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ニュース|2026.06.09

知ってるつもりを解消する 「Shift C サステナ・ゼミナール」Vol.1 温室効果ガスとファッション

サステナブルファッションにまつわる“基本のキ”を知る「サスゼミ」がスタート。気候変動、生物多様性、人権…などテーマごとに知っておくべき基礎知識を、専門家がわかりやすく解説する。

原稿:勝又淳司

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「サステナブルファッション」という言葉はよく聞くし、「地球にも人にもやさしい服」を選ぶべきなのはわかっているけれど、「じゃあ、服の何がどう悪いの?」と聞かれたときに、自信をもって答えられますか? 知っているつもりでよく知らないファッションと環境のハナシ。Vol.1では、すべての基本となる「気候変動(温室効果ガス)」の全体マップを、大学の先生の解説をもとに分かりやすく紐解いていきます。

ファッション産業も、生産から廃棄に至るまで多くのエネルギーを消費するため、この温室効果ガスと強く結びついています。今回は、温室効果ガスの基本的な仕組みをやさしく説明しつつ、ファッションとの関係を整理します。

キーワード
温室効果ガス CO  ファッション産業

日本女子大学 専任講師  勝又淳司

日本女子大学・家政学部被服学科専任講師。修士(政策学)。国内スポーツメーカーでの企画や営業、文化服装学院の教員を経て現職。繊維産業のサステナビリティについて、消費者や環境政策の観点から研究しています。研究を通してファッション業界がより良い業界になればと考えています。社会人大学院生として博士論文執筆中。

1.温室効果ガスは“地球を包む温室”のガラスのような存在


2026年の春は、夜に涼しさを感じつつも、出勤時に朝陽の力強さに、やはり気候が変わりつつあるなということを筆者は感じました。

気候変動をめぐる議論では必ず「温室効果ガス」が登場します。温室効果ガスは、大気中で赤外線(熱)を吸収し、再び放射することで、地球の温度を生命が住める範囲に保つ働きをしています。これは、ビニールハウスのような単純な構造ではなく、赤外線の特定の波長を吸収する精密な機能を持っています。この「温室」は自然に備わった地球の生命維持システムですが、そのバランスが崩れると気温は過度に上昇します。逆にこの温室効果ガスが全くなければ、寒冷な気候になるといわれています (*1) 。ただし現在は、人の日々の営みが、この温室効果ガスのバランスに大きく影響しています。図1はあくまでイメージですが、人の営みと温室効果ガスを表現しました。

2.なぜCO₂が特に問題視されるのか


温室効果ガスには複数の種類がありますが、特に問題となるのは人間活動によるCO₂の急増です。IPCC第6次評価報告書は、現在の気温上昇の主因が化石燃料燃焼や森林減少によるCO₂の増加であると述べています(*2)。 CO₂の主な排出源:発電(石炭・ガス・石油)や鉄・セメントの生産、森林伐採による吸収源の減少など多岐に渡ります。

ファッション産業においても、繊維生産・染色・縫製・輸送・店舗運営など、どの工程でもエネルギーが使われることに伴い、CO₂が排出されています。特に、衣服の生産工程における染色・漂白・乾燥・アイロンなどでは大量の熱が発生し、これがCO₂の排出源として指摘されています。世界の繊維・アパレル製造工程における温室効果ガス排出量は、年間約3.3億トン(*3)。人は毎日衣服を着用します。そのうえで、衣服の生産工程においてどのようにCO₂が排出されているのかを、誰もが知っておく必要があるのではないでしょうか。

3.温室効果ガスは1種類ではない

温室効果ガスの代表例には次のようなものがあります。

温室効果ガスの種類と特徴
種類 特徴 主な発生源
CO2(二酸化炭素) 最も多く寿命が長い 素材の原料生産、縫製、輸送、廃棄
CH4(メタン) CO2より温室効果が強いが寿命短め 畜産(例:ウール素材製造時の家畜の反芻、廃棄物)
N2O(一酸化二窒素) 非常に強い温暖化効果 農地、化学産業
フロン類 極めて高い効果 冷媒、発泡材

ファッション産業と特に関連が深いのはCO₂ですが、メタン(羊毛生産、廃棄物埋立)なども見逃せません。筆者が国際産業連関表EXIOBASEで確認したデータでは、全世界におけるファッション産業では製造時の9割以上がCO₂でした。近年、我々が着用した衣類が最終的にアフリカなどにたどり着いていることは多く報道されていますが、その場合にはメタンガスが多い傾向となります。この点も多くの構造的問題を有しています。

4.ファッション産業は“温室”を厚くしている


温室効果ガスが増えると、宇宙へ逃げるはずの熱が大気に滞留し、地表付近に蓄積されます。つまり、分かりやすいイメージでいうと温室の「ガラス」が厚くなりすぎる状態です。

廃棄や消費時を除いた、繊維・アパレル製造工程のみにおける温室効果ガス排出量の推移をまとめたものが図2となります。これは、筆者が研究で用いるEXIOBASEという国際産業連関表から引用しており、「この国の衣服の製造工程でこれぐらいの温室効果ガスが排出されている」という推計値を5年毎に時系列でまとめたものです。

全体としてアパレル産業からの直接的な温室効果ガス排出量は、1995年から1.3倍程度の約3.3億トンとなり、近年の生産量の増加により、拡大していると考えられます。なかでも、アジアが大きなボリュームを占めている一方で、中東も存在感を増しています。これは近年需要が増加するポリエステルの原料の産地であるからだと考えられます。このように、全世界で俯瞰してどの国で温室効果ガスが発生しているかを分析することはとても重要です。また、この数値には廃棄等によるGHG排出は含まれていません。これはまた別の機会にお伝えします。

ファッションが関わる温室効果ガス削減のアプローチとしては:

・再生可能エネルギーでの生産
・リサイクル素材や低炭素素材の採用
・サプライチェーン排出量の可視化(スコープ1–3)による削減
・修理・再販売・回収の拡大
・長く使える製品設計への転換

などが挙げられます。これはまた後日述べていきましょう。これらすべてが、地球の「温
室」を不必要に厚くしないための取り組みです。


本コラムのまとめ


温室効果ガスは、地球の温度を支える“温室のガラス”のような存在です。しかし、その量が増えすぎると地球は過度に暖まり、私たちの生活・産業・自然環境に大きな影響を与えます。
ファッション産業は原料生産から廃棄まで排出が積み上がる構造を持つため、温室効果ガスの理解は欠かせません。地球の温室がどう機能し、CO₂がなぜ問題なのかを知ることが、より持続可能なファッションを考える第一歩になります。


*1 NASA What is the greenhouse effect?
https://science.nasa.gov/climate-change/faq/what-is-the-greenhouse-effect

*2 IPCC_AR6_WGI_SummaryForAll
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/outreach/IPCC_AR6_WGI_SummaryForAll.p
df

*3 国際産業連関表EXIOBASEによる推計値(2020年時点)


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日本女子大学 専任講師
勝又 淳司
日本女子大学・家政学部被服学科専任講師。修士(政策学)。国内スポーツメーカーでの企画や営業、文化服装学院の教員を経て現職。繊維産業のサステナビリティについて、消費者や環境政策の観点から研究しています。研究を通してファッション業界がより良い業界になればと考えています。社会人大学院生として博士論文執筆中。

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