Shift Cの評価を行うオーストラリアの評価機関Good On You®(GOY)では、消費者の選択しやすさを重視した独自の評価方法を採用している。ブランドが本当にエシカルなのかどうかは、製造過程を追った情報(トレーサビリティ)からしかわからない。作り手が生産背景における環境的・社会的責任をしっかりと果たし、「地球」「人間」「動物」に対してどのような取り組みをしているかを、公開情報をもとに専門家チームが評価している。現在公開されている世界の約6000ブランドはどんなポイントで、どのように評価されているのか?紐解いていこう。

答える人
山浦誉史/Shift C 法人・ブランド担当
2018年より外資系大手アパレルブランドのサステナビリティ担当として循環型ファッションを含むサステナビリティ関連の業務に携わる。2024年よりUPDATERに入社しShift C事業へ参加。よりサステナブルなファッション消費への行動変容を促すべく、同事業の法人・ブランド担当として「Good Measures」のローカライズ、営業を行う。
Q.レーティングの加点や原点の単位・算出方法を教えてください。
評価しているのは、製品のサステナビリティ情報が自社のウェブサイトから発信され、明記されているかどうかです。具体的な加点・減点方法は機関内情報のためお答えできないのですが、ブランド全体の調達ポリシーの設定・開示が行われ、製品レベルでもより詳細な調達先、認証素材、縫製、加工工場の詳細といった情報が開示されているかどうかを細かくチェックしています。
また、私たちはブランドが自らサステナビリティパフォーマンスを向上するためのオンラインツール「Good Measures」も展開しています。GOYに登録されたブランドさんがGood Measuresに登録いただくとユーザーが直接システムへと開示情報やエビデンスを入力できるようになっています。各ブランドさんは入力しながら環境対策に必要な項目を知り、自社がよりサステナブルな背景と透明性を持つために何が必要かなども直接わかるようになっています。各社によって入力された情報をもとにGood Measuresチームがエビデンスを確認して評価していきます。
詳しくはGOYによる評価ガイドもご覧ください。
Q.ブランド評価の見直し頻度は?
GOY評価済みのブランドは最終更新日からおおよそ18か月ごとに評価の見直しが行われます。ブランド側がサプライヤーリストを公開しているかは、最も影響のあるチェックポイントの一つです。シーズンによって取引先が変わることも多々あると思いますが、変更があるたびに、もしくは四半期ごとのリスト更新などの対応が一般的に求められます。トレーサビリティの開示は自社サイトをソースとするのが理想ですが、特定の第三者メディア・団体(Clean Clothes Campaign, Greenpeaceなど)の発信も考慮されています。同時に、環境保護団体などから批判されている場合などは減点対象となります。
Q.「環境負荷の低い繊維」とありますがその定義と評価基準は?
どの立場に立ってどの項目を優先するか、またその時代によって詳細が変わってきますが、こちらの記事内において、今、GOYの考える代表的な認証素材を具体的にお伝えしています。認証素材は評価基準でランクがあり、例えばオーガニックコットンであればGOTS認証は最も厳しい認証として高評価となります。この他にも新たに開発された新素材で従来の素材よりも環境負荷が低いとされるものを製品に使用している場合は、その素材が(科学的にも)どのように負荷が低いのかを説明する必要があり、GOY評価ではこれらも確認されます。新しく開発された素材については別枠で入力する欄にて説明やエビデンスを添付することで高評価の対象になることもあります。
Q.評価はCDP(Carbon Disclosure Project)に基づいているとの記載があります。その場合対象となるのは大企業です。中小企業に対するスコアは大企業に比べて劣りがちなのでしょうか?
GOYのアナリストチームにCDPの専門家がいて、売上・従業員数など一定の企業規模を満たすブランドにはCDPへ脱炭素を含む気候変動対策の取組みを報告しているかどうかは一つのチェック項目ではあります。CDPへの報告があれば、当該情報をスコアリングに反映していますが、中小ブランドでもGHG排出や気候変動への取り組みなどを行い、開示していれば評価が劣ることはありません。ブランドサイズのLargeとSmallのすみ分けは欧州委員会のCorporate sustainability due diligenceに準じています。
Q. 温室効果ガス排出量の削減目標を設定したブランドにリワードが付与されるとのこと。リワードについて具体的に教えて下さい。
当該トピックに関する目標の設定と進捗の開示をすることで、より “高い評価”を得られるという意味です。
Q. CDPやCFP(Carbon Foot Print)などの算出が不可能な小規模ブランドにおいては環境負荷数値が低い場合が多いです。それに対して、算出しているけれどもCO2排出量など環境不数値が多い企業の場合、どちらのスコアが高くなりますか?
これは具体的なレベルでの回答は難しいのですが、まず一番評価が高いのはGHG排出などを含むカーボンフットプリントの算出も行い、その負荷が業界内の平均値や自社の過去の排出量などのベンチマークに比べて低いこと。さらに、その進捗を外部にしっかりと発信している場合です。算出を行っていない、またその課題に対する取り組みも行われていない、情報開示もしていない、というのが評価としては低くなるパターンです。ご質問の場合は、先述のように何をベンチマークとするか(相対的か絶対的かなど)によって変わってきますので、ケースバイケースです。
Q. 「循環性」はどのようにスコア化しているのでしょうか?
「循環性」は特に「地球」分野のなかでも優先度の高い項目としてチェックされるものです。ここではブランドがどのぐらい循環型の取組みを具体的にしているかが見られています。リサイクル素材を使用しているか、またその割合は、リサイクル素材の原料はプレコンシューマー(B品や端材、余剰在庫など)か、ポストコンシューマー(古着)なのかリペアや保証制度はあるかなどを行い、それらの取組みを積極的に開示しているかを確認しています。また、年間でのセールの数やコレクションの発表回数に応じて「ウルトラファストファッション」、「ファストファッション」に棲み分けられ、ビジネスモデル自体の循環性の高さも見られています。
Q. リサイクル素材の使用、バイオ素材の使用、自社製品のリサイクルなどはどのように採点されているのでしょうか?
リサイクル素材の使用に関しては、全体のうちで使用している割合がどのぐらいなのか、またその情報をきちんと外向けに出しているかをチェックし、割合が多ければその項目の評価は高くなります。PLA*など業界内で浸透してきたバイオマス由来の素材もそうですが、比較的新しく流通がまだまだされていないものは、これまでの素材に比べて、どのように環境に対して負荷が低いのかを科学的に説明する必要があります。自社製品に関わらず、回収やリサイクルの取り組みを行い、それを外向けにコミュニケーションしていれば、評価の対象になります。
*PLA:ポリ乳酸。トウモロコシやサトウキビなどの植物原料のバイオマスプラスチックとそれを使った商品。Q. 労働虐待のリスクはどこで決められたものですか?
GOY評価における労働環境リスクに関しては「一次段階(農業・鉱物資源・採取などの原料調達)」、「二次段階(繊維生地生産・なめしなどの皮革加工・プラスチック加工)」、さらに「最終段階(裁断・縫製・最終加工)」の3つに分け、それぞれでブランドがリスクの把握とそれらに対する対応・取組みをどのように行い、開示しているかをチェックしています。これらの項目に関してはGOTS、Fairtrade、ECA (Ethical Clothing Australia)などの基準をGOYの評価に反映させています。特にGOTSなどはthe UN Guiding Principles for Business と Human Rights and the OECD Due Diligence Guidance for Responsible Supply Chains in the Garment and Footwear Sectorと足並みを揃えた人権保護、強制労働に関してはILOのポリシーと同じく足並みを揃えた基準となっています。
Q. 生活賃金とはどこで決められたものですか?
「生活賃金」には各国共通の定義がありません。なぜなら、各市場や地域の経済・文化的背景が多様であるためです。GOYでは各市場や地域でその時その時に「生活賃金」として把握可能なものに対してブランドがどのような賃金の戦略をたて、その進捗を外向けに開示しているかをチェックします。日本国内であれば、国内最大の労組である日本労働組合総連合会(連合)の定義する「生活賃金」に対して、どのような取り組みを行っているかがチェックされます。
Q. 「行動規範」の指標になるものはありますか?
一般的な内容になりますが、企業の「行動規範 (Code of ConductまたはCoC)」とは、その企業が目指すべき価値観やその企業と社員の行動の在り方を示すもので、基本的にコーポレート部門管轄となります。
企業のビジネスコンセプト、業種、ブランディングによって詳細は異なりますが基本的に以下のものを含みます:
• 人権の尊重・保護
• 労働環境基準の遵守と時代に合わせた改善
• 環境への配慮
• 賄賂・汚職などの防止、公正な取引の約束 など
Q. ブランドの評価説明に「労働リスクが中程度の〇〇で作られています」とありますが、どこで決められたものですか?また中リスクの国で作られていたらすべて減点対象となるのでしょうか?
GOY評価における国や地域ごとの労働環境リスクに関しては、GOYが様々な当該関連トピックの専門家および専門家団体と足並みを揃えた上で決定しているものです。詳しくはこちらの情報をご確認ください。
サイト内では日本が低リスクに分類されていますが、外国人技能実習制度の問題により、一旦中程度に格下げされています。これからの特定技能制度への更新に伴い、縫製業分野での外国人労働者受け入れや人権監査の取組みによってそのリスクが低減されるかどうかがモニタリングされているところです。
Q. 環境、素材、動物福祉などの海外認証がないと、高スコアにならないのでしょうか?
認証の中身にもよりますが、国際的な認証を取得している=第三者の監査を経て一定の環境・社会・安全の基準を満たしていることの証明になります。また、基本的に「認証」はその特性上、それらが確保されていることを示すものですので、業界内で一般的に浸透している認証を素材レベル・ブランドレベルで取得していれば、そのことに対する評価は高くなる傾向があります。
しかし、小規模ブランドで国際認証を取っていなくても
・自社の取引先工場を可能な限り訪れトレーサビリティを発信する
・素材の選択、受注生産、梱包の工夫などで脱炭素に貢献する
・海外の委託工場地域の平均月収を調べ生活賃金を支払う
などの取り組みで高スコアを獲得しているマイクロブランドもあります。
Q. ファストファッションブランドのいくつかが「ここから」評価です。一方でサステナブルな取り組みをしているブランドも「ここから」評価に多く見られますが、なぜ同じなのでしょうか?
ファストファッションは大手ブランドが多く、欧州や米国の法規制に則り脱炭素目標や労働規範などを制定しています。そのため、グローバルのSX動向に合わせるという意味では、国内の小規模ブランドに比べてリソースや情報の面でも先進的である側面があると思います。
Q. セレクトショップの評価はどのように行っているのでしょう?
セレクトショップの場合はオリジナルアイテムを対象としており、オリジナルアイテムに関するブランドからの公開情報で評価を行います。また運営会社のサステナビリティのポリシーも対象となります。
Q, B Corpが最も厳しい国際認証だと聞いたことがあるのですが、B Corpを取得しているブランドはサステナブルだと考えてよいのでしょうか?
ビジネス向けの認証であるB Corpは従業員、地域社会、環境、顧客に対するインパクトを重視し利益と社会還元の割合が評価となっています。対して、Good Measuresはあくまでもブランドの透明性を重要視し、サービスやプロダクトの背景を消費者に伝え、正しい選択を叶えることを目的として評価しているのです。