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ストーリー|2024.11.21

ジュエリー界の新星ANNA DIAMOND。デザイナー/ファウンダー 森春菜が見据える前向きな未来とは?

2021年12月にスタートしたANNA DIAMOND(アンナ ダイヤモンド)は、“消費社会で注目されてこなかった素材に新たな視点を与え昇華する一連のストーリー”を届けるジュエリーブランド。今年の夏には、国内外の”サステナビリティ”と”デザイン性”を兼ね備えたアパレル、シューズ、アクセサリーやインテリア等のブランドを集めたコンセプトストアを立ち上げたり、素材開発まで遡り新たなコラボレーションを生むなど、ジュエリーブランドの枠を超えた表現活動を行っている。デザイナー/ファウンダーの森春菜氏が目指す先には何があるのか、話を聞いた。

取材:横山佐知

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森 春菜
神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。大学卒業後コピーライターとして活動開始。2021年、新たな表現活動としてアンナ ダイヤモンドを立ち上げた。

10年後が、より良い社会であることを願って

森さんはコピーライターという肩書きも持っていると聞きました。アンナ ダイヤモンドを始めたのは、どんな経緯だったのですか?

コピーライターとしての最初のクライアントが、サステナビリティを事業の中心に据えるシューズブランドだったんです。そのブランドの仕事をしていくうちに、サステナビリティをテーマにした他社からの仕事の依頼が増えていきました。言葉を通してブランドをサポートしているうちに、言葉の枠を超えて且つ自分が主語になる形での表現活動を行いたいと思い、アンナ ダイヤモンドを立ち上げました。(アンナ ダイヤモンド デザイナー/ファウンダー森 春菜氏、以下同)

表現するのがジュエリーになった理由はなんだったのでしょうか?

言葉という形無きものを扱う仕事をしていたからこそ、「実際に触れることができて、10年、100年と形が変わらずに残るもの」に憧れがありました。ジュエリーは金属資源を使っているから、長く残ります。そして、もしジュエリーとしての役目を終えたとしても、再び金属資源として循環させることができる。だから私は、表現手法としてジュエリーブランドを選びました。
最初から「サステナブルなブランドを作ろう」と思って始めたわけじゃないんです。自分が本当に納得するやり方で、納得するものを作りたい、と思っていて。たとえば、そのブランドがあることで社会が少しでも明るくなったり、ものづくりの過程でどこかに皺寄せがいかないようにしたり。それを追求していくうちに、結果として「サステナブル」という評価を受けるブランドになったのかもしれません。
ブランド名のアンナは10歳下の私の妹の名前です。妹が私と同じ年齢になったとき、ちょっとでも希望溢れる前向きな社会になっていたらいいなと思い、あえて自分の名前ではなく、妹の名前を冠しました。

これまで焦点が当たらなかった素材をアップデートさせる

Successeure Collection  左:Reshine scratch ring 30 labgrowndiamonds、右・Reshine scratch earrings 30 labgrowndiamonds (pair) *プライスはweb参照

このジュエリーでは、ベースに廃棄された携帯電話やPCの基盤から取れた金属を使っているんです。ダイヤモンドはラボグロウン・ダイヤモンドという人工のもの。成分も輝きも天然ダイヤモンドと全く一緒で、鑑定書ももらえるものです。違いは採掘する必要がないこと。
天然ダイヤモンドが持つロマンへの敬意もありますが、今の自分にとってはラボグロウン・ダイヤモンドの方が心にフィットすると思って使っています。

Unique Pearl Collection 左:Yamashita pearl open ring Regular price、右:Yamashita pearl diamond earrings (pair)*プライスはweb参照

同じようなエピソードとして、不揃いの真珠を使ったコレクションがあります。これまでは、まん丸に削られたり、漂白されるなどしていました。しかし、こういったユニークなものの方が、私にとっては可愛い。まん丸の真珠は大変綺麗で素晴らしいものですが、あえて型破りのユニークパールを使っています。 真珠はよく一連のネックレスとして売られていて、大量生産にはまん丸の方が扱いやすいんです。丸くないと穴を開けるのが難しくなり、職人さんの技術と時間が必要になります。でも、うちは大量生産を目指しているわけではないので、こういう個性的な真珠が使えます。職人さんの技術があってこそ実現できる、技術力の賜物であるコレクションです。

個性的なアイテムが多いようですが、客層はどんな方たちですか?

アンナ ダイヤモンドのお客様は、大きく二つのグループに分けられます。ひとつ目は、ブランドのコンセプトに共感し、選んでくださる方々です。これまでジュエリーが好きで愛用されていた方もいれば、初めて自分のためにジュエリーを選ばれる方もいらっしゃいます。お客様それぞれが、ご自身の価値観とアンナ ダイヤモンドの信念を重ね合わせ、特別なジュエリーとして選んでいただいているのが印象的です。
ふたつ目は、デザインに魅了され、手に取ってくださる方々です。店頭で偶然出会い、生産背景などモノづくりの裏側を気にされる事が少なかった方が、「こんな発想、クリエイションもあるんだ」と、新しい発見をされることが多いです。
一番特徴的なことは、ブランドの背景や想いに共感いただき、アンナ ダイヤモンドの活動を心の底から応援してくださったり、再び訪れたり購入してくださるお客様が多いことだと思います。


「愛の流動性」など、コレクションそれぞれにストーリーのあるネーミングがあるのも面白いですね。

やはり、私はコピーライター出身なので、どのコレクションを作る時にも、まずは言葉から考えます。使用する素材と対峙して、この素材を使ってどんなコレクションを作ろうか、どんな事を伝えたいのか考えます。そうやって言葉で輪郭を作ってから、デザインで色つけをしていく。
今はジュエリーを中心に制作していますが、アート作品や家具の制作にも興味があります。実際に、最近ではお皿やアート作品の制作に取り組んでいます。
真珠をとると、貝殻が残る。その貝殻のほとんどは、真珠養殖業者の方がお金を払って産業廃棄物として処分しています。真珠を使わせていただいている身として、どうにかできないかと研究を続けたところ、陶芸の釉薬になることが分かりました。その特別な釉薬をつかって、現在お皿を作っているところです。アート作品も、携帯の基盤などのシルバーの板をキャンバスに見立てて線画を描いて、ダイヤモンドを埋め込んだものです。アンナ ダイヤモンドはただジュエリーを作って売るだけじゃなくて、これまで社会で注目されてこなかった素材に着目して、ジュエリーや作品に昇華・アップデートする。そのアップデートの物語を届けるのが私たちの特徴だと思います。

アップデート、いい言葉です

この活動をしていると『こんな素材が使えなくて余っているんです』と素材との出会いが多くあります。例えば、使えなくなった太陽光発電のパネルのガラス。経済合理性の観点から、あまりリサイクルされない素材です。そのまま埋立地に行くと思うとゾッとしますよね。それを何かに使えないかと、ガラス作家さんと溶かしてみたり。ラボって感じです。いつも『素敵な宝物(=役目を終えた素材)があったら教えてください』って周りの人に言い続けています。新しい素材の活用方法を見つけることは本当に難しいですね。実際に公表出来ているのは、氷山の一角です(笑)。

約1ヶ月開催したTWO WHEELERS’ FLAT。

今年の夏に一ヶ月間、六本木ヒルズでコンセプトストア『TWO WHEELERS’ FLAT』のローンチ記念ストアをオープンされていたと思います。ぜひ詳しく教えて下さい。

一時期、納得のいく方法で作られた、デザインも私好みの洋服を作りたいと思ったことがありました。その後アンナ ダイヤモンドの展示会をパリで開いたときに、ヨーロッパにはすでにサステナビリティに取り組んでいてしかも私好みのブランドがあるんだということを知りました。ならばそれらを一箇所に集めた空間を作る方が私の目指している世界への近道かも知れないと思ったんです。サステナブルで素敵なブランドがあることを見せたかった。
『TWO WHEELERS’ FLAT』は二つの車輪を持つ人たちの集合住宅、サステナビリティとデザイン性がある場所、という意味を込めて名前を付けました。
自転車は2つの車輪がないと進めない。でも今この業界は「サステナブル」の車輪だけで進もうとしていて、それでは前に進めないんですよね。消費者の方たちもサステナブルなだけではものは買わないと思うんです。

ブランドは森さんが自分で探してアトリエなどを見て回ったと聞きました。

最初はSNSで調べたりパリでバイヤーをやっている知り合いに聞いたりして情報を集めていました。でも、SNSやインターネットで集められる情報で判断するには、限界があると感じたんです。売るからには、私が納得する必要があると。それでパリ、ロンドンのアトリエを回って何十ものブランドのデザイナーに実際に会いました。認知度が高いブランドでも担当者が『使っている生地は多分オーガニックです』とか、そんな中途半端な回答に納得がいかない事も多くありましたが、実際に会いに行って良かったと思います。最終的に、心の底から納得できたブランドを国内外から9つセレクトしました。

扱っていたブランドはANNA DIAMONDの他にViron、LIRIO、FACON JACMIN、In Casa by Paboy、CLARA CHU、GOOD SQUISH、RE:CODE、Umlautと、アパレルから生活雑貨、スキンケアなど幅広いブランドでした。特に海外の商品を日本で販売するのは大変なのではないでしょうか。

日本のコンセプトストアのように、シーズンで商品を変えていくとなると大変ですけど、別のサイクルの考え方をしています。以前、コペンハーゲンに行ってきたんですが、ほとんどのセレクトショップがシーズンもので仕入れをしてないんですね、だからセールをしない。夏物が売れ残ったら次の夏にまた売るという流れを無理なく続けているところがほとんどなんです。そのシーズンに売り切らなきゃとか、残ったらセールで売ろうという常識から変えていかないと、ファッションの早すぎるサイクルは変わらないと思うので、TWO WHEELERS’ FLATでは流行りとは関係ないものを仕入ました。引き続きオンラインストアで販売を続けています。

パリ、マレ地区での展示会の様子。

サステナブルなだけでは、ものは売れない

サステナビリティ全般、そして日本のサステナビリティについて感じることはありますか?

そもそも(サステナビリティ領域の)環境や社会の課題において、大きな結果を出していくには既存の資本主義の仕組みや、民間企業の努力だけでは限界があると思います。法整備を行うなどしない限り、ゲームチェンジ、大きな結果には繋がらない。
また課題だと思うのは、”お客様が求めていること”と”日本の業界が売り出していること”の間に矛盾が生まれていることです。欧州と日本ではサステナビリティの捉え方にギャップがある。欧州では、お客様が購入する時に検討するのはデザイン、価格、物語。この物語の中のカテゴリーとしてサステナビリティがある。日本の多くのお客様が気にしていることは、デザイン、価格、以上!なのに、近年は世の中の風潮もあり、売り手が突然サステナビリティを謎の強みとして売り出そうとする。そうするとお客様は何それ? となりますよね。このねじれやズレをどうしていくかを考えていかないと、日本の消費文化にサステナビリティという考えは根付かないんじゃないかなと思います。
アンナ ダイヤモンドについても、少ない文字数で多くの人にブランドを理解してもらう必要がある特殊な場面などにおいては、便宜上「サステナブル」という共通言語を使いますが、これまでも、これからも、サステナブルを強みとして展開していくつもりは一切ありません。

ぜひ森さんには、これまでの常識やサステナビリティのイメージを壊していって欲しいです。

私はサステナブルなだけではものは売れないと思っているんです。石油由来のガソリンを使ってぶんぶんドライブする楽しさや、ファストファッションでたくさんのアイテムを揃えてコーディネートを組むワクワク感、全て消費社会の賜物です。世の中の皆さんはその快楽を知っています。その快感を超えることが大事なわけで、アンナ ダイヤモンドではその快楽を超えるような新しい感動を創り、世界にお届けしていきたいと思っています。少しずつ意識が変わる事で、世界が良い方向に変わっていくと信じています。


アンナ ダイヤモンド次回の展示会
日時:2024年12月1日(日)、12月7日(土)、12月8日(日)
住所:東京都目黒区上目黒1-10-15(東急東横線「中目黒駅」徒歩4分、「代官山駅」徒歩5分)
イベントでは、既存ラインナップに加え新作をお披露目予定。また、一部在庫があるアイテムについては、当日お持ち帰りが可能。時間帯等の詳細は、Instagramブランド公式アカウントよりご確認を。

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