• トップ
  • Learning
  • 毎年2万トン以上が廃棄される「コスメロス」にルミネ×サステナブルコスメアワードが挑戦した再循環の試み

ニュース|2025.07.18

毎年2万トン以上が廃棄される「コスメロス」にルミネ×サステナブルコスメアワードが挑戦した再循環の試み

ファッションと並んで、毎年トレンドがあり、多くの人が「新しい」ものを買い求めるのが化粧品だ。近年、この化粧品の廃棄についても「コスメロス」として問題視され始めている。この課題解決として今年1月、ルミネ新宿店にて、ルミネとサステナブルコスメアワードがコラボし、コスメの再循環を目指す販売イベント「COSME Re-Go-Round STORE」を2日間にわたり開催した。この取り組みについて、サステナブルコスメアワード審査員長の岸紅子さんに話を聞いた。

取材・文/吉野ユリ子

Share :
  • URLをコピーしました

岸 紅子
NPO法人日本ホリスティックビューティ協会代表理事、環境省「つなげよう、支えよう森里川海」アンバサダー、サステナブルコスメアワード審査員長。自身や家族の闘病経験から、2006年日本ホリスティックビューティ協会を設立し、女性の心と体のセルフケアの普及につとめる。環境アクティビストとしても多くのSDGsアクションを提言。発酵食スペシャリスト、味噌ソムリエの資格をもち、オーガニック&ウェルビーイングのムーブメントを牽引している。

訳ありコスメを廃棄するのではなく、必要とする人へ繋ぐ再循環プロジェクト

NPO法人日本ホリスティックビューティ協会の代表として、消費者に向けて心身のセルフケアの大切さを広めるとともに、サステナブルコスメアワードの審査員長として、SDGsの観点からコスメのサステナビリティを評価・審査・表彰することで人にも地球にもやさしいコスメの広まりを後押ししてきた岸紅子さん。今回、ルミネと取り組んだこのイベントは、「生まれたコスメの命を全うさせるため再び市場に戻す」という、化粧品のサステナビリティの新たなアプローチだ。

「日本では、箱の破損や汚れ、シールの歪みなどにより店頭に並ばなかったもの、店頭での売れ残りや廃番で入れ替えになってしまったものなど、多くの化粧品が新品のままお客様の手にわたることなく廃棄されています。その量は少なくとも毎年約2万トン以上*、一説には製造したコスメの半分は廃棄されると言われていて、ファッション同様、環境に与えるインパクトも小さくありません。今回のイベントは、こうした商品を特別価格で販売することで、消費者の方々にもコスメロスの課題に目を向けていただくことを目的としました」

売れたコスメの個数を表示するスコアボード

ルミネ新宿店、アイルミネに出店しているショップやサステナブルコスメアワードでノミネートされてきたブランドを中心に、46ブランドが出展。会場には、売れたコスメの個数を表示するスコアボードを設置し、消費行動がコスメの再循環につながっていることを可視化する仕組みも設けられた。2日間で695名の購入者が約1500個のコスメの再循環に貢献した。

「日本の消費者は特に、きれいなもの、完璧なものを好む傾向があり、またメーカー側もその期待に最大に応えようとした結果、外箱も含め傷一つないものだけを販売するというサイクルが生まれています。けれど箱が潰れていてもシールがずれていても、中身の化粧品にはなんの問題もありませんし、廃番になった途端製品が劣化するわけでもありません。それを理解できる消費者の方は必ずいらっしゃいますし、少し割引をして提供することができれば、むしろ喜ぶ方もいらっしゃるはずだと考えました」

とはいえ、実際に同じルミネ内で定価販売している商品を安く販売することに問題がないか、また訳あり品が出回ることがブランド価値の毀損にならないかなど、さまざまな視点を考慮し、販売方法や価格設定などには議論に議論を重ねたという。「特定のブランドだけでなく、多くのブランドが参加することに意義があると考え、1社ずつレターを送って交渉しました。するとなんと、想定した20倍ほどの企業からエントリーの希望をいただき、1回のイベントではお受けしきれなくなってしまった程でした」

イベントを開催してわかった、企業と消費者それぞれのホンネ

蓋を開けてみれば、企業側からも消費者側からも高評価が得られた。「メーカーとしても、せっかく作った製品がゴミになってしまうのは胸が痛いもの。それがきちんとお客様の手に届き喜ばれるなら、何よりだと感じていました。またお客様からは「安い理由が外箱の破損などなら全く抵抗がない」「関心があったけれど価格的に手が出せなかったブランドを体験できるチャンスになった」という声もいただきました」。これらの声を受け、今後も半年に1度程度のペースで継続開催することにしたという。次回は7月21日〜22日に開催を予定している。

しかしこのようなイベントで救える製品にはもちろん、限りがある。「廃棄ゼロのサーキュラーエコノミーができることが理想かもしれませんが、現実的には難しいですよね。特に大手メーカーは量産してコストを抑えているだけに難しい。だからこそ、メーカー、売り場、消費者それぞれが少しずつ理解をし合うコミュニケーションが大切です。ムードとしても訳ありから消費するのがカッコいい、となるといいなと思います」

変わりゆく化粧品メーカー各社のサステナブルな取り組み

サステナブルコスメアワードは化粧品やファイントイレタリー分野において、SDGs視点での評価基準を制定し、「人にも地球にもやさしいコスメ」の表彰を行っている。原料の成分、生態系にどれだけ配慮しているか、動物実験の有無、産地の地域社会へのインパクト、製造時のCO2排出低減、容器のプラスチック削減など80以上のチェックポイントを設け、一次審査、二次審査を行っている。

スタートして6年、化粧品メーカーの取り組みは確実に変わってきたという。「当初はそもそもプレイヤーが少なく、また“オーガニックかどうか”を主なテーマにしているブランドが多かったのですが、年々、化粧品を作る工程のトレーサビリティを重視する会社や、生産地の方にどう還元するかといった視点、森の再生や耕作放棄地の活用などリジェネラティブな取り組みを行っている会社なども増えました。クラフト的なものづくりを大切にする新たなメーカーも多く登場していますし、インパクトの大きい大手メーカーも、再生可能エネルギーを使用するなど自社でできる改革を一つずつ行う努力をしています。いずれの取り組みも価値のあるものだと思います」

一方で消費者も変化している。「新参入のブランドは今や、エシカルな視点が感じられなければ消費者の目に留めてもらえない、というほどの流れが生まれていますし、特にZ世代は企業の倫理的価値観に基づいてブランドを支持する傾向が高まっています。最終的な製品だけでなく、どういった背景で作られ、どういった物語をもつブランドか、ということを知ること自体を”消費行動”としているのです」

化粧品の役割は、今、「肌も地球も美しくすること」。

サステナブルコスメアワードは立ち上げ当初から、2030年で終了する予定だ。それは2030年にはサステナブルなコスメが当たり前の時代になっていると信じているから。時代が後戻りすることはないと考える一方で、難しさもあるという。「企業も収益性とのバランスを取らなくては続けられないし、消費者も経済的な問題でサステナブルな選択ができないこともある。それを批判したり絶望したりするのではなく、完璧ではない中でお互いが少しずつ歩み寄って前に進んでいければいいと思います。化粧品は美しくなるためのものですから、企業も消費者も、地球の美しさも守ること、人も内面的にも美しくなることを目指しながら、サステナブルに暮らしを変えていきたいですね」

サステナブルコスメアワードPOPUP
@ルミネ新宿店
7月21日〜24日、ルミネ新宿店にてサステナブルコスメアワード受賞ブランドが集まる。
2024年度アワードSILGER賞を受賞した「Kiiks」のディレクターでモデル・俳優の水原希子さんによるトークショー&フォトシューティングイベントが開催。この期間中、7月21日・22日には「COSME Re-Go-Round STORE」第2弾も開催します。

Instagram https://www.instagram.com/sustainable_cosme/

*㈱モーンガータによる独自調査データ。生産過程などで化粧品メーカーから出る化粧品の中身(バルク)や原料の廃棄量を指す。

Share :
  • URLをコピーしました
ライフスタイルジャーナリスト
吉野ユリ子
1972年埼玉県生まれ。エディター、ライターとして女性誌やウェブを中心に、心豊かな生き方・暮らし方の提案を行うほか、ブランディングライターとして企業のサービスや商品の価値を言語化し届けることにも力を注ぐ。プライベートでは、2016年に娘を出産するまではトライアスロンが趣味で、アイアンマンを3度完走。現在の趣味は朗読。

Ranking ウィークリーランキング (2025.07.11〜07.18)

Instagram Follow us
廃棄予定だったビニール傘が、毎日使いたくなるバッグに。アップサイクルブランド「octangle」の挑戦

廃棄予定だったビニール傘が、毎日使いたくなるバッグに。アップサイクルブランド「octangle」の挑戦