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ストーリー|2025.03.24

アップサイクルとは?リサイクル・リメイクとの違いとアパレル業界注目のブランド10選

サステナブルなものづくりが注目を集める今、「アップサイクル」という言葉を耳にする機会が増えている。

本記事では、アップサイクルの意味やリサイクル・リメイクとの違いを分かりやすく解説するとともに、実際にアップサイクルを取り入れているアパレルブランドを8つご紹介。環境に配慮しながらファッションを楽しむヒントを探してみよう。

原稿:藤井由香里

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アップサイクルとは?

アップサイクルとは、本来であれば捨てられるはずの廃棄物に新たな価値を加え、別の新しい製品へと生まれ変わらせることを指す。

単にリサイクルするのではなく、素材の特性を活かしながらデザインやアイデアを取り入れ、より価値の高いものにアップグレードするのが特徴だ。ファッション業界では、デッドストックの生地や端切れを活用した新しいアイテムの制作が行われ、食品業界や建築・インテリアの分野でも広がりを見せている。

近年、アップサイクルが注目されている背景には、サステナビリティやサーキュラーエコノミーへの関心の高まりがある。大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とする経済システムは、気候変動や資源枯渇、廃棄物の増加といった深刻な問題を引き起こしている。

こうした課題に対し、アップサイクルは廃棄物を削減し、資源の有効活用を促す有効な手段となる。単なるリユースやリサイクルにとどまらず、新たな価値を生み出す創造的なアプローチとして、今後さらに広がっていくだろう。

アップサイクルとリサイクルの違い

アップサイクルとリサイクルはどちらも廃棄物を再利用する手法だが、そのプロセスと目的には大きな違いがある。

リサイクルは、一度原料や資源の状態に戻してから再利用する手法だ。たとえば、ペットボトルを細かく砕いて再生繊維にし、新しい衣類を作るケースや、紙ごみを再生紙に加工するケースが代表的。この過程では、素材を分解・加工するためにエネルギーを消費することが避けられない。

一方、アップサイクルは、元の素材の特性を活かしながら新しい価値を加えて別の製品へと生まれ変わらせる手法だ。たとえば、デッドストックの生地を新しいファッションアイテムに仕立て直したり、使い古したタイヤをバッグに変えたりするケースがある。リサイクルのように原料に戻すことなく、より少ないエネルギーで新たな付加価値を生み出せる点が特徴だ。

アップサイクルとリメイクの違い

アップサイクルとリメイクは、どちらも「不要になったものを作り変える」という点で共通しているが、大きな違いは「価値の変化」にある。

リメイクは、もとの素材を活かしながら別のアイテムに作り変えること。ただし、価値が上がるとは限らない。たとえば、着古したシャツをパジャマに縫い直すのはリメイクだが、必ずしも新たな価値が加わるわけではない。

一方、アップサイクルは、不要になったものにデザインやアイデアを加え、もとの価値を高めて生まれ変わらせること。たとえば、古いデニムを高級感のあるバッグに仕立てるようなケースを指す。

つまり、「価値が向上する=アップサイクル」、「価値が下がる可能性もある=リメイク」と考えると分かりやすいだろう。アップサイクルはサステナビリティの観点からも注目され、廃棄物の削減と新たな価値創造を両立する手法として、さまざまな業界で取り入れられている。

アパレル業界におけるアップサイクルの事例

ここからは、アパレル業界で実際に行われているアップサイクルの取り組みを紹介する。今回は、アップサイクルに注力する6つのブランドの事例を取り上げる。

MALION VINTAGE

cutwork short blouse ¥52,800

「MALION vintage(マリオン ヴィンテージ)」は、石田栄莉子と清水亜樹によって2016年に誕生した日本のアップサイクルブランド。ブランド名は「MARIA」と「MARIO」を掛け合わせた造語で、「RIGHT」から「LEFT」へシフトする意味も込められている。

「誰かが大切にしていたものに、新しい息吹を」をコンセプトに、ヴィンテージのネクタイやツイードジャケット、デッドストックのシーツなどを解体し、再構築。メンズライクなエッセンスとフェミニンなディテールが交差する独自のデザインで、全て一点モノのコレクションを生み出している。

生地をただ使うのではなく、選び、洗い、解体し、プレスしてから一枚一枚パッチワーク。手間を惜しまない丁寧なものづくりを大切にしながら、過去のストーリーを未来へとつなげている。

ユーズドのクッションカバーやテーブルクロスを解体・再構築し、新たな表情を纏ったロングスリーブのショート丈ブラウス。繊細なレースから覗く透け感が美しく、肌をさりげなく透かすデザインがエレガントな抜け感を演出する。

前後2way仕様で、ボタンを閉じてブラウスとしても、軽やかに羽織ってジャケットライクにも着こなせる万能アイテム。異なる素材が織りなす一点ものならではの風合いが楽しめるのも魅力だ。

SAORI UEKI

SAORI UEKI Patchwork Lace Nosleeve dress ¥181,500(税込)

「SAORI UEKI(サオリウエキ)」は、デザイナー植木沙織が2024年に東京で設立したファッションブランド。国産ベルベットメーカーの生地サンプルやペットボトル由来のリサイクル生地を活用し、ゼロウェイストを追求したコレクションを展開している。

さらに、古着を解体し、新たな素材として再構築。モードでエレガントなデザイン性を保ちながら、サステナブルなものづくりを実現している。ブランドや企業、ショップの余剰在庫や生地を新たな命を吹き込んで循環させる活動にも積極的に取り組み、現代のファッションと持続可能な未来を結びつけることを目指している。

リサイクル素材を巧みに組み合わせた、唯一無二のパッチワークワンピース。
前身頃にはペットボトル由来の再生レースを使用し、繊細な表情を演出。後身頃には家庭から回収したリサイクルTシャツを18枚使用し、丁寧にパッチワークを施し、モードでエレガントな一着へと昇華。

「もう着られなくなった洋服も、使えるところを部分的にピックアップし、他のものと組み合わせることで特別な一着へと生まれ変わります。そんなスペシャルなドレスになるようにと製作いたしました(デザイナー / 植木)」

QUIITO

VITAGEのスカーフをアップサイクルしたシリーズ

「QUIITO(キイト)」は、デザイナー香村茉友が2023年に設立したファッションブランド。デニムやミリタリーウェアの古着を再構築し、パッチワークやリデザインを軸にしたクリエイションを展開している。

形や色を自由に捉え、手の動きや感覚を頼りに生まれる偶然を重ねながら、一着ごとに新たな表情を生み出す。まるで造形遊びのようなプロセスから、絵を描くだけでは生まれない唯一無二の服を、日本のアトリエで丁寧に仕立てている。

ブランド名の「QUIITO」には、染める前の「生成りの糸(生糸/キイト)」に由来。自然の色や質感の持つ美しさへの憧れと、原料や資源を大切にしたいという想いが込められている。

ヴィンテージスカーフをアップサイクルした、唯一無二のシリーズ。
ワンピースの前身頃やパンツの巻きスカート部分には、世界中から集めた一点もののヴィンテージスカーフを使用している。

さらに、オリジナルプリントのテキスタイルを組み合わせ、スカーフの柄をインスピレーションにした独自のパターンを創出。それぞれ異なる柄や質感が織りなす、偶然の美しさを楽しめる特別な一着だ。

FREITAG

「FREITAG(フライターグ)」は、廃棄物に新たな命を吹き込むアップサイクルのパイオニアとして知られるスイス発のブランド。トラックの幌(トラックを覆うターポリン製)、廃棄予定のエアバッグ、シートベルトなど、頑丈で耐久性に優れた素材を再利用し、バッグや財布といった小物など、実用的なアイテムを生み出している。

ヨーロッパ各地からスイス・チューリッヒへ集められたトラックの幌は、一枚一枚丁寧に手作業でカッティングされ、汚れや傷さえもデザインとして活かされている。そんな唯一無二の個性が、多くのサイクリストや環境意識の高い人々に支持されている。

さらに、バッグのライフサイクルを長くするために修理サービスや交換プラットフォームを提供し、徹底したサステナブルな循環を実践。その先には、「生物学的に分解可能」または「技術的に再分解可能」なトラックタープの開発を進め、真の循環型社会を実現することを目指している。すでに開発済みの完全循環型素材「Mono[PA6] 」とともに、最先端のサーキュラー・エコノミーに挑戦し続けるブランドだ。

F202 LELAND 39500円(税込)

FREITAGならではのトラックタープ素材を使用した、タフで機能的なトートバッグ。ショルダーストラップとハンドル付きで、肩掛け・手持ちの両方に対応。内部にはジッパー付きポケットや携帯電話ホルダーを装備しており、実用性も抜群。

トップはジッパー仕様で、中身を雨や視線からしっかりガード。ヨーロッパを走り抜けたトラックの幌を再生し、それぞれ異なる風合いを持つ唯一無二の一点もの。環境への配慮とデザイン性を兼ね備えた、長く愛せるバッグだ。

CYCLEING

ECO BAG GILET ¥28,000(税込)

モードの最前線でスタイリストとして活躍し、シェアーパフォーマンス集団「HAPPENING」の発起人でもある伏見京子が手がけるアップサイクルブランド「CYCLEING(サイクリング)」。2021年にスタートし、古着に新たな価値を与えることをコンセプトに、独自のクリエイションを展開している。

CYCLEINGが目指すのは、古着を使いながらも、古臭さを感じさせないデザイン。新品の布やパイピングをアクセントに加え、フレッシュな感覚を取り入れることで、日の目を見ることができなかった服に新たな命を吹き込んでいる。既存の価値観にとらわれず、服が持つ本来の魅力を引き出しながら、アップサイクルの可能性を追求するブランドだ。

廃棄予定だったメンズのウールジレをベースに、イレギュラーなデザインのフリルを組み合わせたユニークな一着。

フリル部分にはエコバッグを使用し、ハリのある立体的なシルエットを実現。上品なウール素材とカジュアルなコットンバッグのコントラストが魅力で、シーズンを問わず活躍するアイテム。

KURO

「KURO(クロ)」は、日本の職人技とモダンなデザインを融合させたデニムブランド。ブランド名には、精緻なクラフツマンシップと美意識への敬意が込められている。伝統を重んじつつも革新的なアプローチを取り入れ、国内外で高く評価されている。

同ブランドが手がけるREMAKEコレクションは、使用されなくなったデニムや裁ち落とされた生地、不良品、サンプル品などを新たなデザインへと再構築するプロジェクト。すべて熟練の職人が解体から再構築までを一貫して手がけ、一着に丸一日をかけて丁寧に仕上げられている。

その結果、量産にはない特別な存在感と、工芸品のような繊細なディテールが宿るアイテムが完成する。異素材の組み合わせや建築的なデザインを取り入れた一点もののアイテムは、過去と現在をつなぐアートピースとして、その価値を放っている。

REMAKE DENIM MARK VI SKIRT ¥85,800(税込)

解体したデニムパンツに、形状記憶コットン100%のプリーツを組み合わせたリメイクプリーツスカート。

3本のデニムを解体し、縦のラインを活かしたカッティングと、同色系のトーンで統一したカラーリングが洗練された印象を与える。

すべての工程はアトリエで職人が手作業で行い、緻密な計算のもと丁寧に仕上げられた1点もの。伝統的なデニムの風合いとモダンなデザインが融合した特別な一着。

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ライター/エディター
藤井由香里
ファッションメディアのライター/エディター、アパレル業界での経験を経て、2022年に独立。現在は、ファッション、美容、カルチャー、サステナビリティを中心に執筆・編集を手がける。Webや紙媒体のコンテンツ制作に加え、広告制作、コピーライティング、翻訳編集など、多岐にわたるプロジェクトに携わる。

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