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Shift C でも全3回のレポート(Vol.1はこちらから)が掲載されているGlobal Fashion Summit、筆者は幸運にも現地参加することができました。3日間つづく濃厚なトークやソーシャルイベントに揉まれに揉まれ、限界を超えたわたしの小さな脳みそは防御作用として何度かシャットダウンしそうになりながらも(少なくとも白目にはなっていたかも)、主にヨーロッパのファッションとサステナビリティの現在地を体感してきたのでした。
気になる方はぜひレポートを読んでいただきたいのですが、今ヨーロッパのサステナビリティは壁にぶち当たっていると言っていいでしょう。思ったように進まない法整備、その間にも進む気候変動・・・。
そこで今、必要とされているのは「対話」なのかもしれません。
と書いたとたん、この文章の既視感と使い古されっぷりに自分でびっくりしたのですが、それはこの「対話が必要」言説が逃げとして使われることが多かったからではないでしょうか。「難しい問題ですから今後も対話を続けていきましょう」は、「いけたらいく」と同じくらい、今後、特になにもしないという意味に等しいコメントです。
それでも、現状を打開するには今、ほんとうの意味での対話が重要なんじゃないかと、わたしは考えます。
対話と、議論の違いは?
それでは対話とは、どんなコミュニケーションを意味するのでしょうか?多くのファシリテーター必読の書となっている「問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション」著者の安斎勇樹氏によると、コミュニケーションには討論、議論、対話、雑談の4種類があります。
①「討論」…どちらの立場の意見が正しいかを決める話し合い。
②「議論」…合意形成や意思決定のための納得解を決める話し合いで、結論を決めることが目的。
③「対話」…自由な雰囲気の中で行われる、互いの理解を深め、新たな意味づけをつくる話し合い。
④「雑談」…自由な雰囲気の中で行われる気軽な挨拶や情報のやりとり。
これを見ると、対話とは、議論とも雑談と違い、判断せず、説得もせず、お互いの前提を共有し理解する作業と言って良さそうです。
循環型のファッション産業のために必要な対話とは?
ファッションの話に戻りますが、例えば今、生活者が着終わった衣類を回収し、選別し、リサイクルし、再度服の原料とする循環型産業への移行が急がれています。この新しい仕組みづくりのために今どのような障壁があり、どのような取り組みが必要なのかを3年間にわたって調査したT-REXプロジェクトの結果発表となるブループリントによると、大きな障壁の一つに各プレーヤーの連携不足が挙げられています。循環型産業では服の回収を行う自治体や小売店、選別業社、リサイクル業社そしてデザイナーなどが連携してうまく資源をバトンタッチしていくことが必要ですが、現状はそのような仕組みになっていません。
そこで大切になるのが、お互いの前提を共有し理解し合い、創造的な解を見出す「対話」です。デザイナーはこんな素材を求めている、リサイクル業社はこんな古着だったらやりやすい、ではデザインの段階からあとでリサイクルしやすいように変えてみようかなど、個々のプレーヤーが求めていることが対話によって共有されれば、循環型産業への移行が大きく進むという結論です。
創造的な未来の解へ
お互いの前提を共有し理解する対話、職場でも、家庭でも、身近な人をさらに深く知るために実践してみてはいかがでしょうか?コツは、自分が考えていることや言いたいことはいったん置いておいて、相手をできる限り理解したいという興味に集中してみることです。
筆者はパートナーと意見が食い違う度、お互いが前提としていたことの違いにびっくりし、それこそ白目になることもあります。というか、よく、なっています。それでもこの対話という作業を経ることで、今後の連携の質がぐんと上がるのです。
「こんなこと考えてたんだ。」「こんな背景があったからそうなってるんだ!」という新たな理解や繋がりが、社会やファッション産業全体が必要なスピードで変わっていくために今、必要とされているのではないでしょうか。