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ストーリー|2025.05.23

少ない服でおしゃれに暮らす「カプセルワードローブ」とは?   川畑若菜さんが実践するミニマル&サステナブルなコーディネート術

コーディネートや収納に悩まず、自分らしいスタイルが完成し、しかもサステナブルということで注目を集める「カプセルワードローブ」。今回は、厳選されたエシカルアイテムで構成された川畑若菜さんのワードローブを通して、その実践的なスタイルをご紹介。都市と森の中を行き来するライフスタイルの中で選ばれたアイテムをヒントに、サステナブルな視点から、自分らしいワードローブのあり方を考えてみよう。

 

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川畑若菜

1995年生まれ。関西を拠点に、ファッション、ライフスタイル、ウェルネスなど幅広い分野において、PR・プロモーション、SNSマーケティング、イベント制作などに携わる。2020年にエシカルコンシェルジュ資格を取得し、サステナブルな視点で、環境や社会に貢献するプロダクトPRを担当する。現在は、都市と森の中を行き来するライフスタイルを送りながら、新たな活動にも取り組んでいる。

カプセルワードローブとは?ミニマルに暮らすための服の選び方

カプセルワードローブとは、厳選された少ないアイテムで最大限の着回しを楽しむ、シンプルで効率的なワードローブの考え方。1970年代にロンドンで誕生し、少ない服でも自分らしいおしゃれを楽しみたいというミニマル志向の女性たちに支持されてきた。

そもそも「ワードローブ(wardrobe)」は、中世ヨーロッパで衣類や貴重品を収納する家具を指していた言葉。現代では、靴やバッグ、アクセサリーを含む個人が所有するファッションアイテムの総体を意味し、ライフスタイルや価値観を映し出す存在としても捉えられている。

ではなぜ今、「カプセルワードローブ」が注目されているのか?

一つは、サステナビリティへの意識の高まりだ。ファッション産業は環境負荷が大きいとされ、使い捨ての消費スタイルからの脱却が求められている。限られた服を大切に着ることは、廃棄の削減や資源の節約にもつながり、より環境負荷の少ない選択肢となる。

もう一つは、暮らしをシンプルに整えるというライフスタイルの変化だ。自分に必要なものを見極めて持つミニマリズムの考え方が浸透する中で、ワードローブにおいても「お気に入りだけに囲まれる心地よさ」や「迷わない身軽さ」が注目されている。

1985年には、デザイナーのダナ・キャランが「7 Easy Pieces」コレクションを発表。限られたアイテムでも十分に対応できるワードローブのメソッドを提唱し、多忙なワーキングウーマンの支持を集めた。

そして今、サステナブルファッションへの関心の高まりや、時間やお金の使い方を見直す流れを背景に、「カプセルワードローブ」が改めて注目を集めている。

カプセルワードローブがもたらす5つのメリット

カプセルワードローブが支持されている背景には、単なるミニマルなおしゃれを超えた、日々の暮らしに寄り添う実用的なメリットがある。


1.時間とストレスの軽減
すべてのアイテムが組み合わせやすく選ばれているため、迷うことが減り、忙しい朝でも自然と手が伸びる。決まったアイテムが揃っていることの安心感は、想像以上に大きい。

2.コストパフォーマンスの向上
流行に左右されにくいベーシックなアイテムを中心に揃えることで、無駄な買い足しが減り、結果的に服にかけるお金を見直すことにもつながる。

3.サステナブルな選択
必要な服を必要なだけ選ぶことは、過剰な消費を抑え、生産に伴うCO2排出の削減にもつながる。素材やブランドの背景に自然と目を向けるようになるのも、カプセルワードローブがもたらす意識の変化のひとつだ。

4.クローゼットの整理整頓がしやすくなる
必要なものだけが揃うことで収納スペースに余裕が生まれ、管理がしやすくなる。自分の持ち物を把握できることは、心の整理にもつながるはず。

5.自分らしいスタイルが見えてくる
限られた数のアイテムと向き合うことで、「自分に本当に似合うもの」や「心地よさの基準」が明確になっていく。ファッションを通して、自分自身の感覚や価値観を再確認できるようになるのも、カプセルワードローブの魅力のひとつだ。

川畑さんが実践する、豊かに暮らすための洋服とのつき合い方

服の数を減らすことは、我慢ではなく、自分を知ること。
「少ない服で心地よく、豊かに暮らす」——そんなスタイルを実践する川畑さんに、日々の服選びで大切にしている考え方や、ワードローブとの向き合い方について伺った。

——服を選ぶときに大切にしている基準があれば教えてください。

洋服を迎え入れる際は、街だけじゃなく自然の中でも着られるか、仕事にもプライベートでも使えるか、2つ以上のシーンで着られるかを想像して選ぶようにしています。1つの場面でしか着られないものは、本当に気に入ったものか、特別なシーンで着るイメージが湧いているかを自分に問いかけます。あと、手持ちの服との相性も大事なので、その服のためだけに新しく何かを書いたうことはしないようにしています。

——クローゼットの中身を見直すタイミングや、習慣にしていることはありますか?

衣替えのタイミングで見直したり、「クローゼットが詰まってきたな」と感じたら断捨離しています。ただ捨てるのではなく、友人や家族に譲ったり、循環する方法を考えるようにしています。体型や似合う色も少しずつ変わってくるので、好きでも今の自分に合わないと気づいた服は手放すようにしていますね。

——今のような選び方や考え方にたどり着かれたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

PRの仕事を始めたばかりの頃は、きらびやかな世界に合わせて、服はたくさん持っている方がいいと思っていました。
でもあるとき、「お洋服をたくさん持っていることが良いのではなく、自分のスタイルを持っていることが大切なんだ」って気づいたんです。もともと、ものを長く大事にする家庭で育ったこともあって、そこからは身の丈に合った服選びをするようになりました。

——厳選した洋服に囲まれて暮らす中で、見えてきたことはありますか?

たくさん持つことが、必ずしも豊かさにつながるわけではなくて。誰かのいいより、「自分がいい」を基準にしてものを選ぶことが、一番心地良いと思うようになりました。

あるスタイリストの方が「その人の顔だけでなく、どんな服を着ているかまで印象に残る人になりたい」とおっしゃっていたのが印象に残っていて。毎回まったく違う印象になるのではなく、カジュアルでもフォーマルでもアウトドアでも、どこかに“その人らしさ”を感じられるスタイルって、とっても魅力的だなと思います。

それに、飽きてしまった服でも、視点を変えることで新鮮に見えてくることもあります。海外の方のスタイリングを見ると、色使いや合わせ方がすごく参考になって、「こんな着方があったんだ」と気付かされることも多いです。考え方や視点を変えることで、今ある服の魅力を改めて感じられるようになると思います。

——カプセルワードローブを楽しむために、服選び以外で意識していることがあれば教えてください。

ライフスタイルに少し変化を付けてみるのも、服を楽しむひとつの方法だと思います。いつも同じ場所ばかりに行っていると、選ぶ服もなんとなくパターン化してしまいますよね。だから、たまには背伸びして素敵なレストランに行ってみるだけでも、「この服、久しぶりに着ようかな」って思えたりするんです。

暮らしの中に小さな変化を取り入れることで、眠っていた服がまた活躍したり、装いの楽しみ方が自然と広がっていく気がします。

川畑さんの日々の選択を軽やかにする、11のアイテム

ここでは、川畑さんのカプセルワードローブをご紹介。
機能性と心地よさを兼ね備え、都市と自然のどちらのシーンにもなじむ11のアイテムには、それぞれに選んだ理由や、長く愛用するための工夫とこだわりが込められている。日々の選択を軽やかにする、実用的かつ愛着のあるラインナップは、ワードローブを見直すヒントとしても役立つはずだ。

スナップカーディガン / agnes b.

(左)オーガニックコットン 長袖 カーディガンプレッション “Le Petit” ¥20,900(税込)(右)M001 CARDIGAN カーディガンプレッション¥25,300(税込)

目の詰まった編み地とスナップボタンデザインが特徴的な、フランスの老舗ブランド「agnes b.(アニエスべー)」の定番カーディガン。異なる2種類を所有し、シーンに応じて使い分けているそう。ブランド自体も環境保全に積極的で、川畑さんは過去にアンバサダーとしても活動していたことがあるのだとか。

「年中愛用しているアイテムで、インナーとして忍ばせたり、寒い時の肩掛けなどに活躍しています。羽織るだけできちんと感が出るので、どこにでも着ていっても安心。ボタンをすべて閉じれば1枚でも着られますし、羽織ったり腰に巻いたりと、さまざまなコーディネートができる点も気に入っています。」

Classic Caption スウェット / SAVOY CLOTHING SHOP

川畑さんの友人が手がけるブランド「SAVOY CLOTHING SHOP」。軽やかな着心地の裏起毛で、着込むほどに色褪せ、体になじんでいく味わいが魅力。胸元には控えめなロゴの刺繍入り。

「毛玉ができるほど、何年も着続けています(笑)。山や森でのキャンプはもちろん、シルバーアクセサリーやダイヤ入りのジュエリーを合わせれば街でも楽しめます。ジャケットを羽織れば打ち合わせにも出られるほど、合わせるアイテム次第でいろんな表情を見せてくれるのが楽しいですね。着込むことで色も程よくなじみ、デニムのように育てる感覚で愛用しています。」

501ブラックデニム / Levi’s(ヴィンテージ)

神戸の古着屋で10年ほど前に購入したヴィンテージデニム。自分の体型に合う運命的な一本を見つけ、裾はセルフカットしてカスタマイズ。

「身長が151cmと小さいので、ぴったり合うデニムを見つけるのが難しいんですが、これは運命の一本でした。それから約10年、大切に履き続けています。いつもこうしたアイテムを迎え入れる際には、Pinterestで着こなしのイメージを膨らませておくようにしています。」

サングラス、クリアメガネ / ayame

(上)GO49 ¥41,800(税込)

日本人の骨格に合う設計と洗練されたデザインが人気の国産メガネブランド。サングラスは師匠から譲り受けたもの、クリアメガネは最近購入した新しいアイテム。

「クリアメガネは、変化を求めて迎え入れました。これまでは黒やべっ甲の縁のものが多かったので、控えめながらも存在感のある抜け感のあるデザインが気に入っています。カチッとしたお洋服の時の外しアイテムとしても、スウェットと合わせてもかわいいです。存在感がありながらも控えめな小物は、スタイリングの幅を広げてくれます。」

腕時計 / CITIZEN

20歳の誕生日にお姉さんから贈られた時計。シルバーに控えめなゴールドが入り、ネイビーとブラウンの文字盤が印象的な、クラシックなデザイン。

「時間はスマホでも見れますが、手元に時計があると、心がシャキッとするんです。針で時間を読む行為が、自分の感覚とちゃんとつながる気がして。アクセサリー代わりにもなって、どんな装いにもなじんでくれる、なくてはならない存在です。付け始めてから10年が経ちますが、これからもずっと大事に付けていたい一本です。」

ライトカシミアニット / C.T.plage

日本のニット専門ブランド「C.T.plage」。糸の段階から仕上げまでの全工程に責任を持ち、時間をかけて素材の手配を行うなど、持続可能な生産体制を実践している。このニットは、保温性と通気性を兼ね備えた極細カシミア素材を使用しながら、洗濯機で洗えるという高い実用性も魅力。

「一見すごく薄手に見えるんですが、着てみると驚くほどあたたかくて軽いんです。肌に触れたときの心地よさや、インナーとしてもメインとしても成立する汎用性の高さが本当に優秀。私のワードローブの中でも、“冬の必需品”といえる存在ですね。」

カプセルワードローブでつくる、心地よいコーディネート

「これさえあれば大丈夫」と思えるお気に入りの洋服が揃っていれば、朝の支度も、外出先での気持ちも軽くなる。川畑さんの装いは、そんな安心感と柔らかさを持ち合わせたスタイル。

ここでは、彼女が日常で実践する、心地よく過ごすための組み合わせをご紹介。

CT.plageのカシミヤポンチョ 25SS capsule Cashmere raccoon poncho / CT20333 ¥31,900(税込)

軽やかでやさしい肌触りが特徴の、「C.T.plage」のカシミヤポンチョ。薄手ながらも保温性があり、さっと羽織るだけで自然体のスタイルが完成。

「おうちでリラックスしたい時も、旅先で肌寒さを感じたときも、これ一枚あれば安心。薄手のインナーに合わせるだけで温かいです。ジュエリーを変えるだけでちょっとしたお出かけ着にもなるし、“ただ楽なだけじゃない”ところが気に入っています。」

Deuxmiのパンツ タックストレートスラックス ¥18,000、Clarksのシューズ Wallabee.GTX / レディースワラビーゴアテックス (ブラックスエード)¥34,100(税込)

タックストレートスラックス / Deauxmi
とろみのある上質な生地と動きやすいシルエットで、オンオフともに活躍する一着。どんなトップスとも相性がいいパンツを一本持っておけば、コーディネートにも迷わない。

「大学時代からの友人が立ち上げたブランドです。デビュー時に応援の気持ちを込めて購入したんですが、それからずっと愛用しています。動きやすく、仕事現場でも履きやすい心地よさが気に入っています。」

ブラックスエードシューズ / Clarks
撥水性に優れたGORE-TEX®素材を採用し、タウンユースからアウトドアまで対応する万能シューズ。クラシックなデザインでコーディネートの幅も広がる。

「天候を気にせず履けて、足元が“ちゃんとして見える”ってすごく大事だと思っています。その点、このシューズは街でも履けるし、ちょっとした旅先や自然の中でも活躍してくれます。1日歩き回る日にも安心で、見た目と実用性のバランスが絶妙です。」

Burberryのヴィンテージトレンチコート、thehighlightsのバッグ ‘pot’ desert beige ¥44,000(税込)。トップスはSAVOY CLOTHING SHOPのスウェット、パンツは Levi’sの501ブラックデニム

トレンチコート / Burberry(ヴィンテージ)
古着屋で出会った、希少なショート丈のヴィンテージトレンチ。仕立ての良さと、自身の体型にフィットするサイズ感が決め手に。

「この丈感ってなかなか出会えないので、見つけた時は即決でした。私の身長でもそれほど長すぎず、オーバーサイズのジャケットを着ているような感覚で羽織れるところが気に入っています。仕立ても本当によくて、いろんなシーンで活躍しています。」

バッグ / thehighlights
日本国内で丁寧に製作されているバッグブランド「thehighlights」。アニマルウェルフェアに配慮した牛革を使用しており、シンプルで機能的なデザインに定評がある。

「出張や旅行のときはもちろん、普段使いにも。とにかくよく使っています。信頼している友人が手がけていることもあって、気づけば自然と毎日持っているアイテムです。」

ワードローブを見直すことは、暮らしを見直すこと

カプセルワードローブは、ただ服を減らすための方法ではなく、「自分にとって必要なものは何か」を見つめ直すための選択肢。

手持ちの服と向き合うことで、自分の今にフィットする暮らしや気持ちよさが見えてくるはず。
少ないけれど、ちゃんと選んだ服に囲まれる毎日は、思った以上に軽やかで、自分らしい。

今一度、自分にとって必要な一着を考える時間から、ワードローブを見直してみてはいかがだろうか。






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ライター/エディター
藤井由香里
ファッションメディアのライター/エディター、アパレル業界での経験を経て、2022年に独立。現在は、ファッション、美容、カルチャー、サステナビリティを中心に執筆・編集を手がける。Webや紙媒体のコンテンツ制作に加え、広告制作、コピーライティング、翻訳編集など、多岐にわたるプロジェクトに携わる。

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