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ストーリー|2024.09.12

スタイリスト・木村舞子がジャパンブランドと、サステナブルアクションを考える 【Vol.01 エドウイン】

スタイリスト・木村舞子のフィールドは、モード誌やブランドのカタログなどまさにファッションの最前線だ。環境問題やサステナブルな事象に意識を持ち始めている一方で、一定のサイクルで新商品が製造・消費されているファッション業界に身を置く立場から、ファッションがこれからどうあるべきかをモヤモヤと考えているという。今回から始まる連載では、サステナブルな取り組みをしているブランドをピックアップしながら、ファッションができることを探っていく。

編集:横山佐知 写真・画像:エドウイン 撮影:目黒智子(木村舞子)

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木村舞子
北海道出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、スタイリスト百々千晴氏に師事。ファッションモード誌、カタログ等で活躍中。雑誌GINZAのウェブサイトでは、「スタイリスト・木村舞子さんと一緒に、サステイナブルライフへの道!」を連載中。

日本の真摯なものづくりの背景にある、実はサステナブルに通ずる考え方や取り組みがあることを知ってほしい

ファッションは人生を彩る大事な要素ですが、昨今の過度な生産と消費で環境に大きな負荷を与えている事実もあります。ファッション業界に身を置く立場でそんなジレンマを抱えているからこそ持てる視点で、ファッションに何ができるかを探っていきたいと思っています。

私たちが普段買っている洋服は、大体の場合素材の原産地があり、そこから様々な国を介しながら素材から糸へ、糸から生地へ、そして染色などの工程を経て最終的な縫製地へ送られます。そういった様々な国を介して作られた服を海外から買うよりも、できる限りの工程を日本国内で作られたものを買う方がCO2の削減につながるし、何より日本の高い技術で作られた上質な洋服を永く大切に着るというのはサステナブルなファッションへの一歩ではないでしょうか。
連載の1回目は、日本を代表するデニムメーカーであるエドウインをピックアップします。

不要デニム生地の再生、排水を大幅カット、デニムの修理修繕…。エドウインのサステナブルアクション

木村舞子(以下、木村) さまざまなサステナブルアクションを進めていると小耳に挟みました。

そうですね。エドウインでは多くの商品を日本の自社工場で製造しています。国内に自社工場を持つ企業としてサステナブルな取り組みは以前から行っていました。(エドウイン ブランディング&マーケティング部・髙嶋大輔氏、以下同)

木村 具体的にどんな取り組みをされているか教えていただけますか?

CO:RE』という取り組みがあります。ジーンズを作るとき、生地から必要なパーツを切り取った後に裁断くず(端切れ)が出ます。以前は、車の断熱材などに一部を活用していましたが、全てを消費することはできませんでした。
そこで、裁断くずと店頭でお客様から回収している不要になったジーンズを紡績会社と協力し、反毛紡績して再利用するシステムを作ったんです。2022年にリニューアルしたエドウイン503とサムシングの商品の一部に、この素材を使っています。

CO:REのサイクル。03の工程ではデニムを綿(わた)にし、バージンコットンと混ぜて糸にしていく。

看板商品であるエドウイン503には、生地やパーツにも再生素材が使われている

木村 リサイクル素材を使った商品を、新しく作っているメーカーはよく見かけますが、エドウイン503は他のサステナブルジーンズとどこが違うのですか?

CO:REに関しては、自社の工場があるからこそ気付き、取り組めることです。自社の製造過程で出た不要なものを、自社でリサイクルし、自社で再利用する、これはエドウインにしかできない取り組みだと思います。
また、エドウイン503では、ボタンやリベットには再生率の高いアルミを、赤いタブ、ネームなどには再生ポリエステルを使っています。

MADE IN JAPANと書かれたネームも再生ポリエステルで作られている。

工場排水は、基準をクリアするだけでなく、環境に負荷をかけないくらいキレイな状態で自然へ流す

木村 洗い加工で取り組んでいることはありますか?

ジーンズの洗い加工を行う工場は秋田にあります。従来はジーンズを洗うのに大量の水を使用していましたが、今は特許を取っているプレオゾン+ジェット加工という技術を使って、使用する水の量を95%カットしています。ユーズド加工もレーザーによる前工程+エコブリーチにより、環境に配慮するとともにスタッフの作業負荷も軽減しています。排水に関しては、併設している大型の排水処理施設で元の水よりもキレイな状態にしているんですよ。人が飲めるくらいのキレイさですが、不純物がなさ過ぎて飲んでも味がしないくらいなんです(笑)。

加工直後の水(左)、分解済みの水(右)。

木村 オーガニックコットンを使ったジーンズもあると聞きました。

リーに、オーガニックの認証を取る前のプレオーガニックコットンを使った商品があります。通常の栽培からオーガニックに移行すると認証が取れるまで3年くらいかかるのですが、その間農家さんが困ってしまうので価値をつけて買い取った生地を使っているのです。

木村 コットンの産地は消費者はわかるんですか? 

コットンをトレースするのは大変なんです。生地は生地屋さんに頼んでいるが、どこの綿を作っているかは把握しています。それぞれの商品に商品のコードがあるので、それを調べるといつ仕入れていつ縫製したかは追えるようになっています。そういった商品コードを付けることは50年前からやっています。

コットンの産地、紡糸・染色・織布などがどこで行われたかが分かるリーのネーム。

木村 一本のジーンズを長く穿くための、リペア、リサイズのサービスはやっていますか?

リサイズは承っていませんが、自社縫製工場を使ったRe:dwinという修理修繕サービスをしています。長く穿いてもらうからにはちゃんとしたケアが必要なので、そのための修理修繕サービスで、エドウイン以外の商品も受け付けてます。工場の製造ラインと別で作業しなければいけないので大変なんですけどね。それでもジーンズを長く穿いてもらうためにやっています。

空いた穴を目立たなくする特別なリペアは6,000円~。エドウイン商品は20%OFF。

木村 他社製品も扱っているんですね。デニムを作る企業としての課題は何かありますか? 個人的にはたくさんのモノを作って、消費してというファッションのあり方は永遠にモノが増えて終わりがない感じがして…。

私たちの仕事は、質の良いジーンズを作り届けることだけではなく、ジーンズという製品を通して、これからの豊かさを考えることでもあります。ジーンズにできることを一歩ずつ積み重ね、責任あるものづくりで貢献していきます。
デニムはアパレル製品としては珍しい、経年が劣化ではなく美化になるアイテムなんですよね。大切に穿きこんで自分の一本を育てましょう! デニム最高! ということを提唱していきたいですね。一本を長く穿き続けることは、サステナブルなことでもあると思います。

取材を終えて

デニム生地の再生や、工場排水の浄化など、環境に負荷をかけない取り組みを既に始めているエドウイン。ジーンズの味であるユーズド加工も、かつては人の手で行い現場の人たちの負荷があったが、それをレーザーで行っているそう。労働環境、労働負荷の改善にも取り組んでいます。EDWIN USAのレーティングは「良い」となっているので、本家であるエドウイン・ジャパンも同等かそれ以上の評価が得られるのではないでしょうか。

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