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“売る”だけではない。ブランド問わず修理する「VEJA General Store」

パリ10区、サン・マルタン運河近くにある「VEJA General Store」。店先には、靴の修理やクリーニング、衣類のお直しなどを知らせる文字が並ぶ。店内に入ってまず目に留まったのは、棚にずらりと並ぶ修理を待つ靴だった。
ここはフランス発のスニーカーブランド「ヴェジャ(VEJA)」が手がける店舗だが、主役は新品のスニーカーだけではない。約100平方メートルの店内では靴職人がスニーカーや靴を修理し、衣類のお直しにも対応する。
しかも対象は、ヴェジャの商品に限らない。ハイブランドからファストファッションまで、ブランドを問わず持ち込むことができる。2024年2月にスタートした衣類のお直しには、現在、月100点以上が持ち込まれているという。
料金もわかりやすく、衣類ならボタン付け5ユーロ、裂け目の修理10ユーロ、裾上げ15ユーロから。靴も小さな縫製やハトメ交換なら20ユーロから利用できる。日常的なメンテナンスとして選びやすい価格帯も特徴だ。
ヴェジャが修理に取り組み始めたのは2020年。ボルドーで「Clean, Repair, Collect」プロジェクトを立ち上げ、ブランドを問わずスニーカーの修理を開始した。その後、各都市へと拠点を広げ、2025年末までに11のリペアステーションを展開。これまでに6万2000足以上を修理している。General Storeに並ぶのも、靴紐やケア用品、工具、書籍など、すでに持っているものを手入れし、長く使うためのものが中心だ。
興味深いのは、「修理」が商品を売った後の付帯サービスではなく、店そのものの役割として組み込まれていることだ。
買って終わりではなく、その後、どう使い続けるかまでブランドが関わる。店舗に並ぶ修理待ちの靴を見ていると、「何を買うか」だけではなく、「買ったものとどう付き合うか」も、ブランドが提案する時代になっていることを実感する。
一方で、こうした取り組みの背景には、修理を担う職人の減少もある。ヴェジャによれば、フランスに約4万5000軒あった靴修理店は、2023年には約3,000軒まで減少したという。「直して使おう」と呼びかけるだけでは、直せる場所や人がいなければ続かない。ヴェジャの取り組みは、失われつつある修理の受け皿を、ブランド自らつくり直す試みでもある。
VEJA GENERAL STORE
11 rue de Marseille
75010 Paris
修理を“面倒なこと”にしない。デジタルとコミュニティ、二つのアプローチ
修理する場所があっても、「店を探す」「持ち込む」「見積もりを取る」といった手間が大きければ、新しいものを買うほうを選んでしまうこともあるだろう。
そこでフランスで展開されているのが、修理をより利用しやすくするサービスだ。
たとえば「Tilli」は、衣類や靴などの修理をオンラインから依頼できるサービス。自宅で職人に対応してもらうほか、郵送や店舗への持ち込みにも対応し、フランス国内500人以上の職人ネットワークを持つ。後述する「Bonus Réparation(リペア・ボーナス)」にも対応しており、対象となる修理では割引が会計時に適用される。
パンツの裾上げは12ユーロから。破れの簡単な修理は12ユーロだが、「Bonus Réparation」が適用されると7ユーロ引きの5ユーロに。25cm未満のファスナー交換も22ユーロから、制度の対象なら8ユーロの割引を受けられる。修理にかかる費用があらかじめ分かり、制度による割引までその場で反映されるのも利用しやすさにつながっている。
オンラインで依頼でき、持ち込みや配送など、自分に合った方法を選べるのも特徴だ。修理にまつわる手間を減らすことで、「直して使う」をより日常的な選択肢にしている。
一方、パリ10区と19区に拠点を構える「La Textilerie」は、異なる方向から「直す」を身近なものにしている。
テキスタイルの再活用をテーマに活動するアソシエーションで、10区の約130㎡の空間には、古着を扱うリサイクルショップ、カフェ、縫製アトリエが併設され、不要になった衣類や生地、手芸用品の回収も行う。集まったものは古着として販売したり、端切れやボタンなどを再び素材として店頭に並べたりと、できるだけ地域のなかで次の使い手へとつないでいる。
その活動のひとつが、定期的に開催されている無料の「Repair Café」だ。参加者は直したい服を持参し、繕い、破れの補修、ボタン付け、裾上げ、ゴムの交換など、日常的な修理の方法をスタッフから教わることができる。服を預けて直してもらうサービスではなく、その場で自分の手を動かしながら直し方を身につけるのが特徴。予約を必要とせず、無料で参加できるのも間口を広げている。
縫製教室もほぼ毎日のように開かれ、初心者向けからパターンメイキング、刺繍や編み物、リペアまで内容は幅広い。
La Textilerieが目指しているのは、単に廃棄される衣類を減らすことだけではない。服の寿命に一人ひとりが関わり、自分で手を入れながら使い続けられるよう、知識や技術そのものを共有すること。「直してもらえる場所」を増やすだけでなく、「直せる人」を増やすことも、リペアを日常に根づかせるひとつの方法だ。
La Textilerie du 10ème
22 rue du Château Landon – 75010 Paris
La Textilerie du 19ème
105 rue Curial – 75019 Paris
老舗の革専門店で見た、「選ぶための情報」の見せ方
ものを長く使うことを考えるとき、買った“後”だけでなく、そもそも何を選ぶかという入口も重要になる。
パリで訪れた「Maison Fichet」は、1896年創業の革専門店。6世代にわたって革を扱い、職人や若手クリエイターから大手ブランドまで、幅広い作り手に素材を提供してきた。色も質感も異なる革が並ぶ店内で目に留まったのが、「CUIR ECO-RESPONSABLE(環境に配慮した革)」と掲げられた一角だ。

Ecopellは、アレルギーへの配慮に関するECARFの評価をはじめ、天然皮革の基準を定めるIVN NATURLEDER、オーガニック農業団体Biokreisなど、環境や健康、原料の背景に関わる第三者認証・基準も活用してきた。

印象的だったのは、こうした情報がメーカーのウェブサイトの奥にあるのではなく、実際に素材を選ぶ売り場で、目に見える形で示されていたことだ。革がどこから来て、どのようにつくられたのか。専門的になりがちな情報を、素材を選ぶための手がかりとして提示する。「長く使う」ための選択は、ものを手にした後だけでなく、素材を選ぶ段階から始まっている。
修理代をその場で値引きするリペア・ボーナス「Bonus Réparation」
フランスで「直して使う」という選択を後押ししているのが、2023年11月に始まった「Bonus Réparation」だ。仕組みはシンプルで、Refashionの認定を受けた修理店で服や靴を直すと、修理内容に応じて料金がその場で割り引かれる。利用者が申請書を出したり、後から払い戻しを受けたりする必要はない。
たとえば、服の穴や破れを直す場合は7ユーロ、ほどけた縫い目は6〜8ユーロ、ファスナー交換は8〜15ユーロの割引。靴では、革底を全面交換する修理に25ユーロの割引が設定されている。割引額は、修理料金の60%までだ。
原資となるのは、フランスで衣類や靴を販売するブランドや事業者が支払う「エコ拠出金」だ。商品を市場に出す企業が、廃棄物削減やリサイクルなどにかかる費用の一部を負担する仕組みで、そのお金の一部が修理を支える基金に充てられている。つまり、ものを売る側が負担したお金は、ものを長く使い続けるための修理費として消費者に還元されているということだ。
制度開始から2年で、認定修理事業者は1,500を超え、Bonus Réparationを利用した修理は累計170万件以上。消費者への割引額も、1,300万ユーロを超えている。「環境のために修理しよう」と個人に呼びかけるだけではなく、修理を選んだほうが経済的にもメリットを感じられる仕組みをつくる。 それが、Bonus Réparationの大きな特徴だ。
日本にも、“長く使う”を選びやすくする仕組みを
パリで見えてきたのは、「長く使おう」と呼びかけるだけではなく、修理しやすい場所やサービス、素材の情報、そして経済的な支援まで、選択を後押しする仕組みがあることだった。
サステナブルな選択を、一人ひとりの意識や努力だけに委ねないこと。日本でも、「直して使う」「長く使う」という選択がもっと自然になるように、無理なく選べる環境や仕組みを少しずつ整えていくことが大切なのではないだろうか。