今月、ご縁があり、筆者はある企業の周年パーティーに招待されています。厚みのある高級紙に、金色で「120周年」と箔押しされた重厚感漂う招待状を手に取りながらまず思うことは・・・
「何着ていこう?」
着物だと気合い入りすぎだし、ファッション業界とも関係のないところだから奇抜なのはNG(TPOは、自分が堂々と振る舞うためのものであると考えています)。でも周年パーティーだからある程度華やかに、と悩み、一通りクローゼットを物色してみたけれどちょうどいいものがない。友人に借りられるものがないか聞いてみたけれども、そこにも、なさそう。
仕方ない、明るい色のスーツでも買おうかな、でもX万はするな・・・と思っていたところ、急に思い出したのが「ファッションレンタル(またはファッションサブスク)サービス」。
そうだ、買わずに、借りればいいんだ!
そこで、以前サービス提供者の方のプレゼンを聞く機会があった、大丸松坂屋のアナザーアドレス(https://www.anotheraddress.jp/)をこの機会に試してみることにしました。ちなみに、このサービスのことを知った時に「え、やってみたい!」と前のめったら、サービスの想定顧客ペルソナに自分が完全合致しており、マーケターの手のひらで踊らされている気がして少し気恥ずかしくなりましたが。いいんです、踊りますよ。さあ、カウントイン。
レンタル開始!
アナザーアドレスには、月1着借りられるライトプラン(5,940円/月)、月3着借りられるスタンダードプラン(12,430円/月)、月5着借りられるスタンダードプラスプラン(22,000円/月)の3プランがあります。私はまずライトプランを契約してみました。
有名ブランドからクリエイティブ系、コンサバ系と幅広いセレクションの中から華やかなワンピースをいくつか検討した結果(ライトプランは1着だけなので、セットアップは除外)、赤い花柄のワンピースをチョイス。昔から気になってはいたものの、価格で諦めていたブランド、ビクトリア・ベッカムのアイテムです。買ったらお値段なんと207,900円也(税込)!早速LINE連携したシステムでレンタルリクエストをすると、次の日には早速、専用の再利用ガーメントケースに入ったビクトリアがわが家にやってきました。オンラインサイトでシミュレーションしたので、サイズもばっちり。
ビクトリアの出番となるパーティーを週末に控え、今は次のレンタルアイテム探しに余念がありません。買わなくて、よかった!

レンタルサービスで起こる気持ちの変化
さて、このレンタルサービスを使い始めるにあたって一番興味があったのが、心の変化です。好きな服を借りて返すを繰り返すことで、私と服の関わり方はどのように変わるのでしょうか?
「所有=豊かさ」からの脱却
狭い家を占領する服やあらゆるモノがストレスになる人も多いように、多くのモノを所有することが、必ずしも豊かさを意味しないことは、今の時代明らかです。レンタル品を活用することは、「着られるけど、所有していない」という身軽さがあり、逆にこちらの方がすっきりとして豊かなのかと思いました。所有する自由から、所有からの自由へ。
その感覚を味わうと、今度は自分のクローゼットに収まっている他の服が気になり始めました。こんなに、必要だったっけ?レンタルで所有から自由になる快感を知った今、次なる手はクローゼットのミニマム化かもしれません。厳選されたベーシックと少しのお気に入り+レンタル品で回していくという将来像がぼんやりと見えてきました。
Choose well, wear longとは言ったものの・・・
「30年前に比べ、人が服を買い換える頻度は高くなり、それが自然環境や労働環境に大きな負荷を与えています。だからそんなに新品の服は買わなくていい。今あるものを大切にしましょう。」これはサステナブルファッションの啓発をしている私たちが活動の中で本気で腹落ちし、多くの人に伝えたいと思っていることです。
そして、無視できないのは、とはいえ、気になるデザインや色に挑戦し、新たな自分を発見するというファッションの楽しみともバランスをとりたいという、もうひとつの本音。「こんな服を着てみたい」という気持ちもたまには喜ばせてあげられることが、物欲からフリーになりきれない筆者も含め、人によっては欲求のガス抜きになって健やかな場合もあります。
ファッションの楽しさと、資源の有効活用(と節約)を両立させる
環境省のデータでは、わたしたちは1着の服を着る年数(着用年数)と同じくらい、クローゼットに眠らせて(退蔵年数)います*。レンタルサービスを使えば、定期的に新しいスタイルを試しながらも服を眠らせず、他の人たちと共有することで資源を有効活用できます。そして、多くの場合、新品を買うよりも借りる方が出費も抑えられます。ということは、レンタルサービスは、おしゃれを我慢せず、でも資源も有効活用、そして節約にもつなげる方法の一つと言えますね!
個人から社会全体にズームアウトして考えてみます。一つ一つのクローゼットには頻繁に着用される1軍の服ばかりが収まっていて、結婚式などのセレモニー用やそれ以外の試してみたいアイテムはレンタル品としていろいろな人のクローゼットを転々とする ーーそんな未来も、ありなのかもしれません。
レンタルサービス、少し気になってきましたか?今回筆者が試したアナザーアドレス以外にも、色々な価格帯や貸し出しアイテムを揃えたレンタルサービスがあります。ぜひ、実験だと思って試してみて、服や所有することへの印象がどう変化するのかを感じてみてください。相性の良いサービスが、見つかりますように。
*https://policies.env.go.jp/recycle/circul/reuse/portal/index.html
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本記事は日本のユーザーの方のために、「多様で、健康的なファッション産業をつくる」ことをミッションに活動する一般社団法人unistepsが執筆しています。