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ベイカー恵利沙(写真中)
1989年生まれ、オレゴン州と千葉県育ち。モデルとしてキャリアをはじめ、ファッションスタイリスト、ライターなど活動の幅を広げ、2017年ニューヨークに拠点を移す。ファッションブランドとのコラボレーションを多数手掛けながら、ライターとして現地の情報を発信。気候変動を中心とした社会課題への関心が高まり、2023年には気候変動報道を中心にメディアの連携をサポートする団体”Media is Hope”に海外コミュニケーション担当として参加。日本と海外メディアとの橋渡しを務める。
安倍真理子(写真右) セレクトショップのPR、バイヤーを経てジュエリーデザイナーに転身。2021年にインドと日本の伝統工芸を融合した「シャランポワ」、2022年にデッドストックやリサイクルシルバーを使った「アドリン ヒュー」を立ち上げた。
プリティ・プガリア(写真左) インドのジャイプールをベースに活動するクリエイティブディレクター。繊維くずをクラフトペーパーに蘇らせるプロダクト「クラフトボート」主宰。
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はじまりは二人の友情。異なるバックグラウンドと経験が交わって生まれる、新たな出発点


ベイカー恵利沙(以下、ベイカー) 安部さんとプリティさんはもともと友人だったということですが、ブランドのストーリーを教えてください。
安部真理子(以下、安倍) そうなんです、何年もずっと友だちで、私がインドに行くたびに会っていたんです。プリティは、衣類の端切れをアップサイクルして、ペーパープロダクトを作るプロジェクト「クラフトボート」を行なっているんですよ。
とても素敵なので、それを日本で紹介したいと思っていたのですが、私が紙ものはあまり得意じゃないから、いろいろ話し合った結果、私たちが一緒にやるなら洋服じゃない?ってなったんです。
プリティはもともとプレミアムコットンとかリネンの服を作っていたので、そういうのを日本でやろうか?って言ったら、『でもそれは、多分まりこが着ないでしょ?』って言われて(笑)。 プリティは私の好きなスタイルをよく知ってくれているんですよね。
私たちが一緒にやるなら、お互いが好きなことを掛け合わせて、素材はプレミアムなシルクにしよう、ブロックプリントや刺繍もやろう、っていう話になったんです。


受け継ぐことができる、にこだわる天然素材
ベイカー お互いの経験や好きなスタイルをよく知っていたからこそ、うまれたアイデアだったわけですね!素材に込められた想いを教えてください。
安部 今回のコレクションの素材は、すべてシルク100%と、シルクコットンを使用しています。すべて天然繊維で、化学繊維は使っていません。私は、今日着ているようなスケスケなお洋服が好きなんですけど、そういう服はポリエステルが多いんです。そうすると、プリティに、『真理子、ポリ着てる!』と言われちゃうんです(笑)。
でも、こういうデザインでシルク100%だと、値段が30万円とかになってしまったり、デザインがエレガントすぎて自分らしくなかったり。だから、こだわりの素材でありながら、手に取れる価格で、着たいデザインを作りたかったんです。
プリティ・プガリア(以下、プリティ) “大切にされるものをつくる”というのがアイデアのはじまりです。長く愛されて、受け継がれていく素材であること。ハンドクラフトで作られているので、衣服としてだけでなく、テキスタイルそのものも長く愛してほしい。そのために天然素材にこだわっています。
私たちのブランドは、“何を使って、何を選択しているか”に、コンシャスでありたいんです。
クラフトはクチュール。女性たちが受け継ぐ現地の技術と雇用を守る

ベイカー 真理子さんがこれまで手掛けているジュエリーのブランドも、ブランドというのはあくまで想いを体現するための媒体であり、実現したい未来を叶えるための出口のように感じています。クリエイティブディレクターのプリティさんと共に、ヴァレイ オブ ムーンフラワーを通して実現したいと考えていることはなんですか。
安部 実はジュエリーとは明確に違う点があるんです。ジュエリーは、環境に配慮することをメインに考えてきました。これまでジュエリーのブランドを通して、インドに学校を建てるための寄付なども行ってきたのですが、寄付するだけじゃなくて、女性の雇用とか、ちゃんと中に入ってやりたいという想いがずっとあったんです。プリティはそのことも知ってくれていたんですね。
この新しいブランドで何を目標にするかを考えていたときに、田舎の村とかでクラフトをしている女性達と、その工芸を守りたいって話していたんです。
『クラフトはクチュールだ』って言ったインドの女性がいて。プリティと、まさにそれだね!ってなりました。
インドのブロックプリントなどの伝統工芸って、安い下請けとして扱われてきてしまった歴史があるんです。伝統工芸にプレミアムな価値を与えて、雇用を守りたいという気持ちと、あと私は人に興味があるので、現地の方と一緒にできることをしたかったんです。
これまでずっとやりたいと思ってきたことを、『やっと見つけたぞ』という気持ちです。
プリティと私は、生きて来た場所やバックグラウンドは違うけど、同じ想いを持ってるんです。

日本の美意識と、インドのクラフトマンシップが交わるデザイン
ベイカー 実際のデザインやものづくりは、どのようにアイデアを出し合いながら進めているのでしょうか?デザインのインスピレーションを教えてください。
安部 デザインは一緒にやっているんです。例えば私が形を考えて、刺繍の柄はプリティが考えて、という風に。
プリティがデザインした柄で、こちらのチェリーブロッサムというのがあるのですが、チェリーブロッサムという名前なのに、桜の柄ではないんですね。蝶々とお花の柄で、チェリーブロッサムという名前で、これはプリティが見た日本のイメージなんです。こういう、インドから見た日本っぽさがとても面白いなと思っていて。
『真理子、描いて!』って言われて、コットンの生地に直接描いた柄もあります。私は鳥が好きなので、鳥を入れて、どこか和っぽさも表現しています。お互いに自然のモチーフが多いですね。
こんな風に、日本人の美意識とインドのクラフトマンシップが交わるのって素敵だなって思ったんです。

プリティ 私たちそれぞれの、これまでのジャーニーと経験があってこそ生まれたと思っています。
カラーやデザインは、本当に有機的に生まれました。インターネットやパソコンは使わずにスケッチブックを手に、向かい合ってインスピレーションについて話し合ったんです。最初のムードボードも、イメージを組み合わせることから始めました。大きなブランドのビジョンボードのようではないけど、そこにはクラフトやひとへの確かな理解と興味が詰まっていて。二人にそれぞれの体験と知識があってこそ出来たことなので、いまのタイミングもぴったりだったと思っています。
インドのサリーからインスパイアされたブラウスもあって、まさに日本とインドの文化が交わっているんです。チェリーブロッサムは実は5年前からあったデザインで。もともとアーティストに描いてもらったアートピースを、今回デザインに落とし込みました。
複数の色のレイヤーにブロックプリントを施すのはとても難しい技なんでが、この生地は6色のカラー、6つのブラックプリントのレイヤーで出来ているんです。
とても特別なプリントなので、ブランドのコアアイデンティティとなっています。
インタビューを終えてーー視覚で心がときめき、手にとって感激するクラフトマンシップ
淡いトーンや、繊細な刺繍。視覚で心がときめき、手にとって感激するクラフトマンシップ。心をどこか穏やかで華やかな場所へ連れて行ってくれそうな、そんな洋服たちは、二人のこれまでの体験と、確かな知識と、叶えたい未来への強い想いが混ざり合って生まれたもの。
私はこれまでもずっと、真理子さんの作る美しいプロダクトだけでなく、それに込められたフィロソフィーのファンでした。真理子さんとプリティさんという、友人であり素晴らしいアーティストが互いに影響を与え、その結果はじめて生まれるクリエーションを、これからも一ファンとして、心より楽しみにしています。

私はこちらのトップスにもなるドレスをオーダーさせて頂きました。繊細な蝶々の刺繍は、近くで見ると細やかなレイヤーで立体的になっていて、まるで蝶々が服に止まっているかのようなデザイン。
職人さんの手仕事と伝統を身に纏って、シャンとした気持ちでずっと愛用していきたいです。