです」と想いを伝えることができ、それを聞いた小泉さんも「私も頑張るから!」と笑顔で返していた。

キッズドアのディレクター對馬良美さんからは、嬉しいコメントが届いた。

「このたびは、小泉今日子さんのコンサートにご招待いただき、誠にありがとうございました。小泉さんを初めて知った子も、終演後には『楽しかった!』と目を輝かせていました。楽屋で直接言葉を交わし、目の前でサインをいただくという貴重な体験は、『キミセキ』の言葉通り、忘れられない特別な時間となりました。このような機会をいただけたことに心より感謝申し上げます」

今後もさまざまな地域や文化の現場と連携しながら、このキミセキprjを続け、少しずつ広げていきたい。

【認定NPO法人キッズドア 】
2007年の創設以来、「すべての子どもが夢や希望を持てる社会の実現」をビジョンとし、日本の子どもの支援、特に困窮家庭の子どもの支援に取り組む。小学生~高校生や中退した若者等を対象に、無料学習会や食事等の生活支援も行う居場所型学習会を、東京とその近郊、宮城および神戸で展開している。
https://kidsdoor-tohoku.net/

【プレスリリース】
小泉今日子 全国ツアー「KK60 ~コイズミ記念館~ KYOKO KOIZUMI TOUR 2026」で「きみのとくとう席プロジェクト」を実施
https://www.updater.co.jp/news/pressrelease/20260316

ツアー「KYOKO KOIZUMI TOUR 2024 BALLAD CLASSICS」でのキミセキprjの様子はこちら

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アーティスト/みんなのデータサイト顧問/UPDATER並走者
平井有太
1975年東京生、School of Visual Arts卒。96~01年NY在住、2012~15年福島市在住。単著/個展『ビオクラシー』(SEEDS出版、2016/高円寺Garter、2016)、グループ展「Legacy3.11」(伊ミラノ Fabbrica del Vapore、2024)ほか。2025年2月には故・康芳夫を偲ぶ会の企画運営を務める。

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