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ストーリー|2025.05.06

【素材ガイド】合成繊維とは?注目素材リヨセル(テンセル™)も!種類・特徴・違いを解説

私たちのクローゼットにある洋服の多くに使われている「合成繊維」。なんとなく知っているけれど、具体的にどんなものか説明できるだろうか?この記事では、「合成繊維」とは何か、代表的な種類や特徴、メリット・デメリットについてわかりやすく紹介する。

写真:unsplash

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私たちのクローゼットにある洋服の多くに使われている「合成繊維」。なんとなく知っているけれど、具体的にどんなものか説明できるだろうか? この記事では、ファッションやサステナビリティに関心のあるあなたに向けて、「合成繊維」とは何か、その基本的な定義から、ポリエステルやナイロンといった代表的な「種類」、それぞれの「特徴」、そして知っておきたい「メリット・デメリット」まで、わかりやすく解説する。さらに、三大合成繊維の具体的な「例」や、注目される再生繊維「リヨセル(テンセル™)」、環境問題との関わり、最新技術についても触れていく。この記事を読めば、合成繊維の全体像が理解でき、日々の服選びやSDGsへの関心も深まるはずである。

合成繊維とは?その定義と歴史

合成繊維の定義と歴史 合成繊維は、主に石油を原料として、化学的なプロセスを経て人工的に製造される繊維である。天然繊維(綿、麻、ウール、シルクなど)とは異なり、分子構造から設計されるため、特定の機能(強度、速乾性、伸縮性など)を持たせやすい点が大きな特徴だ。

その歴史は、19世紀末から20世紀初頭の科学技術の発展とともに始まった。大きな転換点となったのは、1935年にアメリカ・デュポン社のウォーレス・カロザース博士によって発明され、1938年に発表されたナイロンである。絹のような光沢と驚くほどの強度を持つナイロンは、「石炭と水と空気から作られ、鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」というキャッチフレーズで登場し、特に女性用ストッキングに革命をもたらした。第二次世界大戦中にはパラシュートやロープなど軍需品にも広く利用され、その有用性が確立された。

ナイロンの成功以降、ポリエステル、アクリル、ポリウレタンといった多様な合成繊維が次々と開発され、衣料品はもちろん、インテリア、産業資材、医療分野など、現代生活のあらゆる場面で不可欠な素材となっている。

合成繊維と他の化学繊維(再生繊維・半合成繊維)の違い

「化学繊維」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは人工的に作られた繊維の総称で、合成繊維はその一部である。化学繊維は、大きく以下の3つに分類される。

  1. 合成繊維: 石油などを原料に、完全に化学的に合成される繊維。(例:ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン)
  2. 再生繊維: 木材パルプなど、天然のセルロースを一度溶かし、繊維として再生させたもの。原料は天然由来だが、製造プロセスは化学的である。(例:レーヨン、キュプラ、リヨセル)
  3. 半合成繊維: 天然のセルロースに化学的な処理を加えて改質したもの。(例:アセテート、トリアセテート)

この記事では、主に「再生繊維」に焦点を当てて解説を進めるが、関連性の高い合成繊維についても後述する。

注目の再生繊維「リヨセル(テンセル™)」とは? その特徴と魅力

合成繊維ではないが、近年ファッション業界で注目度が高まっている「再生繊維」の一つに「リヨセル」がある。特に、オーストリアのレンチング(Lenzing)社が製造するリヨセル繊維(およびモダール繊維)のブランド名である「テンセル™(TENCEL™)」は、サステナブルな素材として人気を集めている。ここでは、リヨセル(テンセル™)について詳しく見ていこう。

リヨセル(テンセル™)の基本的な特徴

リヨセルは、ユーカリなどの木材パルプを主原料としたセルロース繊維であり、「再生繊維」に分類される(合成繊維ではない)。「リヨセル 素材」「リヨセル 特徴」「テンセル 特徴」「テンセルとは」といった疑問に応える、その主な特徴は以下の通りである。

  • ソフトな風合い: シルクのような光沢感と、とろみのある滑らかで柔らかな肌触りが特徴である。ドレープ性(生地が美しく垂れ下がる性質)にも優れている。
  • 吸湿・速乾性: コットン(綿)よりも優れた吸湿性と速乾性を持ち、汗をかいてもサラッとした着心地を保ちやすい。
  • 強度: 再生繊維の中では比較的強度が高く、湿潤時(濡れたとき)の強度低下が少ない。
  • 環境配慮型の製法: 製造工程で使用される溶剤(アミンオキサイド)は、回収して99%以上が再利用されるクローズドループ・プロセスで作られており、環境負荷が低いとされる。 (引用元: Lenzing AG ウェブサイト TENCEL™ Lyocell technologies)
  • 生分解性: 原料が木材由来であり、土壌や水中で微生物によって分解される生分解性を持つため、環境に優しい素材とされている。

リヨセル(テンセル™)と綿(コットン)の違い

「化学繊維」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは人工的に作られた繊維の総称で、合成繊維はその一部である。化学繊維は、大きく以下の3つに分類される。

  1. 合成繊維: 石油などを原料に、完全に化学的に合成される繊維。(例:ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン)
  2. 再生繊維: 木材パルプなど、天然のセルロースを一度溶かし、繊維として再生させたもの。原料は天然由来だが、製造プロセスは化学的である。(例:レーヨン、キュプラ、リヨセル)
  3. 半合成繊維: 天然のセルロースに化学的な処理を加えて改質したもの。(例:アセテート、トリアセテート)

この記事では、主に「再生繊維」に焦点を当てて解説を進めるが、関連性の高い合成繊維についても後述する。

注目の再生繊維「リヨセル(テンセル™)」とは? その特徴と魅力

合成繊維ではないが、近年ファッション業界で注目度が高まっている「再生繊維」の一つに「リヨセル」がある。特に、オーストリアのレンチング(Lenzing)社が製造するリヨセル繊維(およびモダール繊維)のブランド名である「テンセル™(TENCEL™)」は、サステナブルな素材として人気を集めている。ここでは、リヨセル(テンセル™)について詳しく見ていこう。

リヨセル(テンセル™)の基本的な特徴

リヨセルは、ユーカリなどの木材パルプを主原料としたセルロース繊維であり、「再生繊維」に分類される(合成繊維ではない)。「リヨセル 素材」「リヨセル 特徴」「テンセル 特徴」「テンセルとは」といった疑問に応える、その主な特徴は以下の通りである。

  • ソフトな風合い: シルクのような光沢感と、とろみのある滑らかで柔らかな肌触りが特徴である。ドレープ性(生地が美しく垂れ下がる性質)にも優れている。
  • 吸湿・速乾性: コットン(綿)よりも優れた吸湿性と速乾性を持ち、汗をかいてもサラッとした着心地を保ちやすい。
  • 強度: 再生繊維の中では比較的強度が高く、湿潤時(濡れたとき)の強度低下が少ない。
  • 環境配慮型の製法: 製造工程で使用される溶剤(アミンオキサイド)は、回収して99%以上が再利用されるクローズドループ・プロセスで作られており、環境負荷が低いとされる。 (引用元: Lenzing AG ウェブサイト TENCEL™ Lyocell technologies)
  • 生分解性: 原料が木材由来であり、土壌や水中で微生物によって分解される生分解性を持つため、環境に優しい素材とされている。

リヨセル(テンセル™)と綿(コットン)の違い

天然繊維の代表である綿(コットン)とリヨセル(テンセル™)は、どちらも植物由来のセルロース繊維だが、いくつかの違いがある。「リヨセル 綿 違い」を知りたい場合、以下の点が参考になるだろう。

特性リヨセル(テンセル™)綿(コットン)
原料木材パルプワタの種子の毛
風合いソフト、滑らか、とろみ感、光沢ナチュラル、ややハリがある
吸湿性高い高い
速乾性高いやや乾きにくい
強度比較的高い(特に湿潤時)標準的
シワややなりやすいなりやすい
環境負荷製造プロセス◎生分解性◎栽培時の水・農薬使用△生分解性◎

リヨセル(テンセル™)は、綿に比べてより滑らかで光沢があり、吸湿速乾性に優れる傾向がある。一方で、綿はよりカジュアルでナチュラルな風合いを持つ。

リヨセル(テンセル™)の洗濯とお手入れ

リヨセル(テンセル™)はデリケートな素材であるため、「リヨセル 洗濯」には注意が必要だ。

  • 洗濯表示の確認: まず、衣類の洗濯表示を必ず確認する。
  • 手洗い推奨: 摩擦に弱いため、手洗いが最も推奨される。洗濯機を使用する場合は、おしゃれ着洗い(ドライコース、手洗いコースなど)を選択し、必ず洗濯ネットに入れる。
  • 中性洗剤の使用: アルカリ性の洗剤は繊維を傷める可能性があるため、おしゃれ着用の中性洗剤を使用する。
  • 短時間での洗濯・脱水: 長時間水に浸けたり、強く揉んだりするのは避ける。脱水も短時間(30秒~1分程度)にとどめる。
  • 陰干し: 紫外線による変色を防ぐため、形を整えて風通しの良い日陰で干す。乾燥機の使用は縮みや風合いを損なう原因となるため避ける。
  • アイロン: アイロンをかける場合は、低温~中温設定で、必ず当て布をする。

適切な手入れを行うことで、リヨセル(テンセル™)特有の美しい風合いを長く保つことができる。

リヨセル(テンセル™)とサステナビリティ

リヨセル(テンセル™)が注目される大きな理由の一つは、そのサステナビリティである。計画管理された森林から採取された木材を原料とし、環境負荷の少ないクローズドループ・プロセスで製造される点、そして使用後に自然環境下で分解される生分解性を有する点は、持続可能な社会を目指す上で重要な要素と考えられている。ファッション業界における、環境配慮型素材の選択肢として、その存在感を増している。

環境団体によると、木材パルプを原料とした再生繊維のために年間3億本の木が伐採されているという指摘もあり、しっかりと管理された森林から調達された素材かどうかは確認が必要だ。

主な合成繊維の種類と特徴【三大合成繊維を中心に】

合成繊維には多くの種類があるが、特に生産量が多く、私たちの身の回りでよく使われているのがポリエステル、ナイロン、アクリルであり、これらは「三大合成繊維」と呼ばれる。それぞれの主な特徴を見ていこう。

ポリエステル(Polyester):最も身近な合成繊維とは

「ポリエステルとは」何か? それは、私たちの衣料品から産業資材まで、現代生活において最も広く利用されている合成繊維である。世界で最も生産量が多く、その用途は多岐にわたる。

  • 定義と歴史: ポリエステルは、多価アルコールと多価カルボン酸がエステル結合によって重合した高分子(ポリマー)から作られる繊維の総称である。代表的なものにポリエチレンテレフタレート(PET)があり、これはペットボトルの原料としても知られている。繊維としてのポリエステルは、1941年にイギリスで発明され、その後アメリカのデュポン社などが工業化を進めた。
  • 基本的な特徴:
    • 強度・耐久性: 非常に強度が高く、摩擦や引っ張りに強い。
    • 形状安定性: シワになりにくく、形崩れしにくい。プリーツ加工なども保持されやすい。
    • 速乾性: 水分をほとんど吸収せず、濡れてもすぐに乾く。
    • 耐薬品性・耐候性: 薬品や光(紫外線)に対して比較的強い。
    • 熱可塑性: 熱を加えると軟化し、冷えると固まる性質を持つ。
  • 弱点: 吸湿性が低い(汗を吸いにくい)、静電気が起きやすい、汚れ(特に油性)を吸着しやすく、一度付くと落ちにくい場合がある。
  • 主な用途例: Tシャツ、ブラウス、シャツ、スカート、パンツ、スーツ、ワンピース、アウター、フリース、スポーツウェア全般、ユニフォーム、カーテン、カーペット、寝具(布団わた、カバー)、ぬいぐるみ、テント、ロープ、漁網、タイヤコード、シートベルト、フィルターなど、その汎用性の高さから数えきれないほどの製品に使用されている。

ナイロン(Nylon / ポリアミド Polyamide):強度と弾性が魅力

  • 特徴: 非常に強度が高く、特に摩擦に強い(耐摩耗性)。伸縮性、弾力性に富む。軽い。薬品や油に比較的強い。
  • 弱点: 熱に弱い(ポリエステルより低い温度で溶ける)、日光(紫外線)に当たると黄変・劣化しやすい、吸湿性はポリエステルよりやや高いが、天然繊維には劣る。
  • 主な用途例: ストッキング、タイツ、靴下、スポーツウェア(水着、ウインドブレーカー)、アウトドア用品(テント、バックパック)、ロープ、釣り糸、カーペット、歯ブラシの毛など。

アクリル(Acrylic):暖かさと軽さが特徴

  • 特徴: 羊毛(ウール)に似た、ふっくらと柔らかく、暖かい感触を持つ。軽くて保温性が高い。日光や薬品に比較的強い。発色性が良く、鮮やかな色に染めやすい。
  • 弱点: 吸湿性が低い。毛玉(ピリング)ができやすい。熱に弱い。静電気が起きやすい。
  • 主な用途例: セーター、ニット、カーディガン、マフラー、手袋、靴下、毛布、カーペット、ぬいぐるみなど、主に保温性が求められる秋冬衣料やインテリア製品に使われる。

ポリウレタン(Polyurethane / スパンデックス Spandex):驚異の伸縮性

  • 特徴: ゴムのように非常によく伸び縮みする(伸縮性・弾性回復性が極めて高い)。他の繊維より軽い。
  • 弱点: 塩素や紫外線、熱、湿度によって劣化しやすい。単独で使われることは少なく、他の繊維と混ぜて(混紡・交編)使われることが多い。
  • 主な用途例: ストレッチパンツ、スポーツウェア、フィットネスウェア、水着、下着(ブラジャー、ガードルなど)、靴下、医療用サポーターなど、伸縮性が求められる製品。

合成繊維のメリット・デメリット

合成繊維は多くの利便性をもたらす一方で、いくつかの課題も抱えている。ここで、そのメリットとデメリットを整理しておこう。

合成繊維のメリット(長所)

  1. 強度・耐久性: 一般的に天然繊維より強度が高く、摩擦や繰り返しの洗濯に耐えるため、製品が長持ちする。
  2. 機能性の付与: 製造工程で特定の機能(速乾性、形状記憶性、撥水性など)を持たせやすい。
  3. イージーケア性: シワになりにくく、乾きが早いものが多いため、洗濯などの手入れが簡単である。アイロンが不要な場合も多い。
  4. 安定供給・コスト: 石油を原料とするため、天候に左右される天然繊維と比べて安定的に大量生産が可能であり、比較的安価に入手できる。
  5. 耐薬品性・耐菌性: カビや虫害を受けにくいものが多い。

合成繊維のデメリット(短所・課題)

  1. 吸湿性・透湿性の低さ: 汗を吸いにくく、衣服内の湿気がこもりやすいため、特に夏場などはムレを感じやすい。(ただし、近年は吸汗速乾加工されたものも多い)
  2. 静電気の発生: 乾燥した環境では静電気が発生しやすく、衣服が肌にまとわりついたり、ホコリを吸着したりすることがある。
  3. 熱への弱さ: 高温に弱いものが多く、アイロンがけの温度に注意が必要だったり、熱で溶けたりすることがある。
  4. 環境負荷:
    • 原料: 主原料である石油は枯渇性資源であり、採掘や輸送、製造過程でCO2を排出する。
    • マイクロプラスチック問題: 洗濯時に繊維くず(マイクロファイバー)が抜け落ち、海洋汚染の原因となるマイクロプラスチック問題が指摘されている。
    • 廃棄: 自然分解されにくいため、廃棄後の処理が課題となる。焼却時に有害物質を発生させる可能性もある。
  5. 肌への影響: 化学物質に敏感な人の場合、肌への刺激を感じることがある。

天然繊維との比較

ここで、合成繊維と天然繊維の主な違いを比較してみよう。どちらが良い・悪いではなく、それぞれの特性を理解し、用途や目的に応じて使い分けることが大切である。

特性合成繊維 (例: ポリエステル, ナイロン)天然繊維 (例: 綿, ウール, 絹)
原料石油など植物、動物
強度高い一般的に合成繊維より低い
吸湿性低い高い (快適性)
速乾性高い低い
保温性繊維による (アクリルは高い)繊維による (ウールは高い)
耐シワ性高い低い (シワになりやすい)
静電気発生しやすい発生しにくい
耐薬品性高い比較的低い
耐菌・耐虫性高い低い (虫害・カビの可能性)
価格比較的安価一般的に比較的高価
環境負荷製造時CO2排出、マイクロプラスチック、非生分解性栽培時の水・農薬使用 (綿)、生分解性あり

合成繊維の進化と未来

合成繊維は、より快適に、そして環境負荷を低減するために、日々進化を続けている。

高機能繊維の開発 

近年、技術開発により、合成繊維のデメリットを克服したり、新たな価値を付加したりする「高機能繊維」が次々と生まれている。

  • 吸湿速乾・接触冷感: 汗を素早く吸って乾かし、肌触りをサラサラに保つ。触れるとひんやり感じる素材は、夏の衣料品やスポーツウェアに欠かせない。
  • 保温・発熱: 体から出る湿気や汗を吸って発熱する素材や、太陽光を吸収して熱に変換する素材など、より薄くても暖かい衣類が可能になっている。
  • UVカット: 紫外線から肌を守る機能を持つ繊維。衣類だけでなく、カーテンなどにも使われる。
  • 抗菌防臭: 繊維上の細菌の増殖を抑え、気になる臭いを防ぐ。靴下や肌着、医療・介護用品などで活用される。
  • ストレッチ・形態回復: 高い伸縮性を持ちながら、元の形に戻りやすい素材。動きやすさが求められる衣料品に。
  • 軽量・高強度: より軽く、より丈夫な繊維は、スポーツ分野や産業資材(航空宇宙、自動車など)での利用が期待される。

これらの高機能繊維は、帝人(例:SOLOTEX®, ECOPET®)や東レ(例:エアリズム、ヒートテック ※ユニクロと共同開発)といった日本の大手繊維メーカーも開発に力を入れている分野である。

リサイクル技術の進展 

環境問題への意識の高まりから、合成繊維のリサイクル技術が重要視されている。

  • ケミカルリサイクル: 使用済みのポリエステル製品などを化学的に分解し、再びポリエステル原料(モノマー)に戻してから再重合する技術。これにより、石油から新規に製造するのと同等の品質の繊維を繰り返し作ることが可能になる。
  • マテリアルリサイクル: 回収したペットボトルなどを洗浄・粉砕し、溶かして繊維にする技術。ケミカルリサイクルより工程は簡便だが、品質が低下しやすい場合がある。

例えば、帝人フロンティア株式会社が開発したリサイクルポリエステル繊維「ECOPET®」の一部(ケミカルリサイクル)では、石油からポリエステルを製造する場合と比較して、エネルギー消費量を約77%、CO2排出量を約47%削減できると報告されている。 (引用元: 帝人フロンティア株式会社 ECOPET® ウェブサイト) こうした技術は、廃棄物削減と資源の有効活用に貢献する。

リサイクルポリエステルのメリットとデメリット

リサイクルポリエステルは、環境負荷低減の観点から多くのメリットを持つ一方で、「リサイクルポリエステル デメリット」も存在する。

  • メリット:
    • 石油という限りある資源への依存度を低減できる。
    • 廃棄物の削減に貢献する(特にペットボトル問題)。
    • バージンポリエステル製造に比べ、エネルギー消費量やCO2排出量を削減できる(削減率はリサイクル方法により異なる)。
  • デメリット:
    • 品質の問題: 特にマテリアルリサイクルの場合、不純物の混入や繰り返しリサイクルすることによる分子構造の劣化により、バージン品と同等の品質を保つことが難しい場合がある。強度や染色性が低下することもある。
    • コスト: ケミカルリサイクルは、高度な技術と設備が必要なため、製造コストがバージンポリエステルよりも高くなる場合がある。
    • リサイクルプロセスでの環境負荷: 回収、洗浄、再加工といったリサイクル工程自体にもエネルギーが必要であり、CO2も排出される。
    • 染料・添加剤の除去: 元の製品に含まれる染料や添加剤を除去することが難しく、リサイクル後の製品の色や用途が限定されることがある。
    • マイクロプラスチック問題: リサイクルポリエステルも合成繊維であるため、洗濯時にマイクロプラスチック(マイクロファイバー)を排出し、海洋汚染の一因となる問題は解決しない。

これらのデメリットを克服するための技術開発も進められており、リサイクル技術のさらなる向上が期待される。

持続可能性への新たな一手「バイオマスプラスチック」

合成繊維の環境負荷低減に向けた取り組みは、リサイクル技術の進化と並行して、新たな領域へと広がっている。その一つが、再生可能な生物資源(バイオマス) を原料とする「バイオマスプラスチック」の応用だ。これは、従来の石油由来プラスチックからの脱却を図り、より持続可能な社会の実現に貢献する重要な鍵となる。

バイオマスプラスチックとは?

バイオマスプラスチックとは、植物由来の資源(例えば、糖類、デンプン、セルロース、植物油など)や、微生物、動物由来の資源を原料として製造されるプラスチックの総称である。従来の石油などの化石資源を主な原料とするプラスチックとは異なり、再生可能な資源を活用することで、地球温暖化の原因となるCO2排出量の削減や、化石資源の枯渇問題への貢献が期待されている。

バイオマスプラスチックの応用

この革新的なバイオマスプラスチックは、合成繊維の分野においても、環境負荷を低減するための有望な選択肢として注目を集めている。具体的には、以下のような研究開発が進んでいる。

  • 植物由来PET: サトウキビの廃糖蜜などを原料の一部または全部として製造されるポリエステル(PET)。これにより、化石資源への依存度を低減し、植物が成長過程でCO2を吸収する特性を活かしたカーボンニュートラルな素材として期待されている。
  • その他のバイオベース合成繊維: トウモロコシ由来のポリ乳酸(PLA)や、一部植物由来原料を用いたポリトリメチレンテレフタレート(PTT、例:帝人SOLOTEX®の一部)などが開発されている。これらの繊維は、従来の合成繊維とは異なる特性を持ち、新たな用途展開が期待される。
  • 構造タンパク質素材: 微生物の発酵プロセスを利用して製造されるタンパク質をベースとした新しい繊維(例:Spiber株式会社のBrewed Protein™繊維)も登場している。シルクやウールのような自然な風合いと機能性を持ち合わせながら、より持続可能な生産方法が模索されている。

これらのバイオマスプラスチック技術は、まだコストや食料資源との競合といった課題を抱えているものの、合成繊維のサステナビリティを飛躍的に向上させる可能性を秘めている。今後の技術革新と社会実装が期待される分野だ。

まとめ:合成繊維とのこれから

合成繊維は、その多様な特徴と絶え間ない技術革新により、私たちの生活に利便性と快適性をもたらしてきた。強度、耐久性、手入れの容易さ、そして様々な機能性は、現代社会に不可欠なものである。また、近年ではリヨセル(テンセル™)のような環境配慮型の再生繊維も注目されている。

一方で、合成繊維はマイクロプラスチック問題や製造・廃棄時の環境負荷といった課題も抱えている。今後は、高機能化による快適性の追求と同時に、リサイクル技術の向上や植物由来原料への転換など、サステナビリティを重視した開発がますます重要になるだろう。

合成繊維や再生繊維の特性を正しく理解し、メリット・デメリットを踏まえた上で、環境に配慮した製品選択や、長く大切に使うといった行動が、私たち一人ひとりにも求められている。素材の進化とその未来に、これからも注目していきたい。

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