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エディターズコラム|2024.06.04

あなたのワードローブをサステナブルにするために。本当に「飽きのこない服」とは?

服の環境負荷を減らす一番の方法は「長く着ること」。でも、飽きずに、我慢せずに、ずっと同じものを着続けるなんて可能なの…? そんなモヤモヤを解決する、画期的な3つのアプローチを紹介。ワードローブの「感情寿命」を伸ばす方法を、ぜひ試してみて。

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サステナブルファッションの文脈ではよく、1着を長く着ることが推奨されます。なぜならそれは、服の環境への負荷を減らすために取れる行動の中で、お金もかからないうえに一番手っ取り早く、本質的な解決策だからです。良いことをする(サステナブルな配慮のある服を買う)よりも、悪いことをしない(消費をしない)ことのほうが、他のあらゆる事柄と同じく、地味ですがインパクトは高いのです。

ただ、服で自己表現をしたり高揚感を得るためには、正直同じ服ばかり着ているわけにいかないのも、令和の世の現実。同じ服を着ましょうと言われても正論はお腹いっぱい、そんな禁欲的な態度では近いうちにすべてが嫌になってしまっても不思議ではありません。

でも、もし我慢せずに、楽しく健やかに「1着を大切に長く着ている人」になれたら? 好きな服を手入れしながら、毎日楽しく過ごせたら? 取っ替え引っ替えのおしゃれとは違い、1着との関係と「愛着」を育むライフスタイルは、どこにヒントがあるのでしょうか。

物理的な寿命と感情的な寿命

「服の寿命」と聞いて、どんなことを想像しますか? 布地の耐久性や縫製の質でしょうか。実は、服の寿命に最も関わってくるのはそういった「物理的な耐久性」ではなく、飽きないという「感情的な耐久性」です。皆さんも実感としてありますよね? 穴があいたりもう着られないほどぼろぼろになったから捨てる、という経験もあるかもしれませんが、それよりも、何となくクローゼットの奥の方に押しやられ、たんすの肥やしとなり、新しい服が入らなくなってきたから捨てたり寄付をする方が多いと思います。新しい服を買った日はうきうきするけれど、そのうきうき感は直後から急降下、物理的な寿命よりも感情的な寿命の方がずっと短いのが現実です。

それでは感情的な寿命をのばすにはどうしたらいいのでしょうか。「循環するファッション 新しいデザインへの挑戦  FASHION & SUSTAINABILITY 」(Kate Fletcher & Lynda Grose著)という本にはこんな一説があります。「製品が捨てられてしまうのは、質が悪いからではなく、製品と着用者の関係づくりに失敗したからである」。わたしたちが服に愛着を持てるようにすることが鍵になりそうですね。

愛着はどう培われるのか?

それでは、服に対する愛着はどのように作られるのでしょうか? 自分が愛着を持っている一着を思い浮かべてみてください。大事なときに着たい、クローゼットの中でもひときわパワーを持っている一着。その1着が大切な理由はおそらく、旅先で買ったから、大事なデートで着ていったから、これを着ると仕事がうまくいくという願掛け勝負服だからなど、個人的な経験によるものが多いかと思います。それでもある程度はデザインや販売の段階で、愛着をデザインすることも不可能ではありません。

1.ストーリーのある服

ショップの店員さんが服の背景や作り手の思い入れを熱心に語ってくれたことが、愛着に繋がった経験があるという人も多いのではないでしょうか。素材や作り方にストーリーがあり、それを店のポップや服のタグ、接客などで生活者にしっかりと伝えることは、服、またはブランドそのものへの愛着へ育っていく可能性があります。
少し企業目線の話。ブランドや企業がサステナビリティを推進するにはトレーサビリティ(商品が原料段階からどこで誰によってどのような環境で作られているかを追跡し、情報の把握をすること)が前提条件となりますが、このように生産背景を細かく把握し、生活者に伝えていくことはブランドの信頼性や魅力アップに繋がります。実際、ロレンツォ・ベルテッリ プラダ グループCSR担当責任者は、ブロックチェーンを生かしたトレーサビリティの担保を前提に「デジタル・ストーリーテリングを可能にすることは、ブティックの販売員にとって素晴らしい会話のきっかけになる」と発言しています。このようなストーリーは、店頭だけではなく、ゆっくり商品ページの文字を読む時間のあるオンラインショッピングとも相性が良いかもしれません。

2.進化する服

着ていくうちに自分の形になじんでいくデニムだったり、味が出てくる革製品。または経年変化が楽しめる天然染めのものは「自分で育てた」感が出て楽しいし、長く共に時間を過ごせば過ごすほど愛着が湧きますよね。

3.Co-デザイン(デザインへの参加)

先ほども出てきた「循環するファッション」という本には「消費者はデザイナーによってデザインされ、遠く離れた工員によって作られ、バイヤーによって選ばれ、マーケッターによって宣伝された服を、スタイリストと雑誌の編集者によって作られたスタイリングで着て、トレンド予測業者によって造り出されたトレンドに従って定期的に新調する」とあります。ちょっと言い過ぎ感はありますが(笑)、このような受け身の姿勢ではなく、自分が色合わせを選んだとか、自分もものづくりに関われば愛着が湧きますよね。パーツを組み合わせるセミオーダーサービス等は、愛着の湧きやすいデザインの一種と言えそうです。

たくさんの服を持つこともおしゃれだけれど、愛着のある少しの服を大切に着ることも、もしかしたら豊かかもしれない。そんな気が少しでもしたら、自分と服の関係性を「愛着」という視点からぜひ考えてみてくださいね。

本記事は日本のユーザーの方のために、「多様で、健康的なファッション産業をつくる」ことをミッションに活動する一般社団法人unistepsが執筆しています。

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