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ファッション|2026.10.16

世界から愛される「修理しても履きたくなる」シューズ、大阪発フットウェア「ブライトウェイ」の秘密

「10年後も愛せる一足」をつくりたい。そんな思いで、レザーシューズ「ブライトウェイ(brightway)」を手がける大阪の靴工場がある。創業70年を超えるインターナショナルシューズだ。修理しながら長く履く靴づくりの現場を訪ね、3代目の上田誠一郎さんに、ものづくりへの思いを聞いてきた。

原稿:白石 綾

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売って終わりにしない。ソール交換やメンテナンスで、靴そのものだけでなく「長く使う体験」まで届ける

アメリカ、オーストラリア、台湾、インドネシア。大阪市にある小さなシューズメーカーに、今、世界中から靴が「帰ってくる」。履き込んですり減ったスニーカーを、もう一度きれいにして履くためだ。

送り主は、株式会社インターナショナルシューズが2020年に始めたユニセックスのレザーシューズブランド「ブライトウェイ」の愛用者たち。ソール交換の依頼は、2024年ごろには月に1件あるかどうかだったが、今では、少なくとも月に10件、多い月は20件にのぼるという。

「自分たちがいちばん驚いているんです。いい意味で」

そう話すのは、3代目の上田誠一郎さんだ。1954年に上田さんの祖父が創業した同社は、これまで長く婦人靴のOEMを手掛けてきた。

同社が手がけるブライトウェイのコンセプトは「10年後も愛せる」一足だ。そのために、あえて制約を設けている。

ひとつは、流行を追わないこと。10年後に同じ靴を履いていても「あの時のトレンドだよね」と言われない、時代を超えて使えるデザインだけをつくる。

もうひとつは、売ったあとのサービスだ。靴紐だけ、中敷きと、メンテナンス用の製品の購入、ソールの交換や履き込んで破れることが多いかかとの内側の修理なども可能だ。

革靴のような美しさと、スニーカーの快適さをひとつした定番モデル・Giichi2  メンズ/レディース共に ¥33,000(税込) 

「修理を依頼される靴ほど、大事にしなさい」祖父と父からの教えが導いたブランドの在り方

海外からの修理の場合にも、顧客が送るときの送料は顧客側が負担する。それでも靴は届く。日本に数週間滞在する海外の購入者が、ホテルから靴を送ってきて「帰国までに直せないか」と相談されたこともある。

ソール交換の料金は、ゴムソールで8,800円(税込)。軽量ソールなら12,100円(税込)と(2026年9月取材当時)材料費や送料、職人の手間などを考えると、決して儲かる仕事ではない。

なぜそこまでするのか。上田さんは、その理由の原点について、祖父と父がまったく同じことを言っていたと語る。

「新品も大事だけど、修理で来る靴ほど大事にしなさい。修理してでもまた履きたいと思ってもらえる靴なんて、作り手にとってこんなにうれしいことはない」

上田さんは、先代から受け継いできたこのフィロソフィーが、自社の事業の成果として現れていることに対する実感をこう語る。

「ファッション業界で『服を直して長く着る』という流れがまた聞かれるようになってきましたが、これまでは、どこか遠い国の壮大な話だと感じていました。

でも、自社ブランドを始めたら、実際に自分たちの靴が修理に戻ってくる。そして、それがまたきれいになって持ち主の元へ戻っていき、喜ぶ声が届くようになってきました。今では、この世界の潮流が自分ごととして捉えられるようになってきています」

修理の様子。顧客からは「新品のようになって帰ってきて驚きました」と、お手紙が届いたことも

材料はチームジャパン、仕上げは大阪。3代目が自ら確かめる、顔の見える一足

ブライトウェイで使用している革は、上田さんが自らタンナー(動物の皮をレザーへと加工する工場)のもとへ足を運び、つくり方を確かめたものだ。どの工場で、どう作られ、どんな薬品が使われているかを、すべて把握したうえで使っている。

こうした取り組みは、海外の取引先からも問われるようになった。革については、タンナーの設備を評価する国際認証「LWG認証(レザーワーキンググループ認証)」と、使える化学物質を定めた欧州の「REACH規制」が事実上の共通パスポートになっている。提携するタンナーは、すでにこれらに対応済みだ。

これらの生産工程は、全国から集める「チームジャパン」で作られており、縫製、底付け、仕上げといった工程はすべて大阪で行う。これにより「ALL OSAKA MADE」を実現している。

日本でつくる良さを尋ねると、上田さんは「やはり1番は顔を合わせて直接やりとりできること。そして、『一緒に世界へ出ていこう』という目標を共有できることですね」と語る。

また、ブライトウェイの製品の場合では、職人に通常のOEMの約1.5倍の工賃を払っているという。もっとブライトウェイを作りたい、という職人のモチベーションになればとの取り組みだ。

生産を支えるベテランの職人たち

購入者には数千通の直筆メッセージを。自らが広告塔になり、店頭に立つ、地道な活動から生まれる大きなうねり

このように一見、順風満帆に見えるブランドの歩みだが、その裏には多くの苦労があり、今もまだ道の途中だと上田さんは語る。

「ブライトウェイは、これまで広告にほとんどお金をかけずに育ててきました。格好よく聞こえるかもしれませんが、正直に言うと、最初は広告に使えるお金がなかったんです」

そこで上田さんが決めたのは、「自分自身がブライトウェイの広告塔になる」ことだった。スタートアップのピッチコンテスト、メディアの取材、YouTubeなど声をかけられた場所にはできる限り出ていき、自分の言葉で発信し続けた。

そんな中、ブランドが広がる大きなきっかけになったのが、クラウドファンディングサービスのマクアケだ。2020年3月に始めた最初のプロジェクトでは、約400万円の応援購入を集めた。2024年末のプロジェクトでは、ファーストモデルを進化させた「GICHI 2」と、新しくなったレザースリッポンを合わせて、応援購入の総額が1,000万円を超えた。

同時に力を入れたのが、阪急メンズ、松屋銀座、PARCOといった商業施設でのポップアップストアだ。自分でつくった靴を、自分で売る。お客さんとの会話からニーズを拾い、次の商品に生かしていく。
さらに商品の発送時には、できる限り一人ひとりに直筆のメッセージを書いて同封してきた。

「約500人の方に応援購入いただいたクラファンでも、全員分のメッセージを書き切りました。あのときは、受験勉強の時よりペンを握っていたと思います(笑)これまで何千通書いたのか、もう分かりませんね」

一通一通の手紙で結ばれた顧客との関係は、今、修理という形で確実に工場に返ってきている。一人ひとりに選ばれた一足、その「1」の積み重ねが、100足、1,000足と、大きなうねりを生み出しているのだ。

型紙で切り出した平らな革を、木型に沿わせて引き伸ばし、立体に仕上げていく

「3代目」という職業があると思っていた。後継者としての思い

小さいころの上田さんは、二世帯住宅の一階に住む祖父から、毎朝こう声をかけられていた。

「お前は3代目や。がんばれよ!」

まだ小学生だった上田さんは当時「3代目」という職業があると思い込み、将来の夢にそう書いたという。

家にはファッション誌が積まれ、小学生時代の愛読書はVOGUEだった。

そんな上田さんが祖父にも父にも言われ続けた言葉がある。
「一流のものを見て、一流のものを使いなさい。一流のいいものには、 やっぱり理由がある。 だから、高い。でも、使ったらいいものだということが分かる。だから、買うならいいものを買って、大事に使うこと」

その思想が、今の靴づくりにそのまま生きていると話す。

幼いころの上田さんと、祖父で同社創業の 義一さんとの思い出の一枚。新しいことに挑戦する姿勢や機械好きなところが似ていて、今でも家族からはよく「おじいちゃんにそっくりだ」と言われるという

「自分が履いて本当にいいと思えるものじゃないと、世の中に出したくないんです」

それに、大手レディースシューズブランドで接客、販売、店舗運営などの経験を積み、家業に戻ったときに感じた悔しさがあった。

「実直にものづくりをしている人たちの仕事が、原価が高い、もっと安くなど、ただの電卓の数字として扱われていた。それがすごく悔しかった。だから、日本でいいものを作り続けたい」

3代目として、今年春から事業を継承した上田さんは、先代からの教えを受け継ぎ、自社ブランドだけでなく、これまでのOEMの事業でも強みとして挑戦を続けてきた。

パリのランウェイから万博まで。出会いが広げた「つくれる靴」

2025年の大阪・関西万博では、ブラジル館のスタッフのユニフォームに、ブライトウェイの白いスニーカーが起用、2024年にはオートクチュールブランドのシューズも手がけ、自社の制作したシューズがパリのランウェイを歩くことにも繋がった。

あるブランドのOEM製品を見かけたオーストラリアのブランドの創業者からは、「この素晴らしい靴はどこでつくっているんだ!」と自社の技術がかわれて取引が始まった。

大阪・関西万博ブラジル館のユニフォームに起用されたブライトウェイのシューズ

そんな上田さんが好きな言葉は「セレンディピティ(偶然の幸運な出会い)」だ。

「真面目に向き合っていれば、その瞬間は損をしたり、報われなかったりするかもしれない。でも、絶対に芽が出る時は来る。それを僕らが証明したいんです」

その出会いの一つ、一つを大切にしながら、上田さんは自社で受ける仕事の幅も増やしてきた。

「実はブライトウェイの靴底のステッチは僕がミシンをかけてるんですよ」と最近導入したという機械を操りながら上田さんは語る。

「今まで自社ではやってこなかった素材や技法も、ブランドからのご依頼で、挑戦する機会をいただいてます。それに合わせて機械が増やしてるんですが、導入する時は、まず自分が実際に機械を見に行って、機械の性能や使い勝手を確認しているんです」

一枚一枚、革のクセや傷を見極めながら裁断していく。限られた革を無駄なく使い切るのも、職人の腕の見せどころだ

実直なものづくりは、世界に届く。大阪の工場が世界で戦える理由

そんな上田さんが見据えているのは、世界だ。円安の追い風もあるが、勝算はそれだけではない。300〜500足という小さな単位を高い品質でつくれる工場は、世界を見渡してもほとんどないのだ。

その品質を支えているのが、人材と工場のあり方だ。靴業界では、専門の職人に出来高で報酬を払う歩合制が長く通例だった。その中で同社は、早くから職人を雇用し、給与制をとってきた。

さらに、なめした革の裁断から箱詰めまでを、ひとつの建物の中で完結させている。職人は、自分の仕事が次の工程にどう響くかを自分の目で確かめられる。一人ひとりが完成品に責任と誇りを持てる環境で、一足一足が丁寧につくられていく。

「僕たちには、70年という積み重ねてきた資産と歴史があります。それが今になって、いろいろなことにつながってきました。今は会社にとって大きな変化のタイミングです。この先数年で、自社ブランドを通して、もっと世界に出ていきます。実直なものづくりは、きっと世界に評価されると思うんです」

海の向こうから届く修理の靴は、その言葉がすでに現実になり始めていることを示している。

直しながら、10年履き続けられる一足。あなたもその一足で、ブライトウェイ(光の差す道)を歩き始めてみてほしい。

職人の技術と上田さんの想いの詰まった一足。長く愛せる修理サービスを利用しながら、大切に使いたい

【直近の出店情報】
ブライトウェイ POPUP&カラーオーダー受注会
@福岡・岩田屋本店

開催期間: 10月21日(水)~10月26日(火)
開催場所:
〒810-8680 福岡県福岡市中央区天神2丁目5−35
岩田屋本店 本館7F 大催事場 岩田屋定番コレクション

営業時間:
平日 10:00~19:00
※最終日のみ17:00
地下鉄空港線・天神駅より徒歩5分

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Stories behind 代表/鎌倉サステナビリティ研究所 スタッフ
白石 綾
アパレルブランドで販売や商品企画に携わる中で業界の課題を実感。イタリア在住をきっかけに、特に環境問題との関係に強い関心を抱く。2020年にMilano Fashion Instituteでサステナブルファッションを学んで以来、強い当事者意識を持ち、業界の問題解決に向けた活動を続けている。

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