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ニュース|2026.02.13

ビストロで日本酒?西荻窪「オルガン」で開かれたリジェネラティブ・オーガニック自然酒祭で、食と酒の新しい可能性を体験

パタゴニアの食品コレクション「パタゴニア プロビジョンズ」が2025年に発売した「やまもり2025」は日本で始めてリジェネラティブ・オーガニック認証を取得した日本酒だ。このお披露目を兼ねた食事会が、普段はナチュラルワインを扱う西荻窪のビストロ「オルガン」で開かれた。その様子をリポートする。

原稿:横山佐知

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日本初のリジェネラティブ・オーガニック認証を取得した「やまもり」をお披露目する食事会

昨年、パタゴニア(Shift C評価:良い)の食品コレクション「パタゴニア プロビジョンズ」から発売された自然酒「やまもり」は、日本初のリジェネラティブ・オーガニック認証(以下、RO認証)をとった日本酒で、福島県郡山市で300年以上続く酒蔵「仁井田本家」が、パタゴニア プロビジョンズと協業して作り上げたものだ。
そのお披露目会が1月31日から2月2日の3日間、西荻窪のビストロ「オルガン」で開かれた。主催者はパタゴニア プロビジョンズで、イベント名は『リジェネラティブ・オーガニック自然酒祭 食事と自然酒のペアリングコース』。
ビストロで日本酒を?どんな料理と合わせるの?と、期待する人は多かったようで、全日満席の盛況だった。筆者も興味津々で参加した一人だ(自腹です)。
今回料理を担当するオルガンのシェフ・紺野真さんに、今回の経緯やプランについて聞いた。

紺野 真>>東京都出身。高校卒業後、10年間を米国カリフォルニア州で過ごす。2005年に三軒茶屋「uguisu」、2011年に西荻窪「オルガン」をオープン。東京のナチュラルワインのムーブメントを牽引してきた一人

「知り合いの料理誌の編集長を通じてお話をいただきました。個人的にパタゴニアのことはもちろん知っていたし、自然酒の造り手である仁井田本家さんや(千葉の)寺田本家さんは好きな酒蔵さんなので何度か飲んだことがありました。だから話をいただいた時は、断る理由なんてなかったですね」(オルガン シェフ・紺野 真さん、以下同)

オルガンで扱っているのはナチュラルワインのみ。そして紺野さんはカリフォルニアに住んでいたということもあり、同じカリフォルニアに本社を構えるパタゴニアの店舗にはアメリカ在住時、たまに足を運んでいたそうだ。まさに必然とも言えるトリプルコラボレーションだったのだ。

「やまもりは、精米歩合85%とは思えない、クリアでスッキリした味わいですよね(編注:精米歩合とは、玄米を削って残った白米の割合を重量比で表したもの。数値が低いほどクリアになり大吟醸酒だと50%以下と言われている)。温度によっても印象が変わるので、その違いを活かしながらペアリングの料理を考えました」

RO認証をとっているのはやまもりだけだが、仁井田本家は1965年から無農薬で栽培した米を使って日本酒を造っている。つまり今回提供される酒はすべて「自然酒」なのだ。

イベントの準備にあたり、紺野さんは仁井田本家から送られてきたいろんな酒と、さまざまな食材との相性を試し、検証したのだそう。

紺野さんのインスタグラムより。年明けすぐの検証の様子。イベント当日も御燗を担当してくれた、池尻大橋にある日本酒店「髙崎のおかん」店主の髙崎丈さんも参加

「うちの店でワインの造り手さんのイベントを開く時などにもやるんですけど、そのお酒と食材の相性を試してみるんです。食材をいっぱい並べて。
今回だと、生のホタテ、焼いたホタテ、生の牡蠣、焼いた牡蠣と言ったように、海老、白身魚、赤身魚、鳥、豚、牛、ソースはバター、白ワイン、トマト、茶色、サルサ、フルーツもパイナップル、みかん、りんご、レモン、あとハーブやスパイスも並べて、どのお酒と相性がいいか片っ端から検証しました。
相性のいい食材をみつけたら、そこからアイディアを膨らませてそのお酒のための料理にしていきます。今回の主役はやまもりを中心とした仁井田本家のお酒、僕の料理は引き立て役としてどうするかを考えます。

この検証を始める前に頭の中で描いていた、きっとこれと合うだろうと思ったものとは違う意外なものが合うことが毎回あるんです。新しい発見が必ずある。ソムリエ学校とかの教科書に載ってるような常識とは全然違う発見があるんですよね」

なんとも丁寧な仕事!紺野さんが各界のイベントに引っ張りだこな理由が分かります。

最終的にやまもりは温度を変えたりカクテルにして3杯、仁井田本家の他のお酒を4杯、それぞれに合わせた料理6皿とデザート1皿という構成になった。

上:準備中のメニュー。出される仁井田本家のお酒が左側に、その横に料理が書かれているのだが、食材だけなのでどう料理されるかはサーブされるまでのお楽しみ。下:今回出された仁井田本家のお酒

パタゴニア、仁井田本家、オルガン、それぞれのファンが集まった自然酒祭

筆者がお邪魔したのは中日、年齢層は高すぎず若すぎず、お酒が好きな大人が集まっていた印象。始まりの挨拶の時に、パタゴニアスタッフの方が尋ねたところ、オルガンに初めて来たという人も多かった。
パタゴニア、仁井田本家、オルガン、それぞれが発信した告知をきっかけにイベントを知り参加したようだ。
会がスタートすると、お酒が注がれて料理が運ばれ、シェフ紺野さんから料理の説明、という流れ。
めくるめくスペシャルペアリングを、お酒とその提供された温度と、紺野さんによる料理解説と共に紹介する。

やまもり 白茶 苺 9℃ × ずわい蟹 金目鯛 苺 ストラッチャテッラ

お酒はやまもりに白茶を一晩つけて、苺の果実も加え、ほのかな色と香りを移した物を漉し、炭酸で割ったカクテル。 料理はずわい蟹と金目鯛の身を使ったムースに苺のマリネ添えて、ストラッチャテッラのエスプーマをかけた上に、乾燥させた苺のパウダー。苺の風味だけでなく、エスプーマのピチピチとした食感とカクテルの発泡が口内で混ざり合う食感も使ったペアリングだ

やまもり 13℃ × 牡蠣 黄パプリカ トマト マスカット

お酒は常温のやまもり。 事前の食材とやまもりの相性の検証の際、黄色パプリカやマスカットとやまもりが非常に相性が良かったため、その2つを使った仕立てとなった。 黄色パプリカとマスカットの2色のソースにラディッシュやキュウリのコンディマンを敷き、その上に生牡蠣を乗せ、透明なトマトエキスのシートとマスカットのスライスで牡蠣を覆い、牡蠣が透けて見えるように仕上げている

ごさん 58℃→30℃ × 白子 黄人参 蕗のとう

お酒・ごさんは予想以上に酸味が強く出来上がったのだが、燗をすることでまろやかな味に。料理は黄人参と蕗のとうのエスカベッシュ(洋風の南蛮漬け)の上に、白子のフリット。仕上げには自家製のカラスミと黄色の菊をあしらい、黄色と白子の白のコントラストが美しい1品に。 フリットに最後レモンを絞る代わりに、ごさんを飲んでいただくという、日本酒が調理の仕上げとなるようなペアリングだ

たまご酒/しぜんしゅにごり 55℃ × 豚の血 チコリ 林檎

お酒はたまご酒とにごり酒をミックス。料理はブーダン・ノワール(豚の血)と、チコリのタタン。 検証の際、たまこ酒と豚肉、リンゴやブルーチーズが相性が良かった事から生まれた1品。 タルト・タタンを作る手法でチコリのタタンを作った。チコリの間にはブルーチーズと胡桃がアクセントに挟んである。チコリのタタンとブーダン・ノワール、そしてたまご酒を繋げる役割りをしているのが、皿の左上にあるリンゴのコンディマン

やまもり レモン 58℃ × 鰆 パイナップル 甘長唐辛子

お酒はやまもりにレッドレモンの皮を入れて御燗したもの。季節の柑橘を入れるのはこの日の燗付け師、髙崎丈さん流。合わせたのは炭火焼きにした鰆。 添えられた2種類のソースは、ブラッドオレンジベースとパイナップルベース。 共に植物性の素材のみで仕上げられているため、非常に軽い透明感のある味わいとなっている。 燗付けする事で、米の旨味とコクを引き出しながらも、やまもりの持つフルーティーさ、透明感と非常に一体感のあるペアリング

にいだぐらんくりゅ 71℃ × ホロホロ鶏

仁井田本家の最高峰のお酒をお燗に。「Classic」と名付けられた料理。 Class=格を感じさせるぐらんくりゅには、石黒農場のホロホロ鶏を使ったクラッシックなパイ包み料理を合わせた。 ホロホロ鶏の骨から取ったブイヨンに、酸化熟成の白ワインを使った贅沢なソースもぐらんくりゅに負けない存在感で寄り添ってくれていた

100年貴醸酒 70℃ × クリームチーズ みかん

毎年新酒を継ぎ足して作られる貴醸酒。複数年の酒がLayerのように重なり生まれる複雑な味わい。この100年貴醸酒は、検証でクリームチーズと柑橘と相性が良かったため、デザートはチーズケーキに。 そこに柑橘を様々な調理法で少しずつ違う味わいを重ねたため、この1品「Layers」と名付けられた。 チーズケーキの中には金柑のコンポート。 そしてミカンのソルベと焦がしたミカンのジャム。仕上げにはミカンの皮を乾燥させた香り高いパウダーを振った

料理と酒のペアリングは完璧で、一緒に味わうと口の中で溶けていくような感覚があった。
ちなみにこれらはイベントのスペシャルメニューなので、今後オルガンに行っても食べられないし飲めないのでご注意を。

上:料理の合間に仁井田本家の女将・仁井田真樹さんの挨拶が。下:仁井田本家の酒蔵と周辺の水田や森のムービーが上映された

このイベントには、仁井田本家から女将の仁井田真樹さんが参加してオルガンのスタッフと共にお酒をサーブし、合間にお酒や酒蔵の話を聞かせてくれた。パタゴニアと仁井田本家との付き合いは10年以上前から始まっていたそうで、スタッフのユニフォームはパタゴニア製なのだそう。これは一定の審査を通った企業だけが作れるものなのだ。

「パタゴニア製のユニフォームは丈夫で乾きも早くて、何よりもかっこいいのでスタッフがみんな誇りを持って着ています。
そんなある日、5〜6年前でしょうか?パタゴニアさんから協業の話がきたときは『乗っ取られるの!?』と思ってしまいました(笑)。パタゴニアだったらいいかなとも思ったのですが、リジェネラティブ・オーガニックの認証取得に関するお話でした。

仁井田本家では義父の代から周辺の農家と無農薬で米の栽培を始めていましたが、RO認証には土壌の再生や周辺のランドスケープや働く人たちの幸せなど、チェック項目が多く申請書類もすべて英語なので大変でした。でもこうやって認証を受けてリリースすることができて皆さんに喜んでもらってホッとしています。

今回の紺野さんのお料理はやまもりをはじめとするすべてのお酒とバチバチに合っていて、私も感動しました。お料理を食べていて、『あ、これを飲み込んだら終わってしまうー!』とさえ思ったくらいでした。
日本酒、自然酒の可能性を広げてくれる素晴らしい機会だったと思います」(仁井田本家 仁井田真樹さん)

上:パタゴニア製の仁井田本家のユニフォーム。下:左から、オルガン シェフ・紺野真さん、仁井田本家・仁井田真樹さん、今回、燗付けを担当した、髙崎のおかん・髙崎丈さん

今の東京を象徴するシェフの一人、紺野さんのこれからの料理

「去年末にうちの店で知り合いと一緒にイベントをやったんですが、出店者さんの野菜とチーズとパンを使ったサンドイッチを提供しました。僕のテクニックはほとんど必要がなくて、シンプルな味付け。素材の味を味わってもらうことが大事だなと思ったし、それを皆さんが楽しんでくれました。

一方で、自分では作れないような手の込んだ料理をお店で食べたいと思うお客さんもいます。
僕は以前から、海外の本やサイトなどで料理のテクニックを調べて取り入れてきました。最近のSNSにはそういった情報が溢れていて驚いているんですけど、新しいテクニックももっと取り入れていきたい。

料理人のエゴを出さず、でもある部分ではエゴ丸出しというか。シンプルにするのがいいものは出来るだけそのままに、手間をかけるところはかけるというバランスが取れたらいいなと思っていて、それを追求していきたいですね」

organ

東京都杉並区西荻南2-19-12
電話:03-5941-5388
営業時間:火曜〜金曜17:00〜23:00、土曜〜日曜12:00〜15:00、17:00〜21:00 月曜休み

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ライター/エディター
横山佐知
出版社勤務を経て2022年にフリーランスに転身。趣味は旅とランニングと登山とお笑い鑑賞。

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